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人事/労務働き方改革 2021/02/18

経理のモバイル化に潜む罠?!失敗事例に学ぶ導入のポイントとは

新型コロナウイルス感染対策のひとつとして、昨年に引き続き業務のリモート化を実施、検討している企業は多々あります。その中でも比較的導入しやすいとして関心を集めているのがスマートフォンなどのモバイル媒体を使った働き方です。
ただ、未だに属人的な作業や紙文化などの障壁が多い企業もあり、ツールの導入に失敗してしまったケースも少なくありません。今回の記事では、モバイル化での失敗事例を確認することで正しいモバイル化のポイントを探っていきます。

経理業務のモバイル化とは

モバイルとは「移動できる」という意味の「mobile」から用いられているIT用語で、スマートフォンやタブレット端末、小型のノートPCなどの持ち運べる情報端末を指します。昨今、急増しているリモートワークでは、このようなモバイル端末を利用したモバイル化も注目を集めています。リモートワークにPCを使う人は多いですが、スマートフォンで完結できる業務も増えてきています。

業務のモバイル化は、クラウドソフトなどのツールを利用すると導入しやすくなります。スマートフォンであれば端末の支給も比較的簡単であり、セキュリティ環境によっては、個人で使用しているものをそのままを利用することも可能です。これにより自宅やオフィスといった据え置きのPCがある環境だけでなく、移動中の電車内や、立ち寄ったカフェなど、スマートフォンひとつあればいつでもどこでも業務ができるようになります。
例えば以下のような経費精算作業もモバイルで行うことができます。

  • 交通費や交際費も含めた経費について、支払う前の事前申請や仮払い申請、及びそれに対する承認
  • 支払い後の経費の申請、及びそれに対する承認
  • 交通費系ICカードやクレジットカード、銀行口座などの明細における自動取り込み

上記のようなモバイルを使った経費精算作業では、営業担当者など経費を使う本人が経理担当者を通さず直接システムにデータを入力できるので、余計な間接業務を省略することができます。経理業務は直接利益を生み出さない間接部門に当たるため、あまり人件費をかけられないのが企業の実情です。そのため、モバイル化での業務改善は人件費削減を達成する手段として注目を集めているのです。

モバイル化の失敗事例

しかし、モバイル化はすべてを解決できる魔法のツールというわけではありません。しっかりとした運用体制を構築しないと、宝の持ち腐れになってしまいます。ここからは経費精算業務をモバイル化した際の失敗例について紹介します。

事例1:導入したシステムに社員のITスキルが適さなかった
A社では「システムを導入すれば自動的に業務効率が上がるもの」という考えで、社員への事前説明や運用体制の変更なしに業務のモバイル化を進めました。
その結果、システムの使い方がわからない社員への対応で、かえって稼働が逼迫することになってしまったのです。 原因は、会社側が社員のITスキルの低さを把握してなかったことにありました。A社はもともとITとは縁遠い業界であったこと、スマートフォンの操作に不慣れな年配の社員が多いことなど、モバイル化への懸念点がいくつもあったことに気が付いていなかったのです。そのため、本来はスマートフォンを利用して自宅や移動先で即座に完了できる業務のはずが、結局、出社して使い方を聞いてから入力を行う…そんな本末転倒なフローとなってしまいました。

この失敗例のポイントとなるのは事前の調査や準備の重要性です。導入の段階で、社員のITスキルや年齢を考慮していれば、IT機器に不慣れな人でも使えるという観点からシステムを選定することができました。また、社員から懸念点や要望をヒアリングしたうえで質問事項を想定したマニュアルを用意するなどの対策も行えます。準備をしっかりすることで、社員がスムーズにモバイル化に慣れる環境を構築すべきだったということがわかる事例です。

事例2:運用時の影響範囲を把握していなかった
B社の経理部門は、少しでも稼働時間を削減したいという目的でモバイル化への取り組みを始めました。機能性や使いやすさを考えながら慎重にシステムを選んだ結果、仕訳や経費精算などのデータ入力は大幅に作業効率が上がりました。担当者からの評判もよく導入は一見成功したかのように思えました。
しかし他部署からの経費申請は従来通りエクセルデータのままです。そこで他部署にもシステム導入を求めてみると、既に別のシステムを使っていたことが判明しました。なんとか既存のシステムと新規のシステムの連携を図ろうとしたものの、データ形式が合わず、双方でそのままデータを共有することはできませんでした。 結果、経理担当者はエクセルデータとシステム両方の管理が必要になって、思ったような稼働削減は実現できませんでした。

この失敗例では、システム運用時に業務の影響範囲がどこまで及ぶかを把握しきれていなかったことが原因でした。他部署も含めた導入が必須ということが最初からわかっていれば、連携を前提にしたシステムの選択ができていたはずです。このように、導入時は機能の良し悪しだけにとらわれず、どの部署の業務と関係があるか、その部署が既存のシステムを持っているかなど社内状況も把握してシステムを選ばなければなりません。

モバイル化を成功させるには

先述の失敗例から、モバイル化には社内状況の把握と、それに沿ったシステム選定が重要になることがおわかりいただけたかと思います。最適なシステム選定と安定した運用体制を築き、モバイル化のメリットを最大限に活用できれば業務効率は大幅にアップします。
例えば、C社では毎月200件近い顧客に対して請求書の作成、入金確認、経費精算を手作業で行っていましたが、経費精算のモバイル化を進めたことで申請から領収書の確認、チェックなど、すべてのフローがスマートフォン上で完結できるようになりました。さらにクラウド上での請求書作成や取引先への自動メール配信機能を活用することで、従来の3分の1程度まで業務時間を削減しています。

また、D社ではモバイル化を基軸としたペーパーレス化も実施しています。領収書をスマートフォンの写真で提出する機能により紙での管理が不要になり、社員は会社にいなくても経費を申請できるようになりました。地方の営業所など、遠隔地から経理部への経費精算関連書類の郵送も不要になり、スピーディな処理を実現しています。 これを皮切りに経理業務のリモートワークを取り入れたことで、業務時間を年間200時間以上も短縮しています。利用頻度の高い経費精算からモバイル化をスタートさせ、徐々に他の面もモバイル化していったことが大きな効果を得た理由としています。

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今やスタンダードになりつつあるリモートワークの中でも、モバイル端末を使った業務は場所を選ばないことから導入しやすいとされています。経理業務におけるリモート化の足枷にもなっていた「紙文化」を解消するための、「領収書のデジタル化」機能なども増えてきており、導入すれば様々なメリットがあります。
ただし、本文でも紹介した通り、なんの準備もなく導入してしまうと、かえって逆効果となる場合もあります。モバイル化を導入する際は、組織体制、業務内容、利用者のITスキル、既存のシステムなどを総合的に考慮した上でシステムを選ぶことが成功のポイントです。

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