企業利益を拡大するには、売上拡大と同時に原価低減が欠かせない要素の一つとなります。
今回は、原価低減の具体的な方法、実践ポイント、成功のための秘訣について解説します。
原価低減とは
事業の利益は、収益から費用を差し引いて計算されます。
この費用に含まれているのが原価です。
つまり、原価を低減すれば利益を上げることができます。
原価低減とは、製品やサービスの製造・提供にかかるコストを削減するための取り組みを指します。
例えば、材料費や労務費などのコストカットが原価低減につながります。
これらに関する無駄なコストや重複した作業を見直すことで、利益拡大だけでなく事業の生産性を向上させることも期待できます。
なお、原価低減と似た意味の言葉にコスト削減がありますが、原価低減が主に事業に直接かかるコストを対象としている一方、コスト削減は販売費や一般管理費なども含めたより広い範囲でのコストを対象として指す場合が多いです。
原価低減の必要性と企業に与える影響
SNS活用やオンライン販売などが普及して市場環境の変動が激しくなる中、いかに原価を効率的に管理し利益率を高めることができるかは、企業がこれからの競争に勝ち抜くために重要な要素のひとつです。
原価低減は単なるコストカットではなく、企業が持続的に成長していくために欠かすことのできない経営戦略ともいえます。
その理由は以下の通りです。
原価は売上総利益に直接影響する項目
原価は損益計算書の中でも、最も上段に位置する売上総利益に直接影響する項目です。
原価低減できた分、販売量が増えるごとに利益も増えることになるため、他の費用と比較してもコスト削減による成果が大きくなりやすいといえます。
企業の価格競争力を高められる
原価低減は単純に利益を上げるためだけのものではありません。
原価を減らすことによって製品やサービスの価格自体を下げ、顧客を獲得するための戦略とすることもできます。
特に競争が激しい市場や業界においては、企業の生存戦略としてこのようなコスト削減が重要となります。
業務の効率化につながる
原価低減に取り組むことで、製造プロセスを見直し、業務を効率化する機会が生まれます。
原価低減の主な方法
では、原価低減はどのように行うのでしょうか。
基本的な方法を紹介します。
材料費の削減
材料費の削減は原価低減の基本です。
在庫管理
原価管理では、廃棄などの在庫ロスを削減する在庫管理の最適化が欠かせません。
発注状況に応じた適正な在庫レベルを維持し、過剰在庫や欠品を防ぐことで、在庫ロスを最小限に抑えることができます。
POSシステムを使用した在庫管理や、必要な分だけ仕入れる、いわゆる製造業でのJIT方式(ジャストインタイム生産方式)を導入することで、必要な時に必要な量の材料を調達する体制を作ることができます。
仕入先の見直し
材料や商品の価格は日々変動しています。
また、輸入での仕入れを行っている場合には、為替による円安・円高の影響も考慮しなければなりません。
これらの仕入条件を定期的に見直し、仕入先の再評価を行っていくことが重要です。
大量購入や定期購入
同じ材料や製品であっても、一定量をまとめて購入することで、安定した価格で仕入れを行える場合もあります。
ただし、大量購入は適切な在庫管理とセットでバランスよく行う必要があります。
労務費の削減
業種によっては労務費が原価を大きく占めている場合もあります。
業務・製造プロセスの最適化
労務費を抜本的に削減するためには、業務・製造プロセスの見直しと最適化が重要になります。
まずはプロセスをなるべく細かい工程に分けて、各工程で手待ち時間や重複している作業がないか改めて確認し、フローの再設計を行いましょう。
時間外労働の削減
シフト調整や労働時間の管理を行うことでも労務費を削減できます。
特に時間外労働の削減はコストカットだけでなく、従業員のモチベーションを高めるためにも重要です。
間接費の削減
間接費は営業外費用となり、厳密には原価に入っていないものもあります。
ただし以下などは固定費としてかかってくる場合もあります。
水道光熱費
水道光熱費を削減するには、エネルギー効率の高い設備の導入が効果的です。
例えば、LED照明の導入や省エネ機器への切り替えも重要です。
また、企業全体で節水・節電などのエネルギー節約の意識を高めることで、日常的なエネルギー使用の無駄を減らすこともできます。
賃料やリース
工場の賃料、機械のリース契約は、仕入商品と同様に、定期的に価格や条件を見直し、必要に応じて契約内容を変更することが重要です。
その他、広告費・旅費など、売上原価には直接含まれない費用であっても、見直せる項目がないか確認するとよいでしょう。
原価低減を実現するためのポイント
原価低減を実践するためにはいくつかポイントがあります。
重要な費用はカットしない
最も大切なポイントは、事業を行ううえで重要な投資費用や原価は削減してはいけないということです。
短期的なコスト削減が長期的に見れば生産性の低下や優秀な人材の流出につながる場合もあります。
例えば、材料を低品質なものに変更することで短期的にコストを削減できても、製品の品質の低下で顧客満足度が下がっては元も子もありません。
また、従業員の研修や福利厚生にかかる費用も、長期的な視点で見れば必要な投資です。
このように、品質に直結する材料費や投資費用は、たとえ多くのコストがかかっていたとしてもカットすることは望ましくありません。
原価低減は、事業に必要な支出を見極めて優先順位をつけることが重要であり、品質を維持しながら行うには、原価の削減とそれにより得られる効果を慎重に評価する必要があります。
全社的な取り組みとする
原価低減は一部の従業員や部門だけで実行しても効果がでにくく、全社的な取り組みとして実施する必要があります。
従業員が原価低減の重要性を理解できる社内研修や掲示を行うなど、原価低減に意識を向けるための体制を構築することも重要です。
従業員の意見に耳を傾ける
従業員の意見に耳を傾けることで、現場の具体的な問題点・改善点が浮かび上がり、より効果の高い施策を実行できる可能性もあります。
フィードバックの機会やアンケートなどを導入し、多くの従業員の意見を収集するとよいでしょう。
システム導入
原価管理システムを使用することで、原価の発生要因や製品ごとの原価情報を即時に確認することができ、迅速な対応をすることが可能となります。
原価管理システムそのものでなくとも、手作業で行っている作業を自動化するシステムがあれば原価低減につなげることもできます。
自動化できる部分はシステムに任せることで、人的なコストを低減することができるでしょう。
※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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原価低減は企業の収益性を向上させ、競争力を強化することができる経営戦略です。
しかし、重要な投資をカットしないよう企業全体のコスト構造を理解して実践することが求められます。
経理担当者が中心となり、自社に必要な原価低減方法を検討して、生産性向上と利益拡大につなげましょう。