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経理/財務税務(税金・節税) 2024/05/01

小規模企業共済は将来の貯蓄に役立つだけじゃない!事業者必見のメリットとは

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小規模企業共済は、安定した将来を確保するために見逃せない制度の一つですが、それだけではなく節税効果もあることをご存知ですか。
今回の記事では、小規模企業共済の基礎知識と利用方法、メリットとデメリットを紹介し、最大限に活用するための情報をまとめました。

小規模企業共済とは

小規模企業共済制度とは、中小企業の経営者や個人事業主が廃業や退職をした際に、生活資金や事業再建のために資金を積み立てておく共済制度です。
退職金制度がある企業に勤めている会社員は会社を辞める際に退職金が支払われますが、事業主自身には基本的に退職金は用意されません。
そのため、小規模企業共済は退職金の代わりとして利用されることが一般的です。
事業者は小規模企業共済に掛金を支払っておくことで、将来の廃業・退職の際にこれまで積み立ててきた金額を共済金として受け取ることができます。
掛金の金額は加入者の事業規模や経済状況に合わせて調整することができ、個人の経済状況や加入条件によって、月額1,000円から最大70,000円まで500円単位で自由に設定可能です。
また、加入者は事業を行ううえで資金繰りに困った場合に貸付けを受けることもでき、実務でもよく利用されています。


対象者と加入資格
小規模企業共済は誰でも加入できるわけではありません。
加入対象者は、常時使用する従業員が一定基準以下の小規模な事業を営む個人事業主や、同様の条件を満たす企業の役員です。
例えば以下の条件を満たす個人事業主・共同経営者などが加入資格を持ちます。

  • 建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員
  • 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員
  • 事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
  • 常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
  • 常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の役員
ただし、配偶者などの事業専従者、サラリーマン、正社員と事業を兼業している給与所得者などは加入することができません。


加入の流れ
加入希望者は以下の流れで小規模企業共済に加入することになります。

  • 中小企業基盤整備機構のホームページから希望する加入条件にあった申込書を請求します。
  • 本人確認書類や確定申告書など事業の状況がわかる書類を添付の上、申込書を中小企業基盤整備機構に提出します。
  • 中小企業基盤整備機構による審査が行われ、加入資格が認められれば共済契約成立となり、毎月の掛金の支払いが開始されます。
※参考資料:中小企業基盤整備機構「小規模企業共済の魅力について

小規模企業共済に係る税務処理は

ここからは、小規模企業共済に関する取引における税務処理を確認していきます。


掛金を支払った場合
小規模企業共済に加入した場合、毎月掛金の支払いが必要になります。
この掛金の金額は、確定申告の際に小規模企業共済等掛金控除として、全額が所得控除の対象となります。
これにより事業所得や不動産所得などの計算後の所得金額から控除を受けることができ、所得税や住民税の負担を軽減することができます。
なお、税務上、小規模企業共済等掛金控除の対象となる掛金は、以下の3つとされています。

  • 小規模企業共済法の規定によって独立行政法人中小企業基盤整備機構と結んだ共済契約の掛金で一定のもの
  • 確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金または個人型年金加入者掛金(例:iDeCo)
  • 地方公共団体が実施する、心身障害者扶養共済制度の掛金
    ※地方公共団体の条例で精神または身体に障害がある者を扶養する者を加入者とする制度のうち一定の要件を備えているものをいいます。
今回紹介している小規模企業共済制度に係る掛金は、上記の「1」に該当することになります。

※参考資料:国税庁「小規模企業共済等掛金控除


一時金・解約金の受取時の処理
共済金を受け取る際は「一括」、「分割」、そして「一括と分割の併用」が可能です。
ただし受取方法によって税務上の所得区分が異なります。
原則として、一括受取の場合は退職所得に、分割受取の場合は公的年金等の雑所得に、その他65歳未満の任意解約などの場合は一時所得に区分され、それぞれの所得区分に応じた課税が行われます。
なお、小規模企業共済に加入していた個人事業主が法人成りをして個人事業を廃止することがありますが、その場合に支給される小規模企業共済契約に基づく解約手当金などの一時金については、退職所得になります。


貸付けに係る会計処理と税務処理
小規模企業共済の契約者は、資金が必要な場合に事業資金の貸付けを受けることができます。
この共済契約者貸付けは、低金利で、即日貸付けが可能なものもあるため、多くの経営者や個人事業主に活用されています。
なお、共済契約者貸付けにはすぐに貸付けが受けられる一般貸付け(利率1%前後)と、特別な事情がある場合に貸付けが受けられる特別貸付け(利率1%未満)があります。
特別貸付けについては、緊急経営安定貸付け、 傷病災害時貸付けなど事情によって様々な貸付けが該当しますので、詳細は中小企業基盤整備機構のホームページを確認してみてください。
なお、会計上、共済契約者貸付けは借入金として負債に計上し、利息を支払った場合には支払利息して費用計上することができます。
貸付金に係る利息は、税務上でも支払利息として必要経費に計上することが可能です。

※参考資料:中小企業基盤整備機構「共済制度

小規模企業共済加入のメリット・デメリット

最後に、小規模企業共済に加入することのメリットとデメリットをまとめます。

メリット
  • 退職金の代わりとなり将来の生活保障になる
    自身で退職金を用意しにくい個人事業主や小規模企業の経営者にとって、小規模企業共済は将来確実に受け取ることのできる退職金の代わりとなります。
  • 掛金の額を月ごとに増減できる
    経済状況や事業の状況に応じて、掛金の額を月ごとに増減できます。
  • 掛金全額が所得控除の対象になる
    小規模企業共済の掛金は全額が所得控除の対象となるため、節税も期待できます。
  • 共済金は一括と分割から選択できる
    共済金の受取方法について、一括・分割・両方など、柔軟に選択することができます。
  • 貸付金制度を利用できる
    事業資金の調達や緊急時の資金需要に応じて、低金利での貸付けを受けることができます。
デメリット
  • 加入期間が短い場合、元本割れのリスクがある
    加入期間12カ月未満で任意解約すると掛捨になります。
    また、加入期間が20年に満たない場合に解約すると、受け取る共済金の額がこれまで掛けた総額を下回る可能性があります。
  • 共済金の受取時に課税される
    共済金の受取時には所得税が課税されます。

小規模企業共済は、経営者や個人事業主が将来に向けた経済的な安定を確保するために役立つものです。
所得控除による節税効果や、支払額・受取方法などの柔軟性を考えると、たとえ少額からでも導入には大きなメリットがあるでしょう。
ただし、加入期間が短いと、共済金の受取額が少なくなる可能性があるため、加入を考えている場合はなるべく早く加入するのが得策です。
共済金の受取時の課税関係については、必要に応じて税務専門家にも相談のうえ、自身の所得状況に合った最適な選択をしましょう。

※参考資料:中小企業基盤整備機構「小規模企業共済に加入をご検討中の方へ

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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小規模企業共済には掛金の所得控除による節税効果をはじめとして多くのメリットがあります。
ぜひ今回の記事を参考に、小規模企業共済の導入を検討してみてください。

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