経理/総務部門の皆様にとってはそろそろ耳にタコができるかもしれませんが、2022年1月から改正電子帳簿保存法が施行され、
- 承認制度の廃止
- タイムスタンプ要件の緩和
- 適正事務処理要件の廃止
- 検索要件の緩和
など、企業実務や行政の電子化・デジタル化に拍車をかけるべく、大幅な要件緩和が行われています。
その一方で、
という項目が盛り込まれているため、注意が必要です。
おおまかに言えば、「電子取引で授受された国税関係書類は、プリントアウトして紙文書にすることなく、電子データのまま保存しなければならない」というのが、この義務化の骨子となります。一見簡単そうに思える内容ですが、
- メールに添付/記載された取引情報
- クラウドサービスでアップロード/ダウンロードされた取引情報
- スマホアプリの事業者が発行する明細書など
- 電子商取引データ
- インターネットバンキングの明細
- FAXや複合機等で受信し、印刷せずに電子保存した書類
など、ひと言で電子取引データといっても多岐にわたるため、対象となる取引やデータの洗い出しから始めなければならず、対応には骨が折れそうです。
2022年1月にスタートした「電子取引データの保存義務化」ですが、このことを知らなかった企業や対応が間に合わなかった企業が思いのほか多かったため、「やむを得ない事情があること」「猶予期間終了までに対応できる見通しがあること」を条件として、政府は申請不要の宥恕(ゆうじょ)措置(2年間)を講じています。これより、電子取引データの保存義務化は、実質2024年1月からのスタートとなりました。
と言っても、のんびり対応している余裕はなさそうです。2023年10月にはインボイス制度(適格請求書保存方式)がスタートするため、併せて対応していく必要があるからです。
さて、電子取引データを保存するには、電子帳簿保存法が定める要件を満たす必要があります。必須の要件として定められた
- 見読可能性(記録事項を明瞭かつ速やかに確認できること)
- 検索機能(取引年月日、取引先、取引金額で検索できること)
に加えて、
- タイムスタンプの付与
- 訂正・削除に関する事務処理規定の作成
- 真実性の確保(クラウドに保存する場合のみ)
のうち、いずれかひとつの要件を満たす必要があります。
前述のような要件を備えたファイルストレージを自社で構築・運用するのは、企業にとって大きなストレスになります。そこで、電子帳簿保存法の要件を満たした電子データ保管システムをクラウドサービスとして提供するITベンダーも増えてきました。
サービス選定に当たっては、以下のような機能を備えているかどうかが重要なポイントになってくるでしょう。
アップロードしやすい
見やすい画面と簡単な手順で保管システムに登録でき、取引年月日、取引先、取引金額など、電子帳簿保存法が求める検索機能に必要な情報を付加できること。複数の書類を一括登録できればベターです。
表示・閲覧しやすい
必要な書類をキーワードで簡単に検索・一覧でき、電子データの内容を明確に判読できること。書類の訂正・削除などの履歴も併せて閲覧できると、なお良いでしょう。
タイムスタンプを付与できる
タイムスタンプは、電子データの実在性と改ざんの有無を証明できる技術です。電子取引データの登録時などに自動付与できることが望ましいでしょう。
スキャナ保存ができる
インボイス制度への対応も考えると、原本が紙文書である場合も想定し、スキャナ保存できる機能も欲しいところです。その際、OCR機能で取引年月日、取引先、取引金額などを自動登録できれば言うことはありません。
財務会計システムと連携できる
保存した電子データも、活用できなければ意味がありません。財務会計などの外部システムとスムーズにデータ連携できるかチェックしておきましょう。
そのほか、セキュリティ、バックアップ、権限管理、申請・承認、電子契約、料金体系なども、企業それぞれの業務やニーズに合わせて必要な機能の有無をチェックしておきましょう。