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人事/労務働き方改革 2024/06/04

年収103万円を超えたらどうなる?扶養に関する所得の「壁」とは

「扶養」という言葉は、扶養控除や社会保険の加入要件においてよく耳にするかと思います。
今回の記事では、社会保険と所得税法での扶養の定義を整理したうえで、社会保険の適用範囲拡大での改正を踏まえた従業員の所得に関する「壁」についてその基準を解説します。

扶養とは

扶養とは、家族の生計を担っている人が、配偶者や子供、両親など、本人よりも収入が少ない家族を経済的に支えることを指します。
この時、生計を担っている人を扶養者、扶養者の支援を受けている人を被扶養者といいます。
扶養の意味は社会保険と所得税法で少し異なるため、それぞれの定義を確認してみましょう。


社会保険上の扶養
社会保険における扶養とは、扶養者が加入している健康保険や厚生年金などの社会保険に被扶養者が加入することをいいます。
社会保険の支払者は、病気やけが、出産などの際に保険金の給付を受けられます。
被扶養者は基本的に保険料の支払いなしで扶養者と同様の社会保険の制度を受けられ、保険証も扶養者が加入している健康保険組合などから発行されたものを使用できます。
社会保険上の被扶養者となることができる人は以下の通りです。

  • 扶養者の直系尊属、配偶者(事実婚の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として扶養者に生計を維持されている人
  • 扶養者と同一の世帯で主として扶養者の収入で生計を維持されている人で、被保険者の上記以外の三親等内の親族や被扶養者の配偶者の親族など
※後期高齢者医療制度の被保険者等である人は除きます。

また、上記に加えて被扶養者に収入がある場合には、別途年収に応じた認定基準が定められています。


所得税法上の扶養
所得税法における扶養とは、扶養控除の適用を指します。
扶養控除とは、納税者と同じ財布で生活している(生計を一にする)配偶者や親族の合計所得金額が48万円以下の場合に、納税者の所得金額から一定の金額を控除できる制度です。
扶養している家族の年齢や収入に応じて扶養者が受けられる所得控除額は、以下の通りです。
区分 控除額
一般の控除対象扶養親族(以下以外) 38万円
特定扶養親族(19歳以上23歳未満) 63万円
老人扶養親族(70歳以上) 同居していない場合 48万円
同居している場合 58万円
被扶養者の年齢や所得は、適用を受ける年の年末(12月31日)時点で判定されます。

※参考資料:国税庁「扶養控除

扶養に関わる所得の「壁」とは

扶養者の配偶者や子供、両親が扶養対象となるかどうかは、被扶養者自身の年収も基準となります。
複数の勤務先で収入がある場合は収入の合計金額が基準となりますが、この基準となる年収の金額を「壁」と表すことがあります。
「壁」は社会保険と所得税法で異なります。
さらに社会保険上の年収の壁は扶養者が加入している保険組合によって認定基準が異なることがありますが、一般には106万円や130万円が基準として用いられています。


社会保険における年収106万円の壁
被扶養者の年収が106万円以上になる場合、企業や勤務条件によっては社会保険の加入義務が発生する可能性があります。
具体的には、以下要件のすべてを満たす従業員は、社会保険上の扶養から外れて自身で社会保険への加入を検討する必要があります。

企業 従業員数が101人以上(2024年10月以降は従業員数が51人以上に改正)
本人
  • 所定労働時間が週20時間以上
  • 給与収入が年間約106万円以上(残業代や賞与を除く所定内賃金の月額が8.8万円以上)
  • 2か月を超える雇用の見込みがある
  • 学生でない(夜間学生などは除く)
社会保険の適用範囲拡大により、企業の従業員数は、2022年10月からは101人以上、2024年10月からは51人以上となります。
自社が従業員数の要件範囲に入っているかどうかは早めに確認しておきましょう。

※関連記事:社会保険の適用拡大とは?従業員数が50人を超えたら要注意!


社会保険における年収130万円の壁
企業の業種や規模にかかわらず、被扶養者の年収が130万円以上(60歳以上または障害者の場合は180万円以上)になった場合、被扶養者は扶養から外れ、自身が社会保険に加入する必要があります。
扶養から外れた従業員は市区町村の国民健康保険、または勤務先の健康保険などに加入し、保険料を支払う必要があります。


所得税法における年収103万円の壁
所得税法では、被扶養者の年収が103万円を超えた場合、超えた部分については所得税が発生し、さらに扶養者側の所得税においては扶養控除の対象から除かれることになります。
被扶養者の年収が103万円を多少でも超えてしまうと、本人の所得税納税義務が発生するうえに、扶養者の所得税に対する控除もなくなるため、家計全体で考えるとかえって損をしてしまう可能性もあるのです。
これは一般的にパート勤務者などが陥りやすい状況です。
1円でも103万円超えると扶養対象ではなくなってしまうため、パートなどの被扶養者が勤務している職場の人事・経理担当者はその点をしっかり念頭に入れておく必要があります。

経理・総務担当者として意識したいこと

ここからは、扶養に関する内容について、経理・総務担当者が留意すべきことを紹介します。


社会保険の適用範囲の拡大について
2024年10月からは、社会保険の適用拡大の対象企業が、従業員51人以上の企業まで拡大します。
適用対象となる特定適用事業所に該当する場合、届出書を管轄の日本年金機構事務所に提出する必要がありますので、確認と手続きを忘れずに行いましょう。


労働時間の管理
扶養内での勤務を希望する従業員がいる場合、労働時間について管理を徹底する必要があります。
短時間労働者の社会保険加入の要件である106万円の壁については、本人も気づいていない場合があるため、特に新規雇用者には丁寧に説明することが重要です。
その他の従業員に対しても、家族の異動や被扶養者の追加などの扶養情報や、希望する働き方などに変更がある場合には迅速に情報提供するよう依頼しておきましょう。
こうした日常の対策によって、年末に発生しがちな収入上限や勤務時間に関する問題を事前に回避できると考えられます。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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今回の記事では、扶養の定義や所得の壁について解説しました。
担当者が社会保険の適用拡大や、所得の壁をしっかりと理解していることで従業員は働き方についての相談をしやすくなるはずです。

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