戦略経理について言及する前に、そもそも会社にとって経理とはどんな存在なのか…同書はそんな問いかけからはじまります。その背景には、経理部署を置かない企業の存在など、著者の実体験に基づく経理を取り巻く環境の厳しさがあります。
そもそも経理部は何をする部署なのか、と考えた時に「計算をするだけの部署」と認識する会社は、経理部署を置かないという選択をすることがあると言います。しかし、著者は計算以外の役割が相当あることを力説し、「企業戦略」というキーワードを提示します。
企業戦略は、当然経営者が策定します。しかし、経理不在の企業戦略は数字の裏付けを欠いた夢物語なものになりがち。そこで本書では、経営者の策定した戦略コンセプトを経理が中心となって現実可能性の高い数字に落とし込むという作業を加えています。その作業を挟んだ上で最終的な仕上げを経営層が行うのです。このように、計数的な面で中心となるべきなのが経理だというのが本書の主張です。会社にとって、経理は扇の要、またそうなることを目指すべきだと続けています。
経営事業計画/経営計画 2018/07/17
今、にわかに注目を浴びる「戦略経理」とは何か
会計・経理の世界で「戦略経理」という言葉がにわかに注目を浴びています。ご存知のように経理は迅速かつ正確な決算資料の作成など、その会計責任を負うのが主な役割です。それは当然重要な任務ではありますが、これからは従来の業務だけでなく、戦略立案など経営層を直接サポートする役割が求められているというのが、戦略経理の意味するところです。そうした戦略経理のポイントがわかりやすくまとめられた著書「経営を強くする戦略経理」(日本能率協会マネジメントセンター/著者:前田康二郎、高橋和徳、近藤仁)をベースに、戦略経理に求められるスキルや存在意義について紐解いていきます。
会社にとって経理とは
戦略経理の役割
先述した本書の主張、企業戦略に数字的な根拠を付加することこそ、戦略経理の大きな役割と言えますが、さらに数字の大切さを経営層に理解してもらうことも経理の務めです。数字なき戦略は経営判断を鈍らせてしまいます。プロジェクトを撤退するか、そのまま推進するかの判断も、販売個数や利益率など数字を根拠にしなければ正しい判断はできないからです。
さらに本書では、数字の大切さを経営層だけでなく社員にも啓蒙することを力説しています。社員の数字に対する関心を喚起すること。そのために日頃から数字を使ったアドバイスを行うこと。前年対比でパーセンテージを活用すること、悪い数字には必ず原因や分析を添えること。そんな当たり前のアドバイスが重要なのだと言います。
そうした積み重ねを経て現場の社員を味方につけることも経理の重要な戦略です。これについては実際に著者の見聞した印象的な例が紹介されています。ある会社で、社内の誰に感謝をしているかを投票したそうです。すると、投票した社員の実に半数がある経理事務員の名前を書いたそうです。その経理事務員は、現場の社員が領収書や請求書を持ってくるたび、社員の体調を気遣ったり、落ち込んでいる社員には励ましたり、時には若手社員にビジネスマナーを教えていたと言います。
さらに本書では、数字の大切さを経営層だけでなく社員にも啓蒙することを力説しています。社員の数字に対する関心を喚起すること。そのために日頃から数字を使ったアドバイスを行うこと。前年対比でパーセンテージを活用すること、悪い数字には必ず原因や分析を添えること。そんな当たり前のアドバイスが重要なのだと言います。
そうした積み重ねを経て現場の社員を味方につけることも経理の重要な戦略です。これについては実際に著者の見聞した印象的な例が紹介されています。ある会社で、社内の誰に感謝をしているかを投票したそうです。すると、投票した社員の実に半数がある経理事務員の名前を書いたそうです。その経理事務員は、現場の社員が領収書や請求書を持ってくるたび、社員の体調を気遣ったり、落ち込んでいる社員には励ましたり、時には若手社員にビジネスマナーを教えていたと言います。
戦略経理に必要な力
その代表的なものが先にご紹介した過半数の現場社員に感謝された経理事務員の例でしょう。つまり、コミュニケーション能力です。経理は、「数字」を介してすべての社員とコミュニケーションできる業務。その特性を活かすことがひとつ上の戦略経理への道を開きます。各部署の社員と信頼関係が構築されている経理のもとには様々な情報が入ってきます。そうした情報は、例えば急激に数字が悪化した場合や頭の中で想定していた数字と算出した数字が乖離していた場合の原因究明にも役立つでしょう。
その他、本書が推薦するプラスαのスキルとしては、会議などを進行するファシリテート力、システムや外注先などの選定力、数字をベースにしたわかりやすいプレゼンテーション力、ビジネスの会話を的確に通訳できるトランスレート力、相手の気持ちに寄り添える共感力など。総じて、数字に関する強さ+人間力、と言えそうです。
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