年末が近づくにつれ業務が慌ただしくなってくると、経理担当者にとって憂鬱の種となるのが年末調整です。申告書の回収や税額計算など、年末調整に関わる業務は様々です。今回は、一連の業務をスムーズに行うために、基礎的な知識である「年末調整の仕訳」について解説します。また、さらなる効率化を図れるツールも紹介しますので参考にしてみてください。
毎月の給料の仕訳
企業に勤めている従業員は、毎月の給料から所得税などの税額が源泉徴収されます。従業員が個人で支払った保険料があったり、結婚、離婚などで扶養家族の人数が変わったりした場合、申告によって税額を年末に再計算し、過不足を調整するのが年末調整です。税金を払い過ぎていた場合は「還付金」として従業員に払い戻され、足りないと「追加徴収」されます。
この時の仕訳方法を以下で説明します。まずは毎月の給料の仕訳から見てみましょう。
■給料支払時の仕訳
借方 |
摘要 |
貸方 |
給与 ¥500,000 |
3月分給料 |
普通預金 ¥380,000 |
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社会保険料 |
預り金 ¥80,000 |
|
源泉所得税等 |
預り金 ¥30,000 |
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住民税 |
預り金 ¥10,000 |
源泉所得税を含む、社会保険料や住民税はすべて「預り金勘定」で処理することが一般的です。品目欄や摘要欄などにそれぞれの目的を記載し、違いを明確にします。
給与から源泉徴収した金額を納付する際は、以下のように仕訳します。
■源泉所得税を納付したときの仕訳
借方 |
摘要 |
貸方 |
預り金 ¥30,000 |
源泉徴収所得納付 |
現金 ¥30,000 |
上記の仕訳は毎月行う必要があります。
続いて、年末調整時に過不足が発生した際の仕訳方法について解説します。
年末調整時の仕訳
年末調整の仕訳は「預り金勘定」を使って調整し、12月の給料で精算するのが一般的です。具体例は下記の通りです。
年末調整の仕訳1:還付金が発生した場合
Aさんの年末調整で還付金1万円が発生しました。この場合、12月分の給与で精算することも、還付金を手渡すこともできます。それぞれの仕訳方法は下記の通りです。
■給与で精算するケース
借方 |
摘要 |
貸方 |
給与 ¥500,000 |
3月分給料 |
普通預金 ¥390,000 |
預り金 ¥10,000 |
社会保険料 |
預り金 ¥80,000 |
|
源泉所得税等 |
預り金 ¥30,000 |
|
住民税 |
預り金 ¥10,000 |
■還付金を手渡すケース
借方 |
摘要 |
貸方 |
給与 ¥500,000 |
3月分給料 |
普通預金 ¥380,000 |
|
社会保険料 |
預り金 ¥80,000 |
|
源泉所得税等 |
預り金 ¥30,000 |
|
住民税 |
預り金 ¥10,000 |
借方 |
摘要 |
貸方 |
預り金 ¥10,000 |
源泉所得税 |
現金 ¥10,000 |
年末調整の仕訳2:追加徴収の仕訳
Bさんの年末調整では源泉所得税等に5,000円の不足がありました。この場合は12月の給与振り込み時に天引きして処理します。
■給与で精算するケース
借方 |
摘要 |
貸方 |
給与 ¥500,000 |
3月分給料 |
普通預金 ¥375,000 |
|
社会保険料 |
預り金 ¥80,000 |
|
源泉所得税等 |
預り金 ¥30,000 |
|
住民税 |
預り金 ¥10,000 |
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年末調整不足額 |
預り金 ¥5,000 |
貸方の普通預金から5,000円を天引きし、新たに預り金(年末調整不足額)を記入して処理します。
クラウドサービスの活用
計算例では前提条件や金額を分かりやすくしていますが、実際はもっと複雑な状況が多々あります。当然ですが、年末調整に関わる業務は仕訳の他にも多数あり、精算作業だけに時間をかけるわけにもいきません。
特に煩雑になりがちなのが、従業員からの申告書や資料の回収です。膨大な書類を一つ一つ集め、内容をチェックしていくには相当な稼働がかかります。
これを解消するために、ツールを活用する方法があります。マルチデバイスに対応したクラウドサービスなどを使えば、書類の管理もスムーズです。
以下では、ミロク情報サービスが開発・運用している「Edge Tracker(エッジトラッカー)」を例に挙げて説明します。
「Edge Tracker」は、経費精算、勤怠管理、給与明細配付などに対応したクラウドサービスです。年末調整にも専用の機能が搭載されており、紙でのやりとりが一般的な各種申告書類について、PCやタブレットからの入力が可能です。具体的な特徴を下記にまとめました。
■「Edge Tracker」の「年末調整申告」機能
- ペーパーレス化で、時間とコストを削減できる
申告書類に関する配付、記入、回収業務をシステム上で行うことができます。不備による差し戻しや、不足資料の再提出依頼もスムーズです。
- マルチデバイスで、いつ、どこにいても申請できる
書類を直接手渡す必要がないので、従業員は自分の都合の良い時間、場所から申告を完了することができます。リモート勤務などの場合は、提出のためだけに出社する必要もなくなるため、経理担当者だけでなく従業員の稼働も大幅に削減できます。
- 管理画面で、申告書の提出状況を一元管理できる
申告が完了しているか、あるいは作成中なのか未着手なのかを、管理画面で確認することができます。さらには、誰にどの書類が必要か、その書類がすべて提出されているのかどうかも確認できるため、督促も簡単に行えます。
上記のような機能を利用すれば、稼働時間を格段に減らすことができます。また「Edge Tracker」のように、経費精算や勤怠管理などのシステムも備わっていれば、周辺業務も併せて効率化でき、慌ただしい年末の業務を円滑に進めることができるでしょう。
※関連リンク:
年末調整にも使える!いつでもどこでも利用可能なクラウドサービス「Edge Tracker」
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年末調整は特定の時期にまとめて行う作業なので、その場しのぎの対応では毎年同じような部分につまずくことが多々あります。マニュアルを作成して年ごとにブラッシュアップする、仕訳の基礎知識を根本から理解しておくなど、スムーズに進められる対応もしっかりしておいてください。
また、本文でも触れたように、未だに紙ベースで申告書類を作成、処理している企業も多数あります。生産性の向上、作業の効率化を図るためにもクラウドサービスの利用も検討、提案してみてください。