M&Aやグループ経営が活発になっている昨今、グループの子会社や関連会社に属する企業で働いている人も多いのではないでしょうか。グループ経営には「関係会社・関連会社・子会社」など複数の定義があり、それぞれ決算上の取り扱いが異なります。では、具体的にどのような違いがあるかについてはご存じでしょうか。今回は経理担当者として覚えておきたいグループ経営について、それぞれの特徴や代表的な用語などを紹介します。
グループ会社・関係会社
「グループ会社」とは、親会社を含む子会社・関連会社などのすべての会社をまとめた、グループ経営における最も広義な言葉です。親会社は含まないと誤解されることが多いので注意してください。
■グループ会社の定義
親会社+子会社+関連会社+その他、関係性のある会社
ただし、グループ会社は法的に定められた言葉ではありません。グループ会社と同様に「親会社、子会社、関連会社の総称」としてきちんと定義が定められているのは「関係会社」という用語です。
関係会社の定義(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則)
「関係会社」とは、財務諸表提出会社の親会社、子会社及び関連会社並びに財務諸表提出会社が他の会社等の関連会社である場合における当該他の会社等(第十七項第四号において「その他の関係会社」という。)をいう。
※出典:
総務省「e-Gov」
普段、よく耳にするのはグループ会社の方かと思いますが、関係会社という用語も併せて覚えておいてください。
親会社・子会社
会社の中には、他の会社に一定数以上の株式を保有され、経営を支配されている会社があります。このとき、支配している側を「親会社」、支配されている側を「子会社」といいます。
子会社の定義は会社法第2条第3号によって、以下のように定められています。
子会社の定義(会社法第2条第3号)
会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう
※出典:
総務省「e-Gov」
上記の通り、過半数=50%超という数値が一つの基準ではあるものの、たとえ50%以下であっても「A社の経営をB社から派遣された役員が行っている」という場合は、実質的に支配されていると見なされ、A社はB社の子会社と判断されることもあります。
■連結子会社
子会社が存在する場合、親会社は連結決算によって子会社の損益や資産も計上する必要があります。このとき、連結決算する子会社のことを「連結子会社」といいます。ただし、子会社の事業が非常に小規模であったり、グループの経営戦略に関与しない場合は連結しないケースもあります。この場合の子会社は「非連結子会社」といいます。
■完全子会社
子会社のうち、100%の株式を親会社に所有されているものを「完全子会社」といいます。通常の子会社と比べると、親会社との意思疎通がスムーズであり意思決定が迅速などのメリットがあります。当然、完全子会社の親会社は1社のみですが、親会社は何社でも完全子会社を設立することができます。
関連会社
「関連会社」とは、親会社が所有する株式が子会社に比べて少なく、実質的な支配を受けていない会社のことを指します。判断基準は「親会社が所有する株式が20%超・50%以下」ですが、子会社と同様、所有される株式が20%以下であっても、財務や事業方針に大きな影響がある会社は関連会社として扱われます。
なお、決算時は、関連会社も子会社と同じく親会社の「連結決算」に組み込まれます。ただし、両者の会計処理方法は異なり、子会社は業績・財務状況を詳細に処理する「連結法」、関連会社はより簡易的な「持分法」を使用します。
子会社株式と関連会社株式
「子会社株式」と「関連会社株式」は親会社が子会社・関連会社の株を取得した際に計上する勘定科目です。どちらも有価証券の一種に数えられる資産の勘定科目であり、原則、取得した株式の割合によってそれぞれを使い分けます。また、両者をひとまとめにして「関係会社株式」として処理することもありますので、どれを使うかは自社の会計ルールに従ってください。
ここでは、子会社株式の仕訳例を紹介します。
■子会社株式の仕訳例
条件:A社の発行済み株式1,000株のすべてを購入した。1株あたり1,000円、購入代金100万円は現金で支払った。
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
子会社株式 |
1,000,000 |
現金 |
1,000,000 |
関連会社の場合も上記と同様の仕訳となりますが、原則としてA社の株式の20%(200株)超、50%(500株)以下の取引となります。
**********
子会社・関連会社・関係会社・グループ会社の違いと、代表的な勘定科目について解説しました。独立した企業における経理の現場では、連結決算などに触れる機会が少ないと思いますが、時代の流れとして、将来的に自社が企業を買収したり、買収されたりするケースも考えられます。なにより経理の基礎知識として、それぞれの違いはしっかり把握できるようにしてください。