フィンテックの知識がゼロの人が、いきなり「ブロックチェーン」や「個人財務管理(PFM)などを勉強するのは、あまり良い勉強方法とはいえません。フィンテック(FinTech)は、Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせて作られており、IT、IoT、AIといった情報技術を駆使して多岐にわたるサービスを提供しています。
まずは、フィンテックが「実際にどのようなサービスに展開しているか」を知り、「経理担当としてどの分野について学ぶ必要があるか」を明確にすることから始めましょう。フィンテックを使ったサービスは以下のように分類されます。
- お金を管理するサービス(家計簿アプリなど)
- お金を増やすサービス(投資系)
- お金を集めるサービス(資金調達系)
- 個人間の送金サービス(オンライン決済系)
- 取引サービス(仮装通貨系)
- 法人サポートサービス(財務会計系)
この中で、経理の現場に直接関わってくるサービスは、「送金サービス」、「決済サービス」、「財務会計サービス」になります。
送金サービスは、オンライン上の送金によって手数料や処理日数を抑えることができます。決済サービスはクレジットカードなどの決済の導入や管理の簡易化などに役立つでしょう。
また、財務会計においては、日次業務(通帳記帳、売掛金消し込み、精算書、見積書、請求書発行)の自動化や作成のサポートをしてくれるアプリやツールが既に実用化されています。経営状況を分析し、レポートする機能が備わっているものもあり、この分野においては技術の革新やサービスの向上が今後ますます活発になってくるでしょう。
経理担当としてフィンテックを学ぶ順番としては、まずは身近な財務会計サービス分野を体系的に理解して、送金、決済サービスなどについても追って勉強することが最も効率的といえるでしょう。
次はいよいよ具体的にフィンテックを学んでいきましょう。フィンテックを学ぶ流れとして、最も効率的なのは、「書籍で基礎知識を理解し、セミナーで財務会計分野の最新の情報を入手し理解を深める」ことです。その詳細を以下で解説します。
ステップ1:書籍で学ぶ
まずは書籍でフィンテックの基礎知識を勉強しましょう。その際、最初の一冊は必ず、雑誌ではなく書籍を選ぶのがポイントです。雑誌は最新の情報を得るには適している媒体ですが、それゆえに「フィンテックについては知っていて当たり前」というスタンスがあり、初心者には不親切な側面があります。
最初の一冊は、「フィンテックが取り沙汰されている理由」、「フィンテックの全体像」、「提供されているサービス」、「今後予想される展開」などフィンテックを理解するうえで欠かせない情報を網羅している入門書的な立ち位置の書籍がおすすめです。選ぶポイントは「各情報を分かりやすくカテゴライズしているか」。また、フィンテックの関連用語の索引がついている書籍も辞書のように使えるので、初心者にはおすすめです。
一冊目が理解できたら、もう少し深い内容が書いてある二冊目に手を伸ばしましょう。三冊ほど読めば、基礎は押さえられます。
おすすめの本はこちらです。
フィンテック
日経文庫 著者:柏木亮二
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フィンテック
フィンテックの第一人者である著者が、フィンテックの全体像を解説しています。フィンテックの誕生と進化、これからについて学べるほか、「クラウド会計」、「ブロックチェーン」、「レンディング」などの各分野のサービスについて、分かりやすく紹介しています。網羅性はもちろん、丁寧で柔らかな口調で説明してくれるので、ゼロから学び始める人の頭にも入ってきやすいのも特長です。初心者にはうってつけのフィンテックの入門書といえるでしょう。
ステップ2:セミナーで学ぶ
残念ながら、フィンテック分野の中でも財務会計分野に特化した書籍はあまり出版されていません。
そこで活用したいのが
セミナーです。現在、金融機関やフィンテック関連のベンチャー、会計システムのメーカーなどが積極的に「フィンテック×財務会計」をテーマにしたセミナーを開催しています。セミナー内容は「財務会計とフィンテック」、「フィンテックに関する法律」、「フィンテックの会計処理と消費税」、「フィンテックの活用法」など、まさに経理担当者の知りたい最新情報をピンポイントで教えてくれます。
セミナーの対象者は、経営者層や会計事務所関係者になっていることが多く、少し敷居の高さを感じるかもしれませんが、一般の経理担当でも断られることはほとんどありません。むしろ、「普段会えない人たちと交流できるきっかけがあるかも」と考えて奮って参加してみてください。