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FinTech 2018/02/27

税理士の歴史とフィンテック時代に生き残る戦略

2月23日は税理士記念日。これは、税理士法の前身である税務代理士法が1942年2月23日に制定されたことに由来します。
そこで今回は、税理士記念日にちなみ改めて税理士について考えてみたいと思います。
これまで税理士が担ってきた役割、そしてこれからのフィンテック時代に求められるスキルと戦略について考察します。

税理士の歴史

明治時代、戦争に使う費用を集めるため、国は増税策に踏み出しました。新たな税制が導入されたことで人々は税金対策に悩むようになり、税金に関する専門家が必要とされはじめます。それが税務代弁者であり、税理士の前身です。 納税手続きや税金相談を求める声が大きくなっていく中、税務代弁者はそうしたニーズの受皿となりました。

当時の税務代弁者は無資格であり、税務に精通した弁護士や国税従事者のOBなどがその役割を担っていました。ところが、社会的ニーズの高い業務を無資格でできるとあって多大な報酬を要求する悪質な存在が目立つようになったのです。明治時代に一度は規制が行われたものの問題は解決せず、1942年の2月23日に制定された税務代理士法によって事態はようやく収拾しました。これが後の税理士記念日です。

その後、日本は急速な近代化を遂げる中で、税額を納税者自身が自己申告する方式を採用することとなります。この自己申告制は、当然ながら高度な専門知識が必要とされたため、1951年、納税者の代理となって納税業務を行う代理人制度として税理士法が制定されました。この時、税理士という名称が生まれ、それまでの許可制から試験制度に移行、人格的にも能力的にも一段上の人材を輩出する仕組みが整いました。

税理士の役割

税理士の義務の遵守及び税理士業務の改善進歩に資するために設立されたのが、日本税理士会連合会(日税連)です。日税連は全国15の税理士会で構成され、税理士の登録事務も行っており、「税理士は税の専門家として納税者が自らの所得を計算し、納税額を算出する申告納税制度の推進を担う」と、税理士の役割を定義しています。

また、日税連のホームページには、税理士の仕事として下記の7項目が紹介されています。

  • 税務代理
    納税者を代理して確定申告、青色申告の承認申請、税務調査の立会い、税務署の更正・決定に不服がある場合の申立てなどを行います。
  • 税務書類の作成
    納税者に代わって、確定申告書、相続税申告書、青色申告承認申請書、その他税務署などに提出する書類を作成します。
  • 税務相談
    納税者が税金のことで困ったとき、わからないとき、知りたいとき、ご相談に応じます。
  • e-Taxの代理送信
    納税者の依頼でe-Taxを利用して申告書を代理送信することができます。この場合には、納税者自身の電子証明書は不要です。
  • 会計業務
    税理士業務に付随して財務書類の作成、会計帳簿の記帳代行、その他財務に関する業務を行います。
  • 補佐人として
    税務訴訟において納税者の正当な権利、利益の救済を援助するため、補佐人として、訴訟代理人である弁護士とともに裁判所に出頭し、陳述(出廷陳述)します。
  • 会計参与として
    中小の株式会社の計算関係書類の記載の正確さに対する信頼性向上に貢献します。「会計参与」は、株式会社の役員として取締役と共同し、計算関係書類を作成します。税理士は会計参与の有資格者として会社法に明記されています。

日本税理士会連合会ホームページを参考に、当メディアに適した表現に変えています。


国税庁のデータによると、1960年時点で約1万人だった税理士の登録者数は、2017年には約7万6000人と、57年間で約7.6倍も増加しています。公認会計士は約3万6000人、税理士や公認会計士が運営する事務所には約17万人の職員が勤務し、企業の経理担当は約380万人と言われています。今や社会や企業にとって欠かせない存在です。

フィンテック時代に必要な戦略

しかし現在、金融業界に吹き荒れるテクノロジーの影響で税理士を取り巻く環境も大きく変わろうとしています。オックスフォード大学のAI研究者、マイケル・オズボーン准教授の著名な論文によると、10年後に90%の確率で無くなる仕事の中に「税務申告代行者」と「簿記、会計、監査の事務員」が入っています。
既にエストニアでは、インターネットによる申告手続きシステム「e-Tax」が2000年から始まっており、現在では納税手続きのほぼ100%がオンラインで行われています。これによって個人の所得申告が、パソコン前での3〜5分間の作業で完結するようになりました。そのため、個人向けの税理士・会計士が介在する必要はほとんどなくなってしまいました。

フィンテックベンチャーは税理士事務所や企業の経理部門で行われている記帳業務や会計処理の自動化を推進しています。2017年の電子帳簿保存法の規制緩和では、スマートフォンで撮影した領収書や請求書の画像保存も認められるようになり、2020年には資本金1億円以上の大企業に法人税や地方法人税、消費税の電子申告が義務付けられるなど、政府もデジタル化を後押ししています。
税理士事務所や企業の経理部門のルーティンワークの多くが消えようとしている中、これからの税理士・経理担当に求められるスキルはどんなものなのでしょうか。

都内で会計事務所を営むある税理士は「強みを打ち出すことが大事」と言います。同税理士は顧問報酬の低価格競争に巻き込まれて悩んだ結果、相続税に特化することで業務を安定させたと語ります。自身の特徴を先鋭化した方がインターネットでも検索されやすく、悩みを抱えた顕在顧客に探してもらいやすくなるとのことです。

もうひとつのヒントは付加価値をもつこと。従来の業務に加え経営コンサルティング、M&A(合併・買収)、事業継承など市場ニーズが高い領域の業務を付加価値としていきます。これは様々な業界に共通する現象ですが、テクノロジーによって単純作業が消滅するに従い、顧客の問題解決にフォーカスしたコンサルティング業務が重要視されています。自分の強みは何か、付加価値は何か、じっくり考えてみてはいかがでしょうか。
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社会に欠かせない役割を担ってきた税理士ですが、大きな変革期にさしかかっています。それは、企業の経理担当も同じです。「自分の強みを打ち出す」、「付加価値をもつ」という視点から見てみると、伸びている事務所は会計・税務の専門スキルよりコミュニケーションスキルを重視する傾向にあり、将来的にAIなどで代替されるスキルより人間しかできない能力に重きを置いています。これからの時代は、税務申告を代行するだけの税理士事務所よりも、税務の問題を解決する税務コンサルティングという道筋が脚光を浴びそうな気配です。

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