コロナ禍の影響もあってテレワークの普及が進み、電子化/クラウド化の必要性やメリットにリアリティを感じ始めた皆様も多いでしょう。今年から年末調整の電子化を始めるなら、準備はこの春にスタートさせるのがベスト。電子化を成功させる準備のポイントや多彩な導入メリットをご紹介します。
年末調整の電子化は早めのスタートが肝心!
2021年9月にはデジタル庁が新設されるなど、行政サービスの電子化への取り組みが進んでいます。年末調整については一足早く、2018年度の税制改革によって2020年分から保険料控除証明書や年末調整申告書などを電子データとして取得/提出できるようになりました。
行政サービスを利用する企業の側でも、働き方改革の推進やコロナ禍の影響によってテレワークなどの新しい働き方が普及しはじめ、年末調整、経費精算、勤怠管理、ワークフローといったさまざまな従業員向けサービスを電子化する動きが加速しています。
とは言え、勤怠管理や経費精算については電子化に取り組んでいるものの、「年末調整についてはこれから…」と言う企業の皆様も多いのではないでしょうか。
「我が社も令和3年(2021年)分の年末調整から電子化したい!」ということであれば、さっそく今から準備を始める必要があります。管理部門側と従業員側のそれぞれで準備しておくべきことがあるからです。
今回は、年末調整を電子化するためにどんな準備が必要なのか、そこから話を始めることにしましょう。
電子化を成功させる準備のポイントとは?
年末調整を電子化するためには、大きく分けて次のような準備が必要となります。
■電子化の範囲を決める
年末調整業務は、おおよそ「控除証明書等の取得」→「申告書の作成」→「申告書、証明書の提出」→「申告内容の確認と訂正」→「給与システムへの入力」→「申告書、証明書の保管」という流れで進んでいきます。このすべてを一度に電子化できれば理想的ですが、その分準備すべき事柄も増えていくので現実的ではありません。各企業の状況や事情に合わせて、無理なく段階的に電子化していくプランを立てましょう。
■従業員への周知・教育
年末調整は、すべての従業員が「控除証明書等の取得」→「申告書の作成」→「申告書、証明書の提出」を行う全社的なイベントです。電子化に当たっては、
- 従業員が事前に準備すべきことは何か
- 具体的な控除証明書等の取得方法や申告書の作成方法
について、従業員にしっかりと周知/教育しておく必要があります。
とくに、控除証明書等の取得をマイナポータル(行政のオンラインサービス)経由で行う場合は、マイナンバーカードが必要になるため、できるだけ早く従業員に各自でマイナンバーカードを取得するように依頼する必要があります。
■給与システムの対応
給与システムへの入力を電子化する場合、年末調整データを「従業員ごとに取り込む」か「一括して取り込む」かによって、給与システムまわりの構成は大きく変わってきます。既存の給与システムで電子化に対応可能か、用意すべきシステムやサービスは何かなど、ベンダーと相談しながら早めに検討しておきましょう。
従業員も管理部門もうれしい年末調整の電子化
ここまで読まれた皆様の中には「けっこう準備が大変だなー」と思われた方も多いでしょう。
しかし、一度体制を整えてしまえば、次の年からは年末調整が(従業員にとっても、管理部門にとっても)飛躍的にラクになることは間違いありません。
どこまで電子化するかにもよりますが、
- 従業員がテレワークを実施していても控除証明書や申告書を書面で提出するために出社する必要がなくなる
- 従業員から提出された申告書のチェックや検算がラクになり、差し戻しが減る
- データ連携で給与システムへの手入力を大幅に削減できる
- 各従業員の提出書類作成の進捗状況を容易にリアルタイムで一元管理できる
- 申告書や証明書を紙で保管する必要がなくなる
- マイナンバーなどの情報漏えいリスクを削減できる
といったメリットを享受することができます。
さらに、年末調整手続きのクラウドサービスなどを導入すれば、
- 従業員がスマートフォンでいつでもどこでも申告書を作成できる
- 自動計算/自動入力で入力モレや計算ミスなどを削減できる
- ガイダンスに従って入力するので従業員からの問い合わせが減る
といったメリットが生まれ、人事部門の業務効率化はもちろん、従業員向けサービスの向上や働き方改革に推進にも大きな効果を発揮します。
コスト削減効果も見過ごせません。ある企業では、年末調整を電子化することにより、年間280万円近くのコスト削減に成功しています。
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従業員にとっても、管理部門にとっても、メリットの非常に多い年末調整の電子化を成功させるには、無理なく段階的に導入できるプランを立て、しっかりと時間を取って早めのスタートを切ることが大切です。どこまで電子化するか、どんなシステムやサービスを導入するか、まずは給与システムなどのベンダーと相談しながら、自社に最適な電子化プランを策定しましょう!