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人事/労務働き方改革 2023/04/25

36協定(サブロク協定)で定めた労働時間、オーバーするとどうなる?働き方改革関連法に基づいた企業対応のポイント

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毎年更新が必要な36協定。残業時間が上限を超えた場合は罰金が科されることもあるので、 十分注意しなければなりません。
今回の記事では、36協定の基本的な内容を働き方改革関連法で改正になった点も含めて解説します。

36協定とは

労働基準法により、労働時間は原則として「1⽇8時間・1週40時間以内」と定められています。
これを「法定労働時間」といいます。
また、休⽇については原則として「毎週少なくとも1回の休日を与えること」とされています。
この週1回の休日を「法定休日」といいます。
企業が従業員に法定労働時間を超えた時間外労働をさせる場合や、従業員を法定休日に労働させる場合は、労働基準法第36条に基づく労使協定「時間外労働・休日労働に関する協定」が必要です。
これを一般に「36協定(サブロク協定)」といいます。
36協定には一般条項と特別条項という2種類があり、時間外労働が発生する業務の種類や、時間外労働の上限時間などをあらかじめ決めておく必要があります。
一般条項の36協定 法律に規定された範囲内までの時間外労働・休日労働に関する取り決め
特別条項付きの36協定 一般条項の範囲を超えた従業員への勤務依頼に備えて、あらかじめ特別な条項を加えたもの

働き方改革法施行後の36協定
従来、36協定で定める時間外労働は厚⽣労働⼤臣の告示によって上限の基準が定められていたものの、特別条項付きの36協定を締結すれば、それを超える時間まで時間外労働を⾏わせることが可能でした。
そのため、「特別条項付きの36協定を締結すれば、実質的には時間外労働に上限がない」という状態が多発し、問題となっていたのです。
こうした背景から「働き方改革関連法(改正労働基準法第36条)」が施行され、大企業では2019年、中小企業では2020年から、時間外労働の上限は原則として⽉45時間・年360時間となり、法律上、特別な事情がなければこれを超えることはできなくなりました。
36協定について、おさえておきたいポイントは以下の通りです。

  • 時間外労働の上限は、原則として、月45時間・年360時間。臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできない 。
  • 特別条項付きの36協定を締結した場合でも、時間外労働は年720時間以内、時間外労働+休日労働は単月100時間未満、複数月平均で80時間以内とする必要がある。
  • 特別な事情により時間外労働が月45時間を超えられるのは、年6カ月まで。
  • 時間外労働・休日勤務の上限を超えて従業員を勤務させた企業・労務管理者には、罰則が科される。
  • 36協定届について、特別条項を適用する場合、別途届出が必要となる。
改正前 改正後
法律による上限(原則) 月45時間 年360時間
法定労働時間 1日8時間 週40時間
特別条項による上限 上限なし
ただし45時間を超えて残業させても良いのは1年につき6か月まで
年720時間、複数月平均80時間、月100時間未満
違反時 行政指導(罰金なし) 罰金
※1年単位の変形労働時間制(3カ月~1年の変形労働)を採用している従業員については、時間外労働の上限が月42時間・年320時間となるなど、制限を受ける内容が若干異なるのでご注意ください。

技術・新商品などの研究開発業務については、上限規制の適用が除外されています。
また、以下の事業・業務については、2024年3月末まで上限規制の適用が猶予されます。
  • 建設事業
  • 自動⾞運転の業務
  • 医師
  • ⿅児島/沖縄 砂糖製造業
※参考資料:厚生労働省「時間外労働の上限規制

36協定について行うべき手続き

36協定は、単純に従業員と合意すればよいというわけではなく、きちんとした手続きが必要となります。


36協定届の提出
36協定を締結するためには、事前に「時間外・休日労働に関する協定届」通称「36協定届」を行政へ提出しなければなりません。
36協定届の提出先は、企業の所在地を管轄する労働基準監督署です。
提出方法は、労働基準監督署に直接出向いての提出のほか、郵送や、「e-Gov」を使用した電子申請も認められています。
36協定届の提出期限は特に定められていませんが、提出より前に従業員に時間外労働をさせることはできません。
また、36協定の有効期限は最長1年間となっているため、毎年、有効期限を迎えるまでに従業員と協議を行ったうえで36協定届を提出する必要があります。


36協定届の新様式について
36協定届のフォーマットや記載例は、厚生労働省のホームページで公表されています。
2021年からは新様式に変更されており、企業や従業員の押印が不要になるとともに、電子申請も可能になりました。
また、これまでは1種類だったものが、以下の通り2種類となっています。
一般条項のみの場合 時間外労働・休日労働に関する協定届(一般条項)様式第9号
特別条項付きの場合 時間外労働・休日労働に関する協定届(特別条項)様式第9号の2
一般条項のみの場合は提出書類が1枚ですが、特別条項付きの36協定を締結する場合、2枚とも提出する必要があります。
様式第9号の2では、特別条項を適用する特別な事態についての詳細や、限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康状態改善への取り組みを記載する必要があります。
なお、36協定届の作成は記載項目が多く、難易度の高いものとなっています。
厚生労働省では、36協定届や1年単位の変形労働時間制に関する書面の作成支援ツールが公開されていますので、実際に作成する際はご活用ください。

※参考資料:厚生労働省 東京労働局「時間外・休日労働に関する協定届(36協定届)
※参考資料:厚生労働省「大企業の方、一部の中小企業の方 作成支援ツール(36協定届、1年単位の変形労働時間制に関する書面)について

36協定を適用するにあたってのポイント

最後に36協定を適用する際のポイントを紹介します。


時間外労働の定義
「⼀般的に考えられている残業」と「法律上の時間外労働」は認識が異なっている場合があります。
一般に残業というと、雇用契約書などに記載された所定労働時間を超えた労働を指すと考える方が多いのではないでしょうか。
しかし、法律上の時間外労働は、労働基準法で定められた法定労働時間(1⽇8時間・1週40時間)を超えた労働のことを指します。

例:
  • 所定労働時間:9:30から17:30まで
  • 休憩時間:1時間
  • 所定労働時間:7時間
この企業で従業員が19:30まで9時間勤務した場合

残業時間 17:30~19:30までの2時間
時間外労働時間 法定労働時間(1⽇8時間)を超えて労働した時間となるため、9時間から8時間を引いた1時間
残業手当の支給基準を上記どちらとするかは、企業によって異なります。
また、法定労働時間(月45時間)を超えた時間外労働については、なるべく25%を超える割増賃金を払うようにという努力義務もありますが、特に罰則などは設けられていません。


休⽇労働の定義
休⽇労働については、平日以外の土日祝日に勤務することと考える方が多いのではないでしょうか。
しかし法律上の休⽇労働とは、労働基準法で定められた法定休日に労働することをいいます。
法定休日を何曜日にするかは、企業が任意で選べます。
なお、企業が設定する法定休日以外の休日のことを所定休日といいます。

例:
  • 所定休日:土曜日・日曜日
  • 法定休日:日曜日
この企業で従業員が土曜日に勤務した場合

休日労働に該当するか 土曜日は所定休日として定められているため、いわゆる休日労働(出勤)に該当します。
法定休日に該当するか 土曜日は法定休日ではないので、通常の勤務日と同様の扱いとなります。
※時間外労働が発生した場合には、残業時間の上限規制の対象にもなります。

36協定をオーバーした場合には罰則がある
働き方改革関連法の施行後、36協定での時間外労働・休日勤務の上限を超えて従業員を働かせた場合、労働基準法違反となります。
罰則が想定される主なケースは、以下の通りです。

  • 36協定の締結・届出をせず、従業員に時間外労働をさせた
  • 36協定で定めた時間を超えて、従業員に時間外労働をさせた
  • 時間外労働と休日労働の合計時間が月100時間以上となった
  • 時間外労働と休日労働の合計時間が複数月平均のいずれかで80時間を超えた
これまでは、仮に時間外労働の上限時間を超えたとしても罰則はありませんでしたが、現在は法律により「6カ⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦」が科されます。
罰則対象は企業だけでなく、従業員の労務管理を担当している責任者も対象となる場合があります。
また、労働基準監督署では、再発防止の目的で、労働基準法違反の送検事例を公表しています。
この書類送検の際に、企業名や当時の勤務状況などが公表されることもあるため、取引先などから信頼を失ってしまう可能性もあるでしょう。


労働時間を適正に把握する
36協定で定めた内容を遵守するために、企業は従業員の労働時間を正確に把握する必要があります。
そのために以下のような対策が考えられます。
企業・労務管理者が行うべき措置 具体的な対策例
従業員自身が労働時間を確認・認識できる体制を作る
  • 毎月の勤務時間表を従業員本人が確認できるようにする
  • 勤怠システムを導入する
客観的な記録をもとに労働時間を計測する
  • タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録などをもとに労働時間を計算する
自己申告制で労働時間を計測する際は、十分な説明を行い、適宜実態調査を行う(やむを得ない場合)
  • 自己申告による労働時間と、入退場記録やパソコンの使用時間などから把握した在社時間との間に乖離がないか調査する
  • 36協定で取り決めた上限時間よりも多く労働しているにもかかわらず、実際は規定内で労働しているかのように申告するなど、適切な自己申告を阻害する状況がないか確認する
※参考資料:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

労働時間は、タイムカードによる記録、PCなどの使用時間の記録など、客観的な方法で確認できることが原則となります。
ただし、やむを得ない場合には、正確な申告を阻害しないなどの適切な措置を講じた上で自⼰申告も認められています。
また、企業は、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数などを適正に記録しておく必要があります。
こうした情報は労働者ごとに賃金台帳に記録し、3年間保存する必要があります。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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36協定について必要な手続きや法定労働時間の定義など、ご理解いただけましたか。
従業員の労働時間を正確に把握し、より働きやすい環境を作っていくことはとても重要なことです。
毎年の36協定の改定を、ぜひ自社の労働環境について見直すきっかけにもしてください。

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