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決算/確定申告 2019/10/08

決算前に知っておきたい。引当金の仕訳ポイントは目的に合わせた計上

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中間決算や本決算が近づいてくると、「引当金」の処理に頭を悩ませる経理担当者もいるのではないでしょうか。引当金は正しく使うことで将来起こり得るリスクに備えることができますが、実際に計上するのは慣れていないと難しいものでもあります。今回は、引当金を計上するためのルールや代表的な勘定科目を、仕訳例とともに解説します。

引当金とは

引当金とは、いずれ発生するであろう費用や損失を、事前に帳簿に計上する「負債」の勘定科目です。こうして備えておくことで、将来的に必要となる費用に不足がないよう、分けて管理することができます。
ただし、計上の目的は中小企業と上場企業で異なります。中小企業では、引当金を税務上の経費として算入できる特例があるため、確定申告の際、税務署や金融機関に決裁書を提出する必要があります。しかし、上場企業では引当金を経費とすることはできません。ではなんのために計上するのかというと、将来発生する損失や支出を計上することで「投資家に有用な情報を提供する」という目的があるのです。
また、上場企業は「商法」、中小企業は商法に加えて「法人税法」に則って引当金を設定する必要があります。当然、どのような費用でも引当金として計上できるわけではありません。

■引当金の要件
  • 将来的に発生の可能性が高い費用・損失であること
  • 計上の時点で、費用・損失の原因が発生していること
  • 計上する費用・損失の金額が合理的に見積れること
※参考資料:企業会計原則注解18

引当金を設定するには、上記の3つの要件をすべて満たす必要があります。

引当金の分類と代表例

引当金は、目的によって「評価性引当金」、「負債性引当金」に分類されます。また、負債性引当金は、債務性の有無によってそれぞれ勘定科目が設定されています。

評価性引当金とは
発生の可能性が高い「損失」に備えるために、資産から控除(マイナス表示)して計上するのが評価性引当金です。
具体的には「貸倒引当金」や「投資損失引当金」などが該当します。

負債性引当金とは
評価性引当金が「損失」のために計上するものであるのに対して、負債性引当金は将来の「支出」に備えることを目的として負債項目に計上するものです。負債性引当金は債務性の有無で分類され、評価性引当金に比べると、より多くの勘定科目が設定されています。

■債務性がある負債性引当金
名称 目的
賞与引当金 翌期、従業員に支給する賞与に備えて計上する
※仕訳方法は後述
役員賞与引当金 翌期、役員に支給する賞与に備えて計上する
製品保証引当金(製品保証等引当金) リコールや1年保証などの無償修理・交換に備えて計上する
特別修繕引当金 1年を超える有形固定資産(工場)の修繕に備えて計上する
※1年以内の修繕は「修繕引当金」となる
完成工事補償引当金 主に建設業者が、完成工事の瑕疵担保責任の発生に備えて計上する
工事損失引当金 主に建設業者が、赤字が発生する可能性の高い工事に備えて計上する
売上割戻引当金 売上などに応じて支払う「売上割戻金」の発生に備えて計上する
返品調整引当金 当期に売り上げた商品を次期以降の返品に備えて計上する
■債務性がない負債性引当金
名称 目的
修繕引当金 1年以内の有形固定資産(工場)の修繕に備えて計上する
※1年を超える場合は「特別修繕引当金」になる
損害補償損失引当金 将来発生する可能性が高い事故、訴訟などに備えて計上する
債務保証損失引当金 次期以降の債務保証の履行に備えて計上する
このように引当金の勘定科目は、目的によって処理が大きく異なります。特別なケースでないと発生しない引当金もあるので、注意してください。なお、法人税法では基本的に引当金の計上が認められていませんが、中小企業では例外として「貸倒引当金」のみ損金算入することができます。
※2018年度の税制改正で「返品調整引当金」が原則的に計上できなくなりました。

貸倒引当金の仕訳例

続いて、引当金の代表的な勘定科目である「貸倒引当金」の仕訳方法について解説します。貸倒引当金は以下3つのタイミングで仕訳するケースがほとんどです。

■貸倒引当金を仕訳するタイミング
  • 決算時における貸倒引当金の繰入れと戻入れの際
  • 貸倒れが発生した際
  • 貸倒れ処理した費用を当期に回収する際

今回は、上記の中でも経理担当者が仕訳する機会の多い「決算時における貸倒引当金の繰入れと差戻し」を目的とした仕訳例を紹介します。

貸倒引当金繰入(中小企業の場合)

中小企業にて貸倒引当金を繰り入れる際は、「洗替法(あらいがえほう)」という手法を用います。

洗替法では、まず前期の貸倒引当金の残高勘定を全額戻し入れ、その後改めて、当期の貸倒引当金を全額繰り入れるという手順を取ります。なお、貸倒引当金を除く際は収益勘定の「貸倒引当金戻入」、計上する際は「貸倒引当金繰入」という勘定科目を使って仕訳します。

■貸倒引当金繰入の仕訳
前期に5万円の貸倒引当金を計上しており、今期は8万円の貸倒引当金を計上する場合
  • 前期の引当金を戻し入れる
    借方 貸方
    貸倒引当金 50,000円 貸倒引当金戻入 50,000円
  • 今期の貸倒引当金を繰り入れる
    借方 貸方
    貸倒引当金繰入 80,000円 貸倒引当金 80,000円

貸倒引当金繰入(上場企業の場合)

上場企業が引当金を繰り入れる場合、前期の貸倒引当金残高と今期の貸倒引当金の差額を計算し、足りない差額を計上する「差額補充法」を使うのが一般的です。

■貸倒引当金繰入の仕訳
  • 前期の引当金5万円-今期の引当金8万円=3万円の差額
  • 差額分を引当金に繰り入れる
    借方 貸方
    貸倒引当金繰入 30,000円 貸倒引当金 30,000円
貸倒引当金繰入と戻入の作業は、決算前に頻出するのでよく理解しておいてください。
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引当金の各勘定項目と、貸倒引当金繰入・差戻しについて解説しました。引当金は「損失や支出に備える」という性質上、先を見通す力が必要になります。計上時点の状況把握を正確に行うために、日頃からしっかり管理を行いましょう。
また、貸倒引当金に関しては、債権を回収する会社経営には欠かせません。都度、債権回収の進捗を確認するなど、こちらも日常的なチェックを欠かさないようにしてください。

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