2019年10月1日、消費増税とともに自動車に関する税制改正が行われました。特に注目されたのは自動車税の恒久減税であり、これは制度設立以来、初めてのことです。そのほかにも「自動車取得税の廃止」と「環境性能割の導入」という大きな変更がありました。
今回は、納付間近の今だから再確認したい自動車税の仕訳方法を、自動車に関する税制改正のポイントを交えながら解説します。
自動車税とは
自動車税とは、毎年4月1日時点で所有している車に発生する税金(地方税)です。税額が記入された納付書が届く「賦課課税方式」の税金であり、書類が届いたら5月末までに納付しなければなりません。
2019年10月1日、自動車税は税制改正後に購入・登録した自家用車を対象に減税となりました。自家用車とは営業車に登録していない自動車のことで、会社で利用している自動車であっても、営業車に登録していなけば自家用車に当たります。営業車は基本的に運送事業などで使用する自動車のことで、もともと税率が低く設定されており、今回の減税の対象にはなっていません。
自家用車、営業車の違いの他にも、総排気量によって税率が異なります。下記に現在の自動車税における標準税率をまとめました。
■自動車税の標準税率
総排気量 |
営業車 |
自家用車 |
1リットル以下 |
7,500円 |
25,000円 |
1リットル超~1.5リットル以下 |
8,500円 |
30,500円 |
1.5リットル超~2リットル以下 |
9,500円 |
36,000円 |
2リットル超~2.5リットル以下 |
13,800円 |
43,500円 |
2.5リットル超~3リットル以下 |
15,700円 |
50,000円 |
3リットル超~3.5リットル以下 |
17,900円 |
57,000円 |
3.5リットル超~4リットル以下 |
20,500円 |
65,500円 |
4リットル超~4.5リットル以下 |
23,600円 |
75,500円 |
4.5リットル超~6リットル以下 |
27,200円 |
87,000円 |
6リットル超 |
40,700円 |
110,000円 |
上記の表はあくまで標準税率であり、トラックやバスなどは異なります。またグリーン化などの減税措置を行った場合も税率が変化します。
「自動車取得税の廃止」と「環境性能割の導入」
自動車に関する税制改正では、自動車税の減税以外に、「自動車取得税の廃止」と「環境性能割の導入」も行われました。
自動車取得税とは、自動車を購入した際に取得価額に対して課される税金です。この税金が廃止され、代わりに導入されたのが、自動車の環境性能に応じて税率が決まる環境性能割です。税率は自家用車のうち登録車(普通車)が0~3%、軽自動車が0~2%であり、上限は自動車取得税と同じですが、電気自動車などの燃費が優れた自動車ほど低くなります。
環境性能割の税率は下記の通りです。
燃費性能等 |
税率 |
自家用車 |
営業車 |
登録車
(普通車) |
軽自動車 |
電気自動車等 |
非課税 |
非課税 |
非課税 |
「※1」かつ2020年度燃費基準+20%達成車 |
「※1」かつ2020年度燃費基準+10%達成車 |
1.0% |
「※1」かつ2020年度燃費基準達成車 |
2.0% |
1.0% |
0.5% |
「※1」かつ2015年度燃費基準+10%達成車 |
3.0% |
2.0% |
1.0% |
上記以外 |
2.0% |
※1:2018年排出ガス規制からNOx50%低減達成車又は2005年排出ガス規制からNOx75%低減達成車
※出典:
総務省「2019年10月1日、自動車の税が大きく変わります」
なお、2019年10月1日~2020年9月30日の間については、自家用車の環境性能割は1%軽減となります。このタイミングで新車を購入するという動きも多くなりそうです。
法人の自動車税の仕訳方法
法人が所有する自動車税は、「租税公課」と「車両費」のいずれかを使って処理します。基本的には前年の勘定科目を反映すれば間違いありませんが、先述の通り、税制改正があったため税率には注意しなくてはなりません。自動車税の減税対象になるのは税制改正後に購入した自家用車なので、この半年で新車を追加購入したという企業は、それぞれの車を異なる基準の税率で処理する必要があります。税額は納付書に記載されていますので、しっかり確認してから処理するようにしてください。
なお、仕訳の際に「租税公課」と「車両費」のどちらを使えばよいかについての明確なルールはありません。初めて処理するという場合は、以下の説明を読んでより最適な方を選んでください。
■租税公課を使って仕訳する場合
「租税公課」とは、税金や公共団体に納める会費、罰金などの総称であり、法人が自動車税を処理する際に使用する一般的な勘定科目です。経費計上が認められている税金をまとめた勘定科目であるため、これに該当する自動車税も仕訳することができます。租税公課による仕訳例は以下の通りです。
租税公課による仕訳例
会社で所有し、業務で使用している車両の自動車税2万500円を現金で支払い、当日に費用計上した。
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
租税公課 |
20,500円 |
現金 |
20,500円 |
■車両費を使って仕訳する場合
車両費とは、車の維持費に利用する勘定科目です。例えば、洗車代、車検代、自動車保険料、高速料金、ガソリン代などは、まとめて「車両費」として計上することができます。自動車税も車を維持するために必要な費用であるため、他の費用と同様に車両費として計上できます。複数の車両を所有している場合や、金額が大きい場合は、費用をまとめて計上できる車両費を使うと効率的です。
車両費による仕訳例
会社で所有し、業務で使用している車両の自動車税2万500円を現金で支払い、当日に費用計上した。
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
車両費 |
20,500円 |
現金 |
20,500円 |
個人事業主の自動車税の仕訳方法
個人事業主の場合も、法人と同様、自動車税は「租税公課」と「車両費」のどちらかで処理します。ただし、個人事業主は法人とは違い、車両を営業と私用の両方で使用しているケースもあるかと思います。その場合、自動車税のすべてを経費で落とすことはできません。あらかじめ「家事按分」を定め、業務に使用した分だけを費用計上する必要があります。
■自動車税における代表的な按分基準
一般的に、自動車税の按分は上記のいずれかを基準としますが、どれを基準とした場合でも事業で車両を使用した際は、目的地、利用者名、利用日時(出発、帰着時間)、走行距離(出発、帰着のメーターの差)を明記した運行記録表を作成します。この運行記録表をもとに、事業と私用で車両を使った比率を計算し、その後で仕訳を行います。
■自動車税を按分した際の仕訳例
自動車税6万円のうち、3万円を経費計上する
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
租税公課 |
30,000円 |
普通預金 |
60,000 |
事業主貸 |
30,000円 |
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事業主貸(じぎょうぬしかし)とは、個人の消費と事業の経費を明確にするための勘定科目です。自動車税のほかにも家賃や水道光熱費の支払額などに使われることもあります。法人の会計処理では使用されません。
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自動車税のように仕訳方法がいくつかある場合は、年ごとに異なった仕訳を行うと余計な混乱を招きます。勘定科目の統一をはじめとして、従来の仕訳方法を明らかにし、それに則るようにしてください。
ただし新車を購入した場合は、新しい自動車税の税率や環境性能割に注意する必要もあります。納付書の税額通りに処理すれば問題ありませんが、例年と同じという意識にとらわれ過ぎると思わぬミスにつながることもあります。自社のルールと税制改正の双方を意識することが自動車に関する税金を処理するためのポイントです。