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経理/財務消費税 2024/10/01

インボイス制度導入から1年!見えてきた課題とデジタルツールの必要性

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インボイス制度の導入から1年が経過しました。
制度導入前後は多くの企業が様々な対応に追われましたが、そこから1年経って具体的な課題が見えてきています。
今回の記事では、改めてインボイス制度対応に関する課題を確認するとともに、解決のヒントを探っていきます。

インボイス制度導入から1年の振り返り

インボイス制度は、消費税の適正な徴収と透明性の向上を目的に導入されました。
事業者はインボイスを通して正確な消費税額を明示し、以下のように適切な処理を行う必要があります。
売手側 買手からの求めに応じてインボイスを交付し、その写しを保存する義務がある。
買手側 仕入税額控除を受けるために、インボイスを保存し管理しておく必要がある。
消費税の仕入税額控除の要件としてインボイスの保存が義務付けられたことは、企業の経理業務に大きな負荷を与えることとなりました。


制度導入から1年を経て見えてきた課題
もともと経理業務が煩雑になることが懸念されていたインボイス制度ですが、導入から1年が経過したことでより課題が具体的になってきました。
特に多いのはインボイスの記載要件を誤るケースです。
ほか、取引先がインボイス登録事業者でないことに気付かず処理を行ってしまうなど、対応に様々な分岐ができたことで起こるミスも多くなっています。
では、このような課題はどのようにクリアしていくべきなのでしょうか。

実務で直面したインボイス制度の課題と今後の改善案

以下では、現在考えるべき実務におけるインボイス制度の課題とその解決案を確認していきます。


インボイスの記載ミス
インボイスを発行する際は、以下の記載要件を満たす必要があります。

  • インボイス発行事業者の氏名または名称及び登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率対象品目である旨の表示を含む)
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)及び適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額など
  • 書類交付を受ける事業者の氏名または名称
※参考資料:国税庁「適格請求書等保存方式の概要

記載要件を満たしていない場合、取引先が仕入税額控除を受けられなくなるため、信用を失ってしまう可能性もあります。
適切なインボイスを発行するために、今一度記載要件を確認しておくことが重要です。
ただし、日々の業務の中で記載要件をひとつひとつ確認していくのは大きな負担であり、それこそが記載ミスを発生させる原因ともなっていると考えられます。
そのため、必要に応じて電子システムを導入し自動化を行うなどの対応も有効です。


取引先が適格請求書発行事業者であるかどうかの判断
仕入税額控除の適用を受けるためには、取引金額にかかわらず原則としてインボイスの保管が必要です。
そのため、免税事業者からの仕入れについては原則として仕入税額控除が認められません。
導入から一定期間は免税事業者からの仕入れであっても一定部分を仕入税額控除できる経過措置は設けられたものの、仕入税額控除の金額は適格請求書発行事業者と免税事業者で異なるため、企業はすべての取引先について適格請求書発行事業者であるかどうかを調べる必要に迫られました。
適格請求書発行事業者は、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で検索可能ですが、検索は一社ずつしか行えません。
インボイスに登録番号が書いてあれば適格請求書発行事業者と判断することもできますが、インボイス発行側における記載ミスも多いことから、実際には検索で調べるというケースが多く、膨大な時間を費やすことになった企業も少なくないようです。
なお、インボイス制度の導入を機に課税事業者となった事業者が、消費税納税を経験した結果、免税事業者へ戻るケースもあるため、適格請求書発行事業者のチェックは定期的に行う必要があります。

現在では会計システムが整備され、仕訳時に取引先情報を入力することで適格請求書発行事業者の判断を自動で行ったり、登録した取引先が適格請求書発行事業者であるかを定期的に確認したりする機能も登場しています。
適格請求書発行事業者か否かの混乱はまだ続くと考えられますが、会計システムを活用すれば安心して経理処理を進めることができるでしょう。

※参考資料:国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト


インボイスの保存が不要になるケースの判断
例外にあてはまる場合にはインボイスの保存が不要となりますが、この例外を誤認しているケースも多いようです。
インボイス保存に関する特例について、実務に関係するのは以下の通りです。

  • 出張旅費特例:従業員が出張する際の交通費や宿泊費
  • 公共交通機関特例:3万円未満の公共交通機関の利用費
  • 自動販売機での購入費:3万円未満の自動販売機での購入費
※関連記事:出張旅費特例で経理業務の負担減!インボイス制度導入後の交通費・宿泊費の精算に活用したい特例とは?

上記のような場合、消費税法上はインボイスの保存が不要となりますが、取引金額が真実かどうかは確かめられるようにしておく必要があるため、会計上・法人税上はあまり推奨されていません。
そのため、特例を利用するのはあくまでも例外的に証憑を入手できなかった場合と考え、可能な限り領収書を取得するよう従業員に指示しておくと安心でしょう。

デジタルインボイスとAI技術の活用

インボイス制度に適切に対応していくためにはどのような工夫をしていけばよいのでしょうか。


デジタルインボイスの重要性
デジタルインボイスとは、紙ではなく電子データで発行したインボイスのことです。
デジタルインボイスは国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠しており、適格請求書発行事業者の登録番号、相手先の名称、品名、単価、数量、取引金額といったデータがセットとなって記載されています。
これを活用すれば先述した記載内容の不備はほとんどなくなることになります。
また、受領者側は受領後にデータ変換や手入力を行うことなく、そのままシステムに取り込んで処理を行うこともできます。
これらのミスの軽減や処理のスピードアップは、煩雑になりがちなインボイス制度への対応の大きな手助けになると考えられます。

※関連記事:請求処理の課題、後回しにしていない?デジタルインボイスで効率化を!

AI技術による経理業務の効率化
IT導入補助金などの制度を利用して、AI搭載の会計システムを導入する企業も多くなってきています。
例えば、仕訳機能にAIを搭載しているシステムの場合は、膨大なデータを解析することで適切な仕訳を自動的に生成することができます。
AIは最初に学習が必要な技術であるため、以前は、システム導入直後の仕訳の精度が落ちることで担当者の確認作業が増えているのではないかという懸念もありました。
しかし実際にAIの学習に成功した企業の担当者によると、記帳作業が効率化されたことで経理担当者はより戦略的な業務に集中できるようになったという体験の報告もあるようです。


複雑化する経理業務を正確に効率よく進めていくためには、デジタルインボイスやAI技術を活用していく必要があります。
これからの経理担当者は、会計処理について理解しているだけではなく、これらのデジタルツールに関する能力も求められることになるでしょう。
ただし、知識や技術は一朝一夕で身に付くものではありません。
システム導入にかかるコストや時間を可能な限り抑えるためにも、必要に応じて専門家に相談し、着実に進めていくようにしましょう。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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インボイス制度導入後、実際に混乱があったことも事実です。
しかし、デジタルインボイスやAI技術の導入により、解決につながる課題も多々あります。
進化していくデジタル技術は、煩雑化している経理処理に不可欠となってくることが考えられます。
様々な技術をチェックし、自社にとってどんな対応が必要となるのか検討することが重要となるでしょう。

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