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ITDX 2017/12/05

フィンテックで経理業務はどう変わる!?

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フィンテックの大波は、既存の金融サービス(「融資」、「決済」、「送金」、「投資」)の各領域を大きく変えています。
これまでにない革新的なサービスが続々と生まれ、金融機関などの役割や業態も変化しようとしています。これからフィンテックの影響は企業の経理部にも波及し、その業態を変革していくことでしょう。
では、経理部はどう変わるのか?仮説も交えて検証していきたいと思います。

既存の金融サービスを変革

新しい金融サービスを続々と生み出しているフィンテック。そのサービスの特徴は、誰もが気軽に低価格で利用できることにあります。
新たな与信システムによって融資の潜在顧客を掘り起こしたソーシャルレンディング。クレジット決済や送金手数料の大幅な引き下げ。また、AIを搭載したロボアドバイザーは、投資の初心者にも高度なポートフォリオを活用する機会を提供しました。

最近では、自動貯金サービス「お釣り貯金」が注目され始めています。
これは、スマホにアプリをダウンロードして銀行口座との連携設定などをすれば、所定のクレジットカードやデビットカードでの買い物の”お釣り”が自動的に貯金できるサービスです。
例えば、460円のものを購入し店頭でカード決済したとします。その場合、銀行口座からは切りのいい500円が引き落とされ、差額の40円が自動的に貯金されるといった仕組みです。 他にも、歩数に応じて貯金するなどユニークなメニューもあり、利用者が急増しています。

こうした自動貯金サービスを可能にしているのが、アカウントアグリケーションです。
アカウントアグリケーションとは、異なる金融機関の複数の口座情報を一元管理するサービスおよび技術のこと。これらの技術を使ってクレジットカードの利用明細を自動取得し、自動貯金サービスに活用されています。
また企業においては、アカウントアグリゲーションとERPソフトとの連携により、入出金管理やリアルタイムでの資金情報の把握、データの自動仕訳等による、経理業務の効率化が図られています。

ここまで説明してきたように、既に家庭から経理の分野まで、幅広くフィンテックの技術が活用されているのです。

※関連リンク:アカウントアグリゲーションサービス『Account Tracker(アカウント トラッカー)』が自動貯金サービス『finbee(フィンビー)』への導入を開始

クラウド会計は企業で使えるか?

現在、企業の経理部に影響を及ぼしていると言えるのはクラウド会計でしょう。クレジットカードやオンラインバンキングを活用すれば自動仕訳ができるなど、高い利便性が魅力です。
クラウド会計が請求書発行の代行を請け負うことで、売上高と取引先情報を把握し、これを与信情報としてクレジットカードによる支払いを提供する斬新なサービスも注目されています。

しかし、クラウド会計がターゲットとする企業は、個人事業主もしくは小規模事業主が中心です。新規取引への障壁を大きく下げ、小さな会社と数多くの接点を持ち、その後、会計だけでなく労務や人事へとサービス領域を広げていくのが多くのクラウド会計の戦略です。しかし、それは戦略ではなく必然ではないのか、という意見もあります。

こうした事情について、数社の民間企業で経理・総務業務を行い、大手PR会社では経理部長としてIPOを達成し、その後経営コンサルタント・ビジネス書作家として活躍する前田康二郎さんは言います。
「経理業務というのは、前払、分割支払、分割入金、按分計上、相殺など、例外処理が数多くあります。
実はクラウド会計の多くは、こうした処理に対応するには課題があるものも多く、経理の例外部分の仕事を加味できていないところもあるようです。
現状だと経費精算、家計簿レベルのものが多く、上場企業では内部統制面からも導入するハードルがまだ高い面もあるのではないでしょうか」

フィンテックと共存するという発想

技術的に自動仕訳は可能ですが、例えばコピー用紙を「消耗品費」とするか「事務用品費」とするかをAIが判断するのは難しいところがあります。
さらに前田氏は、テクノロジーと経理業務の相性の悪さを指摘します。
「不完全でもいち早く製品をリリースし、カスタマーの要望やクレームに応じて改善していくというテクノロジー製品の考え方がありますが、経理業務は間違えたら即座に信用を落とす業務です。」

確かにミスが許されない業務だけに、使いながら改善するというスタンスは相容れないものがありそうです。
しかしながら、一つの機能に特化した形ならテクノロジーの優位性は様々な業界で実証済みです。「経理業務の場合、実務のプロと共同で開発し、経理業務の一部から自動化し、少しずつ広げていくのが理想的」と前田氏。
フィンテックによって代替されるというより、フィンテックと共存するという発想が重要になると言います。

その場合、経理業務はどう変わっていくのでしょうか。
例えば、粗利や原価率などの計算をはじめ具体的な業務はテクノロジーにまかせて、経理はそれらを集約して分析するなど、よりコンサルティング領域に比重が置かれるようになるでしょう。
現に税理士や会計士などの士業の方々は、記帳代行などの実務からコンサルティングをメイン業務に移行するケースが増えているそうです。
人間だけができる仕事を選別してフィンテックとどう共存するかが、すべての経理担当の共通テーマと言えます。
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コンサルティングファームなどで実施される調査で、テクノロジーによって消滅する職業をピックアップした記事をよく見受けます。経理もすっかり常連です。
しかし、経理という職業が丸ごとなくなるのではなく、消滅する業務と残る業務に分かれるということではないでしょうか。
大切なのは、残る業務を見極めてそのフィールドで活きる自分の強みを見出すこと。ただし、テクノロジーの進展は、人間の想像を超えることが起こり得ます。
その点を考慮して、常に人間にしかできないことを見定めていきたいものです。
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