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業務全般制度改正 2017/03/09

領収書のスキャナ保存が可能に!

電子帳簿保存法の大幅規制緩和で加速する経理部門のペーパーレス化

2005年(平成17年)~2016年(平成28年)の電子帳簿保存法改正を受けて、国税関係書類のスキャンによる電子化保存が大きく規制緩和されることになりました。

具体的には、

  • 契約書、領収書などに関する金額基準(3万円以下)の廃止
  • 国税庁または税務署長による事前承認が不要
  • 電子署名が不要(タイプスタンプの付与と入力者情報の保存のみ)
  • 大きさ情報の保存が不要
  • グレースケールでのスキャナ保存が可能

と、事実上、すべての契約書・領収書をスキャナ保存できる環境が整えられており、ビジネスでのペーパーレス化が大きく加速すると期待されています。

しかしながら、まだまだ電子帳簿保存法の規制緩和に関する認知度は低いようです。

それでは実際のところ、今回の規制緩和は経理部門にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。
また、国税関連書類のスキャナ保存を実現するにあたっては、どのような課題が発生し、どのような解決策が採用されているのでしょうか。

1980年代初めに創業して以来、外食産業全般に向けて幅広く事業を展開し、近年では、介護老人福祉施設向けのラインナップを充実させて業績を伸ばしている、業務用食品卸業W社のケースからご紹介したいと思います。

国税関連書類のスキャナ保存を実現するためにクリアしておくべき3つのハードルとは?

「紙の文書や帳票を無くすとこは、経理部門の夢ですよね」
と、笑いながら語ってくださったのは、W社で経理部部長を務める内村氏です。

「毎日大量の伝票を処理している当社では、 早くからペーパーレス化に取り組んできました。紙の伝票が業務効率を低下させ、紛失などのトラブルを招き、コストを増大させていることは明らかでしたから」

しかし、ペーパーレス化推進のネックとなってきたのが、国税関連書類だという。

「2005年の電子帳簿保存法改正で、証憑のスキャナ保存が可能になりましたが、掲載金額3万円以上の領収書や契約書は対象外という制約があったため、結局、導入は見送ってしまいました」

紙での保存と電子データでの保存を並行させることによって、かえって経理業務を複雑化させてしまう可能性があったと、内村氏は指摘します。
それだけに、今回の規制緩和に対する期待は大きかったとのこと。

「これで、経理部門の完全ペーパーレス化を実現する可能性が開けました。残る課題は『適正事務処理要件』『タイムスタンプ付与』『入力者情報の保存』です」

相互けん制、定期的なチェック、再発防止策を社内ルール化して実施する『適正事務処理要件』については、以前から会計監査や内部統制監査を受けていたため問題なくクリアできたそうです。

「どのような形で『タイムスタンプの付与』と『入力者情報の保存』を実現するか、ソリューションの選定やワークフローの見直しを進めていたところ、会計システムベンダーから『最適なクラウドサービスがある』と提案があったのです」

既存の会計システムにタイムスタンプ機能を追加できるクラウドサービスを導入

PDF形式のスキャンデータにタイムスタンプを付与するサービスは多数ありますが、それを経理業務のフローに無理なく組み込むにはどうすべきかが問題でした。

「今回導入を決めたクラウドサービスは、現在使っている会計システムと連携してワークフロー機能にタイムスタンプ機能を追加できるもので、既存のワークフローを変えることなく、申請時にPDF書類を添付するだけで、 申請時/承認時のタイムスタンプを付与することができます(下図参照)」

と、内村氏は導入の決め手を挙げてくれました。

「タイムスタンプの改ざんを検知・検証できるため、真実性も担保できます。入力者情報については、会計システムのログ管理機能で保存と確認が可能でした」

クラウドサービス自体の信頼性や安全性も、大きな決め手となったそうです。

「タイムビジネス信頼・安心制度で認定された高精度な時刻情報であること、そして、PDF書類のハッシュ値だけをクラウドサービスに送るので、情報漏えいのリスクを最小化できることも魅力です」

「HTTPS通信を利用するためファイアーウォールの設定変更が不要であること、署名鍵証明書をクラウド側で管理するため面倒な自社管理が不要であることなど、クラウドサービスならではの利便性の良さも見逃せないポイントでした」

それでは、国税関連書類のスキャナ保存によって、経理部門にはどのようなメリットがもたらされたのでしょうか。

経理業務の負担とコストを軽減し効率アップを可能にするスキャナ保存

「7年間の保管義務がある領収書や契約書などをスキャンデータとして保存し、 定期的なチェックの後、紙の原本は破棄できる。このメリットは想定していた以上に大きいですね」
と、内村氏は指摘します。

「大量の国税関連書類を長期間にわたって保管・管理するために必要な業務負担、コスト、保管スペースなどを軒並み削減することが可能になりました。ペーパーレス化の威力を改めて実感しています」

スキャンによる電子データ化は、業務効率化にも大きく貢献しているとのこと。

「当社は全国各地に12か所の支店や営業所を展開していますが、本社に領収書などの原本を発送するため、業務にタイムロスが生じていました。スキャンデータであれば、ネットワーク経由で送受信できるので、書類の受け渡しをほぼリアルタイムで行うことが可能になっています」

スキャナ保存による経理業務の効率化・スピード化は、サービスレベルや顧客満足度の向上、さらには競争力の向上にも貢献していくだろうと、内村氏は、導入効果の拡がりに期待を寄せています。

会計システムの帳簿からのスキャンデータの特定・参照も容易に

さらに内村氏は、会計システムと連携しているからこそのメリットも大きいと語ります。

例えば、帳簿データとの相互関連性や検索性の良さも、そのひとつ。

「スキャナ保存された領収書などは、ワークフロー上でタイムスタンプを付与され、会計システムのデータベースサーバに保存されますから、仕訳帳や振替伝票などからドリルダウンして、簡単に特定・参照することができます。
会計システムとの連携を考えずタイムスタンプサービスを導入していたら、スキャンデータの活用度は半減していたでしょうね」

もうひとつのメリットがスキャンデータの保全性です。

「BCP(事業継続計画)の一環として、会計システムのデータベースサーバは、別のデータセンターにバックアップされていますから、スキャンデータを失うリスクは非常に少ないと言えます。紙のまま保管する方が、はるかにリスキーではないでしょうか」

最後に内村氏は、次のように指摘してくださいました。

「今回の導入にあたって、社内外のいろいろな人と話をしましたが、電子帳簿保存法の規制緩和に関する認知度は、驚くほど低いですね。領収書や契約書のペーパーレス化は、業務効率化やコスト削減に大きな効果をもたらします。ハードルが低くなったこの機会に、是非とも検討してみて欲しいですね」
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