業務全般スキルアップ/キャリアアップ 2018/06/05
ひとつ上の経理になるためのおすすめ書籍5選
目次
知識やスキルを習得するためには、現場で実務を経験するのがいちばんです。しかし、その道を極めた先達者たちの経験が書き下ろされた書籍を読むことも、貴重な知見を得ることにつながります。自分が経験する以上に多様で深い思想やノウハウにふれることができるのも書籍の魅力。そこで、今回はひとつ上の経理部員になるためのおすすめ本をご紹介します。
財務諸表を読むためのトレーニング書として最適の一冊
会計は「経営を総合的、一般的かつ統一的にとらえる唯一のツール」と唱える著者。本書では経営の全体をとらえる写像こそが財務諸表と言っています。基本二表である貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)で読み取れることは、儲けの構造、戦略、そして戦略の動き。それらを確実に読めるようにするためには、本物の財務諸表をたくさん読むことだと著者は言います。
しかし、財務諸表は細かい項目や数字がたくさん並んでいて敷居が高いという方も多いでしょう。そんな方はまず、アバウトにとらえること。いきなりディティールから入ってすべてをわかろうとせず、大くくりでとらえることが大切と説いています。そのためのコツとして、BSの大きさ、PLの大きさ、利益の大きさの3つだけ読むことを推奨しています。
そして、それぞれの大きさを実感するために、著者は各数字を比例縮尺図にして図形でとらえる方法を考案したのです。この方法なら、BSの大きさを実感としてとらえ、他社と比較することも簡単にできます。本書は、その方法を利用して48の実例を読み解いていきます。最初は自分で考え、著者の見解を答え合わせのように確認できる構成となっています。経理担当はもちろん、財務諸表を読み解きたいビジネスマンにもおすすめです。
スリリングなストーリーの中に会計のエッセンスを凝縮
一流コンサルティングファームへの内定を蹴り、日本の中堅菓子メーカーに就職した主人公に待ち受ける陰謀の数々。会社再建を目指す中で浮き彫りにされる様々な会計マジック、マーケティングや戦略との結びつきなどがスリリングなストーリーの中でダイナミックに展開します。
著者の林總氏は、名著「餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?」(ダイヤモンド社)で、管理会計本としては異例のベストセラーを叩き出した方。ストーリーものにも定評があり、会計・経理などのノウハウ本にありがちなチープなストーリーではなく、かなり読み応えのある内容となっています。
各章の巻末には「ビジネスプロセス」「変動費と固定費」「パレートの法則」「ドラッカーの利益概念」など、ストーリーで扱った会計用語や概念に対する丁寧な解説書も掲載。学びが定着しやすい構成になっています。こちらも会計・経理担当だけでなく、一般のビジネスマンやコンサルタントを目指す方にも推奨できます。
会計参謀(CFO)の果たす役割を明確に表した戦略実務本
日本企業の経営には会計的思考が欠如していると問題提起する著者が会計参謀(CFO)の果たす役割を明確にした戦略実務本です。会計思考とは、客観的に会社の現状を知り、将来の会社の状態を予測すること、と著者は言います。
日本の企業の多くは、自社が赤字に転落した理由を明確に把握できません。それぞれの部署が個人の主観や社内のポジションに立脚しており、全社的な視座に立てないのです。そこに共通尺度を醸成・形成させる「ものさし」として最も重要な役割を果たすのが会計であると、著者は説いています。
そして、会社の現状を知るものさしに基づいて、経営戦略を立案します。本書は、まさに会計と経営戦略を結びつけることの重要性を訴えた本であり、その役割を担うのが会計参謀(CFO)ということになります。ビジネスマンには少々難しい上級本かもしれませんが、将来CFOを目指す方には格好の実務書と言えるでしょう。
人気コンサルタントがやさしく解説する経営指標の入門書
タイトルに「ROE」とありますが、それだけに特化した本ではありません。ROEを理解するために必要な財務諸表の基礎知識から解説されているなど、初心者にやさしい構成です。ROEに関しても、日本でブームになった背景やROAとの違いなどにも言及しています。高ROE企業が必ずしも優良企業ではないという視点も注目です。
また、人気コンサルタントとして活躍する著者が日頃企業分析を行う際にチェックしているポイント、例えば貸借対照表(BS)から企業の安全性、損益計算書から企業の収益性、キャッシュ・フロー計算書から企業の将来性をみるなど、役に立つ分析方法が紹介されています。
全体を通して、やさしい語りの入門書となっていますが、会社の価値を計算する際に使われるDCF法やEBITD倍率、ROEの次に注目される可能性の高いEVA指標など、中上級者向けの指標や手法も紹介されています。入門書として購入後も、キャリア形成とともに長く愛読できる本と言えます。
新しい経済についての独創的な考察と提言の数々
最後は会計本とは言えませんが、会計・経理などお金を扱うビジネスマンにご紹介したいベストセラー本です。著者は、時間を売買する「タイムバンク」など、ユニークなサービスを次々にリリースする株式会社メタップスの社長、佐藤航陽氏。フォーブスの「日本を救う起業家ベスト10」にも選出された注目の事業家です。
インターネットが情報のあり方を劇的に変えたように、今、経済のあり方が大きく変わろうとしています。テクノロジーによって、その変化はどんな方向に向かうのか、その中でどう生きるべきか、独創的な考察と提言にあふれた本です。経済を扱いながら哲学書のような深みがあるのも魅力です。
本書の白眉は、資本主義に代わる枠組みとして提示された「価値主義」という考え方。お金は価値を媒介するひとつの選択肢に過ぎず、今後はお金のような可視化された資本ではなく、資本に変換される前の「価値」を中心とした世界に変わっていくという考察は注目に値します。財務諸表に表れない新たな価値とは?会計・経理を生業にしている方々にぜひ、考えていただきたいことです。
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