税理士とうまく連携するために、まずは税理士の業務について整理します。基本的に、各企業は税理士しか行えない「独占業務」を依頼するために税理士と契約を結びます。下記業務を税理士以外の人物が行った場合、独占業務を侵害していると見なされてしまいます。
1.税務代理(確定申告の代行など)
税理士は税務署に対して、納税者の代わりに税金に関する申告や申請を行うことができます。先述の通り、税理士以外の人物は代理となることはできません。対象の税金には下記のようなものがあります。
- 法人税
- 地方法人税
- 消費税
- 法人住民税
- 法人事業税
など
2.税務書類の作成代理(法人税や消費税の申告書など)
税理士は、本人に代わって「税務書類」を作成することができます。主な税務書類の対象は税務代理と同様です。
3.税務相談
節税など、税に関する相談を「税務相談」といいます。税理士の資格を持たない人が質問に回答することはできません。SNSのような場であっても、独占業務に抵触する恐れがあります。
以上が税理士の独占業務です。多くの企業が帳簿の確認から決算書の作成までを税理士に依頼していますが、企業が税理士と顧問契約を結ばなければならないという義務はありません。
依頼には当然、費用もかかりますので、小規模事業者などでは確定申告のみ税理士に依頼するなど、部分的に業務を任せていることもあります。
税理士と顧問契約を結んでいる場合、月に1度、税理士が企業を訪問し、月次決算を確認したうえで経理業務や経営、税などについてアドバイスすることが一般的です。
しかし、それだけでは税理士との契約を最大限に活用できているとは言えません。以下で、税理士とうまく連携するために気をつけるポイントを4つ紹介するので、あてはまるものがないか、チェックしてみてください。
ポイント1:税理士に相談できることを把握できているか
「税理士には税務のこと以外は相談できない」と勘違いしている人もいるようですが、税理士は一般的な会計についても広く相談を受け付けています。例えば、「勘定科目がわからない」、「会計システムの入力方法がわからない」など、仕訳に関わる疑問がある場合も、相談してみましょう。
契約内容にもよりますが、顧問税理士との距離が近く気軽に相談できる関係であれば、都度、メールや電話で質問できる場合もあります。月に一度の訪問の際にチェックしてもらうのもいいでしょう。
ポイント2:「税務は税理士に丸投げ」していないか
各費用の課税処理など、税務に関わることをすべて税理士に任せてしまっているケースも珍しくありません。しかし、経理担当者が税理士に提出する資料に誤りがあれば、出し戻しや業務遅延が発生してしまいます。
また、税務のすべてを把握する必要はないものの、「交際費・消費税の課税対象と判定」、「資産や設備投資の取り扱い」の2点については、税理士が処理した内容を理解できる程度の知識は必要です。実際の処理の際には、税理士に内容や方針に対する説明を求め、一緒に確認できるようにしてください。
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ポイント3:実務の改善ポイントまでアドバイスをもらえているか
会計システムの導入や変更、経費の精算フローの見直しなど、経理をめぐる組織体制を改善したい場合、上司に掛け合う前に税理士に相談してみましょう。
複数の顧問先を持つ税理士は、コストパフォーマンスに優れた会計システムや効率的な業務フローを知っているケースが多々あります。有益な情報を取り込み、税理士の「お墨付き」をもらうことで提案に効果的な裏付けをすることができます。
ポイント4:税務調査にも協力できているか
税務調査の際、税理士は会社の代理として矢面に立つことになります。経理担当者として協力できることは多くはありませんが、対策について日頃から常に話し合っておくことは重要です。ミスそのものを減らせるだけでなく、お互いの認識を合わせることでスムーズに調査に対応することができます。
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