法定調書とは、所得税法、相続税法、租税特別措置法などの規定により、税務署への提出が義務付けられている書類です。国税庁のホームページによると、法定調書は現在(令和3年4月1日現在法令等)60種類にも及びます。その中で、会社の経理担当にとって関連が深いのが「給与所得の源泉徴収票(給与支払報告書)」と「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」。今回は、その基礎知識についてご紹介します。
- 投稿日:2018/12/11
- 更新日:2021/08/25
給与所得の源泉徴収票
会社にとって最も身近な法定調書と言えるのが源泉徴収票です。会社は社員の給与・賞与についての情報を把握しており、給与の金額や天引きした社会保険料、各社員から提供された扶養控除や生命保険控除などの情報をもとに社員に代わって年間の所得税を計算します。これを
年末調整と呼びます。
「給与所得の源泉徴収票」は、その結果をまとめて表したもの。つまり、今年1年でこれだけ支払いましたという給与支払報告書となります。12月末に各社員に交付し、翌年の1月31日までに所轄の税務署に提出します。ただし、社員への交付は全員に行われるべきものですが、税務署への提出は、下記の提出範囲に限られています。
年末調整をした場合
- 法人役員へ年間150万円を超えて支払ったもの
- 弁護士・税理士へ年間250万円を超えて支払ったもの
- 社員へ年間500万円を超えて支払ったもの
年末調整をしなかった場合
- 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出し、かつ、その年中に退職した方や、災害により被害を受けたため給与からの所得税の源泉徴収の猶予を受けた方で、その年中の給与等の支払金額が250万円を超えるもの。ただし、法人の役員については、50万円を超えるもの
- 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した方で、その年中の主たる給与等の金額が2,000万円を超えるため、年末調整をしなかったもの
- 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しなかった方(月額表又は日額表の乙欄もしくは丙欄適用者等)で、その年中の給与等の支払金額が50万円を超えるもの
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
先述の通り、会社員の収入については、会社が所得税の計算と納付を代行し、その結果を「給与所得の源泉徴収票」としてまとめます。これによって、税務署は会社員の収入を把握します。では、会社員ではない個人事業主やフリーランスの収入はどのように把握するのでしょうか。
そのための資料と言えるのが「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」です。これは会社と取引をするデザイナーやライターなどの専門家に対する支払いを明記したもので、一定額を超える場合に税務署に提出しなければなりません。具体的には、下記のような場合、支払調書を発行・提出する義務があります。
- 外交員や集金人、ホステスなどに支払う報酬等の年間合計額が50万円を超えている
- 馬主の賞金が1回で75万円を超えている(その年の全額を提出する)
- プロスポーツ選手に支払う報酬や契約金の年間合計額が5万円を超えている
- 弁護士や作家などに支払う報酬の年間合計額が5万円を超えている
- 社会保険診療報酬が支払う診療報酬の年間合計額が50万円を超えている
その他、主な法定調書
源泉徴収票に関しては、先に紹介した「給与所得の源泉徴収票」の他に退職所得の源泉徴収票があります。これは、会社が退職者に支払った退職金の額と徴収した所得税額を証明するための法定調書です。退職日から1カ月以内に源泉徴収票を作成し、税務署に提出する必要があります。
支払調書に関しては、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の他にも不動産の賃貸借料や株の配当金に関するものなど、様々なものがあります。参考までにいくつかピックアップしてみました。
- 不動産の使用料等の支払調書
その年に同一の相手に支払った事務所や社宅、駐車場などの賃借料などを記載する法定調書です。
- 不動産等の譲受け対価の支払調書
不動産、船舶、航空機のような不動産等の譲受けの対価を支払った場合に作成する法定調書です。
- 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
土地・建物などの不動産を売買・賃貸する際、仲介業者に仲介手数料を支払った場合に作成する法定調書です。
- 配当、剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書
株の配当金や利益剰余金の分配、配当を出した場合に作成する法定調書です。
- 非居住者等に支払われる給与、報酬、年金及び賞金の支払調書
非居住者(日本国内に居住していない人)に支払った国内源泉所得の金額について作成する法定調書です。
60種類の法定調書は、国税庁のホームページにすべて記載されています。興味のある方は、参照してみてください。
※参考資料:
法定調書の種類
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「給与所得の源泉徴収票(給与支払報告書)」と「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」をはじめ、ご紹介した法定調書のほとんどは、原則として支払いの確定した年の翌年1月31日が提出期限となります。また、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」は、仕事を発注したフリーランスや専門家の方にも交付します。これは義務ではありませんが、フリーランスは各社から交付された支払調書を確定申告に使用しますので、きちんと交付することが望ましいと言えます。法定調書の提出は、様々な人の所得税と関わってくる重要な業務であることを認識し、間違いや提出漏れなどがないように注意しましょう。