役員や社員の出張に欠かせないのが、旅費交通費の経理処理です。この旅費交通費ですが、節税にもつながるのをご存知でしたか?実は旅費交通費は、会社だけでなく出張する社員にとってもメリットがある「おいしい経費」なのです。
今回は旅費交通費の節税効果とそのポイントについて解説します。今までは見落としがちだった費用も、もしかしたら旅費交通費になるかもしれません。これを機にぜひ見直してみてください。
旅費交通費とは
旅費交通費とは、事業に関わる業務を遠隔地で行うときに発生する宿泊費などの「旅費」と電車代などの「交通費」を合わせた勘定科目です。経費として処理する場合は旅費交通費として借方科目に記帳します。その場合は、以下のように仕訳します。
■旅費交通費の仕訳例
借方科目 |
金額 |
貸方科目 |
金額 |
旅費交通費(交通費) |
×××× |
現金 |
×××× |
旅費交通費(宿泊費) |
×××× |
|
|
旅費交通費(日当) |
×××× |
|
|
また、一口に旅費交通費といっても、その内訳は数多くあるので、実際は補助科目を設定して処理するケースが多くなっています。主な内訳は以下の通りです。
- 出張交通費(航空運賃、電車代、タクシー代、有料道路交通料など)
- 出張宿泊代、宿泊費
- 昼食代などの食事代、食費
- 出張手当(日当)
- 赴任旅費(転勤の際の交通費や支度料)
- ガソリン代
企業によって扱いが異なるものの、昼食代などは旅費交通費として計上できるケースもありますので、要チェックです。
一方、「業務に関わる研修会への参加費用=研修費」、「展示会などへの参加費用=広告宣伝費」のように、旅費交通費として認められそうな経費であっても、実際は旅費交通費ではない経費もあるので仕訳する際は注意しましょう。
旅費交通費が節税につながる理由
幅広く経費として認められている旅費交通費ですが、実は消費税の節税にも深い関係があります。このときに重要なポイントが「課税仕入れ」として経費計上できるか否かになります。課税仕入れとは、企業が消費税を計上する際に課税売上から控除される仕入れ金額(※1)のことで、基本的に課税仕入れの金額が大きくなるほど、納める税金は少なくなります。旅費交通費はこの課税仕入れとして計上可能な上、業種によってはその額もかなり大きくなるので、正しく計上すれば効果が得られるとされています。
例えば、100万円の旅費交通費を計上した場合、消費税分だけでも8%で8万円の節税につながるのです(2019年2月時点)。
※1 消費税の納税額=「課税売上-課税仕入れ」
会社と出張者双方の節税になる出張手当(日当)
旅費交通費の内訳のなかでも特に「おいしい経費」といわれているのが「出張手当(日当)」です。
出張手当とは出張日当、あるいは日当ともいわれ、住宅手当などの各種手当のうち、出張した役員や社員に対して直接必要な交通費や宿泊費以外に支給する金銭のことで、出張先の食事代などの補助として支払われています。また、日帰り、宿泊問わず支給することができます。
その出張手当ですが、「会社にとっても、出張者にとっても節税になる」ため、会社と出張者双方がwin-winになれるといわれています。
出張手当は旅費交通費に含まれるので、会社にとっては節税対策の一環になるのです。同時に出張手当は所得税法法第9条第1項第4号に「非課税所得」として定められており、出張者にとっても住民税や所得税の節税につながります。
■所得税法第9条(非課税所得)
第1項
第4号
給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、若しくは転任に伴う転居のための旅行をした場合又は就職若しくは退職をした者若しくは死亡による退職をした者の遺族がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの。
出張旅費規程のチェックポイント
節税のポイントがたくさんある旅費交通費ですが、前述した「研修費」「広告宣伝費」の他にも、本来は「交際費」「会議費」「福利厚生費」などで処理する必要がある紛らわしい項目がいくつかあります。間違って出張経費として処理してしまうと税務調査で指摘されてしまう恐れもあるので、まずは会社の出張経費の扱い方を明確にした「出張旅費規程」の各ポイントを確認しましょう。
- 各役職に日帰りや宿泊、国内・海外別などのケース別で出張手当が決まっているか
※海外出張の場合、原則、出張手当は課税仕入れとして計上できません。
- 役員だけでなく、従業員も含めた全員に支給されるものと明示されているか
- 活動記録を残すための出張報告書の提出義務と管理部門が決まっているか
- 旅費の精算方法、手順が決められているか
1~4の規定があいまいだった場合は、それぞれをしっかりと明示するよう上司に提案してみましょう。その後、出張旅費規程が全社員に共有されているかも確認します。ポイントの2番の通り、出張旅費規程は税法上、対象者を限定することはできません。つまり、代表者を含めた全員に適用しなければならないのです。従業員がいる場合は全員に伝えて、平等に処理する必要があります。
税務調査時の出張旅費規程の内容確認の際、規定した出張日当の支給額が高額すぎる場合は支給額が否認されることもあります。否認された場合は、会社は経費とならず、もらった人にも税金がかかってしまいますので、決定した支給額を一度見直すことをおすすめします。そうすることで設定金額の理由がより明確になり、しっかりとした対応を取ることができます。
※関連記事:
そのケース、経費で落とせるの?旅費交通費編
**********
旅費交通費と出張手当は、税務調査で重点的にチェックされる項目でもあります。しっかりチェックして仕訳の項目に不備がないかを確認しましょう。
経理担当者が出張することはあまりないかもしれませんが、経理処理としては非常に身近な業務です。
正しく処理できていれば、会社にとっても個人にとっても大きなメリットになりますので、意識してみてください。