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人事/労務働き方改革 2026/01/13

みなし労働はみなし残業とどう違う?これで迷わず進められる、成果重視の働き方アップデート

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みなし労働時間制とは、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間を働いたものと見なす制度です。
労務管理の効率化や柔軟な働き方の実現が期待できる一方、「違法な運用になっていないか不安」「みなし残業との違いがわからない」といった悩みを抱える担当者も少なくないようです。
今回の記事では、みなし労働時間制の定義と3つの種類を整理したうえで、導入によるメリット・デメリット、実務で押さえておくべきポイントを解説します。

みなし労働時間制とは

みなし労働時間制とは、実際に働いた時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間をその日の労働時間と見なす制度です。
外回りの営業職のように労働時間の把握が難しい業務や、研究開発職・デザイナーのように本人に裁量を任せた方が成果を出しやすい業務に適用されます。
例えば、みなし労働時間を8時間と定めている場合、ある日は7時間、別の日は9時間働いたとしても、どちらの日も8時間働いたものとして給与が計算されます。


みなし残業代制(固定残業代制)との違い
「みなし労働時間制」と「みなし残業代制(固定残業代制)」は、名称が似ていますが、まったく別の制度です。

みなし労働時間制は、実際の労働時間の長短にかかわらず、あらかじめ定めた労働時間分を働いたものと見なして賃金を支給する制度です。
あくまで「労働時間の算定方法」に関する仕組みであり、労働時間そのものをどう評価するかがポイントになります。

これに対して、みなし残業代制は、月々の時間外労働を一定時間行うものと見なし、その時間分の残業代をあらかじめ給与に含めて支払う制度です。
実際に残業をしたかどうかにかかわらず、定められた時間分の時間外手当が固定的に支給される点が特徴です。

項目 みなし労働時間制 みなし残業代制(固定残業代制)
概要 労働時間の算定方法に関する制度 残業代の支払い方法に関する制度
見なす対象 実際の労働時間 時間外労働時間(残業時間)
基本的な考え方 実労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間働いたものと見なす 一定時間の残業を行うものと見なし、その分の残業代を固定で支払う
実際の残業との関係 みなし労働時間が法定労働時間を超える場合は、その超過分が残業扱い 固定残業時間を超えた分は、別途残業代の支払いが必要
主な適用場面 外回り営業、研究開発職、デザイナーなど、労働時間の把握が難しい業務 職種を問わず、残業が一定程度見込まれる場合
契約例 1日のみなし労働時間を8時間とする 月給30万円(固定残業代5万円/20時間分を含む)
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みなし労働時間制の3つの種類

みなし労働時間制は、業務の性質によって「事業場外みなし労働時間制」、「専門業務型裁量労働制」、「企画業務型裁量労働制」の3種類に分けられます。

※参考資料:厚生労働省「労働時間・休日


1.事業場外みなし労働時間制
事業場外みなし労働時間制は、従業員が社外で業務を行うなど、使用者の指揮監督が及ばず労働時間の算定が難しい場合に適用される制度です。

対象の職種
営業職・コンサルタント・技術職など、外回りの業務が中心となる職種が対象となります。
ただし社外での業務であっても、上司と一緒に出張している場合や、携帯電話などで随時指示を受けている場合などは、労働時間の把握が可能と見なされ、制度は適用されません。

導入にあたって
就業規則への明記が必要です。
また、みなし労働時間が法定労働時間を超える場合は、労使協定の締結と労働基準監督署への届出も必要となります。


2.専門業務型裁量労働制
専門業務型裁量労働制は、業務の性質上、進め方や時間配分を労働者の裁量に大きく委ねる必要がある業務に適用される制度です。

対象の職種
デザイナー・システムエンジニア・弁護士・研究職・プロデューサーなど、厚生労働省令で定められた20の専門業務に限られます。

導入にあたって
就業規則への明記に加え、労使協定の締結・労働基準監督署への届出・本人の同意などが必要です。

※参考資料:厚生労働省「専門業務型裁量労働制の解説


3.企画業務型裁量労働制
企画業務型裁量労働制は、事業の運営に関する企画・立案・調査・分析の業務で、遂行方法を労働者の裁量に大きく委ねる必要がある業務に適用される制度です。

対象の職種
例えば、企業の経営企画室で新規事業の立案を担当する社員などが該当します。

導入にあたって
就業規則への明記に加え、労使委員会の設置と4/5以上の決議・労働基準監督署への届出・本人の同意が必要です。
さらに、導入後も労働基準監督署への定期報告(初回は6カ月以内に1回、以降は1年に1回)などが義務付けられており、専門業務型よりも手続きが厳格です。

※参考資料:厚生労働省「企画業務型裁量労働制の解説


みなし労働時間制のメリット・デメリット
みなし労働時間制は、適切に運用すれば、企業には以下のようなメリットがあります。

  • 労働時間が固定されるため、給与計算がシンプルになる
  • 人件費の変動が抑えられ、事業計画を立てやすくなる
  • 従業員が時間を意識して働くようになり、生産性向上が期待できる
  • 自律的な働き方ができることで、従業員のモチベーションが高まる
一方で、以下のようなデメリットにも注意が必要です。

  • 労使協定の締結や届出など、導入までの準備に手間がかかる
  • 実際の労働時間が見えにくく、長時間労働を招きやすい
  • 制度が無効と判断されると、過去の残業代の支払いが必要になる
  • 「残業代が出ない」などの誤解から、採用に影響を与える可能性がある
みなし労働時間制は労務管理の効率化が期待できる一方、長時間労働や違法運用のリスクもあるため、適切な運用が求められます。
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みなし労働時間制の導入にあたっての注意点

みなし労働時間制の運用で違法とならないために、担当者が押さえるべき運用上の注意点を3つ解説します。


1. 使用者の指揮監督がないか実態を確認する
事業場外みなし労働時間制は、使用者の指揮監督が及ばず、労働時間の算定が難しいことが適用要件です。
形式的に制度を導入していても、実態として管理下に置かれていれば適用が否認される可能性があります。

例えば、以下のような状況は指揮監督が及んでいると判断されやすくなります。

  • グループで行動し、メンバーの中に労働時間を管理する者がいる
  • 携帯電話やチャットツールで随時業務の指示を受けている
  • 業務指示に従って社外で作業を行い、完了後に事業場へ戻る
適用が無効となれば、実際の労働時間に基づく残業代を遡って請求され、数百万~数千万円に及ぶケースもあります。
こうしたリスクを避けるため、定期的に運用実態を見直し、制度に即した運用ができているかを確認しましょう。

※参考資料:東京労働局・労働基準監督署「事業場外労働に関するみなし労働時間制の適正な運用のために


2. 労働時間の把握体制を整備する
みなし労働時間制を導入しても、企業は労働時間を把握する義務があります。
2019年4月施行の働き方改革関連法により、健康管理の観点から、管理監督者や裁量労働制の適用者を含むすべての労働者の労働時間を客観的な方法で把握することが義務化されました。
具体的には、タイムカードやICカード、パソコンのログイン・ログアウト記録などによる記録が求められます。

また、長時間労働者に対しては、医師による面接指導などの措置を講じなければなりません。
もし長時間労働の実態を把握しながら放置した場合、安全配慮義務違反に問われる可能性があります。

※参考資料:厚生労働省「働き方改革関連法のあらまし


3. 残業代を支払うべきケースを把握する
みなし労働時間制を導入しても、残業代の支払いが不要になるわけではありません。
みなし労働時間が法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える場合は、超過分の割増賃金が必要です。
また、深夜労働(22時~翌5時)や休日労働にも別途割増賃金が発生します。
各割増賃金の計算方法は、以下の通りです。

時間外手当 1時間当たりの基礎賃金×時間外労働時間×1.25
深夜手当 1時間当たりの基礎賃金×深夜労働時間×1.25
休日手当 1時間当たりの基礎賃金×休日労働時間×1.35
なお、時間外労働が深夜に及んだ場合は両方が適用され、合計で50%以上(基礎賃金の1.5倍以上)の割増賃金となります。
こうしたケースを正しく理解せずに運用すると、未払い残業代を請求されるリスクがあります。
残業代が発生する場面を明確にし、適切に賃金を支払う体制を整えておきましょう。

※参考資料:厚生労働省「法定労働時間と割増賃金について教えてください。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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みなし労働時間制は、適切に導入・運用すれば、企業と従業員の双方にメリットのある制度です。
一方で、法律で定められた厳格な要件や手続き、そして運用上の注意点を十分に理解しないまま安易に導入すると、かえって大きな労務リスクを抱え込むことになりかねません。
導入を検討する際は社会保険労務士などに相談し、自社の状況に合った制度設計と適切な運用体制を構築することが重要です。

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