法人の節税対策は、企業の利益やキャッシュを増やすことを目的としています。
適切な節税対策を行うことにより、以下のようなメリットにつなげることもできるでしょう。
- 銀行からの評価が上がり、融資を受けやすくなる
- 信頼性が向上するため、企業間の新規取引が円滑に進む
- 資金調達をスムーズにすることで、事業拡大のきっかけをつかめる
しかし、間違った節税対策を行ってしまうと、かえって経費の負担になる場合もあります。 節税対策は自社に合った方法を選択することが重要です。
節税には、単純にお金を残すという考え方だけでなく、会社のメリットとなるようにお金を有効活用することで支払う税金を減らすという考え方もあります。
具体的な例は以下の通りです。
■経費にあたるものを整理する
本来、経費となるにもかかわらず見落としていたものを整理し、会社の利益を減らすことで、法人税を減らすことができます。
有効的な経費の使い方の例としては、福利厚生や営業活動などが挙げられます。
福利厚生の充実化は従業員の離職率の低減などに効果的であり、採用活動のアピール材料としても利用できるので、良い人材が集まりやすくなるでしょう。
また、利益が多く出そうな期は広告出稿を行うなど、広告宣伝費を経費として計上することで、会社のPRになるだけでなく税金を減らすことにもつながります。
■保険の有効活用
法人保険には、保険料の一部もしくは全部を損金に参入できるものがあります。
ただし、定期保険やがん保険などの第3分野商品に関しては、解約払戻率が高い保険ほど、契約後一定期間、掛け金を損金に計上できる割合が低くなります。
また、保険の商品によっては保険料の全額を損金に計上できない場合もあるので、注意が必要です。
■固定資産を見直す
固定資産の課税対象となるものは、建物、土地、車などの有形固定資産です。
これらを所有していると毎年固定資産税を支払うことになります。
そのため、不要な機械などを処分することで、固定資産廃棄損として損金算入することが可能です。
■減価償却で損金を作る
減価償却資産を得ることで使用可能期間は損金として計上し、法人税を減らすという方法もあります。
中小企業であれば、30万円未満の少額減価償却資産を2006年4月1日から2022年3月31日までに取得した場合、最大300万円までは全額を損金として算入できます。
また、10万円以上20万円未満の資産は、「一括償却資産」として、資産を購入した年度を含めた3年間、全体の1/3ずつ損金算入することができます。
この方法は、固定資産税に対する償却資産とはならないため、固定資産税がかからないというメリットがあります。
さらに、一括償却資産として処理することで損金を1/3に減らすことができるので、長い目で見た際の固定資産税の減額にもつながります。
■役員報酬などの給与を最適化
いわゆる節税対策とは少し性質が異なりますが、役員報酬などの給与を増やして経常利益を減らすことで法人税を減らすことができます。
そのため、給与を増やすことで従業員の満足度を上げ、かつ法人税を減らして節税とするという考え方もあります。
■繰越欠損金の有無を確認する
法人の所得金額は「益金 – 損金」で算出されますが、損金が上回ってしまう場合、マイナス金額分となる欠損金が生じ、いわゆる赤字の状態になります。
欠損金は次年度に繰り越すことができ、これを「繰越控除」と言います。
次年度が黒字の場合は法人税がかかってしまいますが、繰越控除を用いて本年度の欠損金を次年度の損金に算入することで法人税を減らすことができます。
そのため、前期までに繰越欠損金がないかどうかは必ず確認しましょう。
実際に節税対策を実施する際に、効果が期待できる節税方法について紹介します。
■様々な共済制度を利用
法人の節税対策として用いられる共済には以下のものがあります。
共済 |
掛け金 |
概要 |
中小企業倒産防止共済 (経営セーフティ共済) |
毎月の掛け金は、5,000円~200,000円の範囲内(5000円単位)で、年間240万円まで自由に選択可能 |
取引先の企業が倒産してしまった中小企業が、倒産しないように掛け金の10倍まで事業資金の借入れができる制度 |
中小企業退職金共済 |
毎月の掛け金は、5,000円~30,000円の範囲内で16種類があり、金額は従業員ごとに任意で選択可能 |
中小企業が従業員のために退職金を積み立てる制度 |
中小企業倒産防止共済と中小企業退職金共済ともに、掛け金は個人の経費または法人の損金に算入できます。
ただし小規模企業共済を経理処理する際に、間違って損金扱いしないように注意が必要です。
それぞれの共済は、加入条件・掛け金などが異なるため、自社がこれらの共済に加入できるかチェックしてみてください。
■オペレーティングリースを利用
オペレーティングリースとは、リース会社が出資会社からお金を集めて船舶や航空機などを購入し、それを航空会社などの貸借会社に貸し出して受け取ったリース料の利益分を、出資した会社に分配する仕組みのことです。
初年度は約70%~80%の出資額を損金に算入できます。
また、支払いは初年度だけであり、次年度以降は支払いがないこともメリットだと言えます。
売上額が多くなってしまい、多額の損金を作って法人税を減らしたい場合に良い節税方法です。
※関連記事:
IFRSだけじゃない!新リース会計基準の導入で経理業務はここが変わる!
■法人保険に加入
法人保険は掛け金の全額を損金に算入できない場合もありますが、ポイントを押さえれば、節税効果を発揮できます。
2019年に法人保険のルールが見直され、損金の扱いが以下のような割合となりました。
最高解約返戻率 |
損金算入扱い |
50%以下 |
全額損金 |
50%超~70%以下 |
保険期間の4割が経過するまでは60%損金 (それ以降は全額損金)
|
70%超~85%以下 |
保険期間の4割が経過するまでは40%損金 (それ以降は全額損金)
|
85%超 |
10年間は「保険料×最高解約返戻率×0.1」が損金(それ以降は全額損金) |
※参考資料:一般社団法人 東京法人会連合会「
法人における保険料の取扱いの変更」
契約期間の4割が経過してからも、最高解約返戻率が85%を超えない保険に加入しておけば、半損の節税効果を発揮することもあります。
全損以外は良くないと考えず、長い目で節税を実施することも重要です。
■経費を使って節税する
先述の通り、経費を使って利益を減らすことで、法人税を減らすことができます。
すぐに節税対策をしたいのであれば、以下のような施策を実施しましょう。
- 従業員を対象にした社員旅行や研修旅行を行う
- 社宅や寮を従業員に貸与する
- 自家用車を社用車登録する
- 出張手当や通勤手当を従業員に支給する
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