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経理/財務会計処理 2025/10/14

固定資産売却益とは?償却資産税を払い続けないための売却・除却の会計処理【仕訳例あり】

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建物や備品、車両などを処分する際には、仕訳と勘定科目を正しく処理することが重要です。
固定資産の売却や除却は、処理を怠ったり誤ったりすると、固定資産除却損の計上漏れや固定資産売却益の誤処理につながり、「償却資産税を払い続けることになった」、「税務調査で指摘を受けた」など、思わぬリスクに直結します。
適切な会計処理を行うために、今回の記事では、固定資産の売却・除却における会計処理の基本と実務上の重要ポイントを解説します。

固定資産の除却・売却の基本知識

まずは、固定資産を処分する際に用いられる「除却」と「売却」について、それぞれの定義と違いを解説します。


固定資産の「除却」とは
固定資産の除却とは、企業が保有する固定資産の利用を終了し、その資産を会計帳簿から削除する会計上の処理を指します。
除却を行わなければ、固定資産台帳に資産が残り続けるため、実際には使用していなくても償却資産税が課される可能性があります。
つまり、不要になった資産に対して、償却資産税を払い続けることとなってしまうのです。
資産を除却し廃棄処分すれば、税務上の負担を軽減できるだけでなく、会社の保管スペースを有効に活用できるなどのメリットも得られます。


固定資産の「売却」とは
固定資産の売却とは、企業が保有する固定資産を、他の企業や個人に対価を得て譲渡することを指します。
売却を行う目的には、資産の入れ替えや資金調達、不要資産の整理などがあり、適切に処理することで資産効率の改善や財務状況の安定化につながります。


固定資産の除却と売却の違い
固定資産の「除却」と「売却」は一見よく似ていますが、整理すると以下のような違いがあります。

除却 資産を手放すが対価は得られない処理(除却損のみ発生)
売却 資産を手放して対価を得る取引(売却益や売却損が発生)
※関連記事:経理担当の常識!固定資産管理の基礎知識
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固定資産の除却時の会計処理

固定資産の除却を行う際は、帳簿上の残存価額や廃棄費用を「固定資産除却損」として処理するのが基本です。
ここでは、その会計処理を仕訳例とあわせて解説します。


固定資産除却損の基本的な会計処理と仕訳例
固定資産を除却する際の仕訳は、採用している減価償却方法によって処理が異なります。
減価償却方法には以下の2種類があります。

直接法 減価償却の度に帳簿価額を直接減らす方法
間接法 減価償却累計額を別勘定で記録し、帳簿価額と分けて管理する方法
例えば、機械装置を100万円で購入し、既に70万円を減価償却している状態で除却するケースの仕訳方法を確認していきましょう。

直接法
直接法では、残存簿価30万円を固定資産除却損に計上します。
借方 金額 貸方 金額
固定資産除却損 300,000 機械装置 300,000
間接法
間接法では、取得原価と累計償却を取り崩し、差額30万円を固定資産除却損に計上します。
借方 金額 貸方 金額
減価償却累計額 700,000 機械装置 1,000,000
固定資産除却損 300,000

廃棄費用が発生する場合
固定資産を除却する際に、運搬費や解体費などの廃棄費用が発生することがあります。
この場合、廃棄費用も含めて固定資産除却損として処理するのが原則です。
例えば、機械装置を100万円で購入し、これまでに70万円を減価償却した後に除却し、さらに廃棄費用1万円を支払った場合、仕訳は以下の通りです。

直接法
借方 金額 貸方 金額
固定資産除却損 310,000 機械装置 300,000
現金 10,000
間接法
借方 金額 貸方 金額
減価償却累計額 700,000 機械装置 1,000,000
固定資産除却損 310,000 現金 10,000

簿価1円の固定資産を除却する場合
「簿価1円の固定資産」とは、耐用年数を過ぎて減価償却を終えた後も、備忘価額として1円を帳簿に残したまま使用している資産のことです。
本来、固定資産は耐用年数の経過に従って減価償却され、最終的には簿価がゼロになります。
しかし、簿価が完全にゼロになると、帳簿上ではその資産が存在していることを確認できなくなるため、実務上は1円を残す処理を行うのが一般的です。
例えば、100万円で購入した機械装置について、999,999円を減価償却し、簿価が1円残っている状態で除却する場合、仕訳は以下のようになります。

直接法
借方 金額 貸方 金額
固定資産除却損 1 機械装置 1
間接法
借方 金額 貸方 金額
減価償却累計額 999,999 機械装置 1,000,000
固定資産除却損 1

固定資産の売却時の会計処理

固定資産を売却する際には、除却と売却処理の仕訳が必要になります。
売却価額と帳簿価額(簿価)の差額によって「固定資産売却益」または「固定資産売却損」が発生します。


固定資産売却益の会計処理と仕訳例(売却額が帳簿価額を上回る場合)
例えば、以下の例で仕訳を確認してみましょう。
取得価額 100万円
減価償却累計額 80万円
簿価(残存価額) 20万円
売却価額 30万円(現金で受け取り)
この場合、売却価額30万円から簿価20万円を差し引いて、10万円の利益となります。

直接法
残存簿価を除却し、売却価額との差額を固定資産売却益として計上します。
借方 金額 貸方 金額
現金 300,000 機械装置 200,000
固定資産売却益 100,000
間接法
取得原価と減価償却累計額を同時に取り崩し、固定資産売却益を計上します。
借方 金額 貸方 金額
現金 300,000 機械装置 1,000,000
減価償却累計額 800,000 固定資産売却益 100,000

固定資産売却損の会計処理と仕訳例(売却額が帳簿価額を下回る場合)
次に、売却価額が簿価を下回るケースを見てみましょう。
取得価額 100万円
減価償却累計額 80万円
簿価(残存価額) 20万円
売却価額 15万円(現金で受け取り)
この場合、売却価額15万円から簿価20万円を差し引いて、5万円の損となります。

直接法
残存簿価との差額を固定資産売却損として計上します。
借方 金額 貸方 金額
現金 150,000 機械装置 200,000
固定資産売却損 50,000
間接法
取得原価と減価償却累計額を同時に取り崩し、固定資産売却損を計上します。
借方 金額 貸方 金額
現金 150,000 機械装置 1,000,000
減価償却累計額 800,000
固定資産売却損 50,000
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固定資産の除却・売却に関する実務上のポイント

固定資産の売却や除却は、取引金額が大きくなりやすかったり、譲渡日や除却日の判断があいまいになったりするケースも少なくありません。
そのため、税務調査で特に注意して確認される項目となります。
それを踏まえたうえで、ここからは固定資産の除却・売却に関する実務上のポイントを確認していきましょう。


会計処理と税務処理の違い(有姿除却)
会計上、固定資産は帳簿から外した段階で、固定資産除却損として処理します。
一方、税務上は原則として実際に廃棄するまで損金算入はできません。
ただし、「有姿除却」という制度により、一定の要件を満たせば、実際に廃棄しなくても除却時に損金算入が認められる場合があります。
有姿除却とは、使用を終えた固定資産を廃棄せずに帳簿から除却する処理を指します。
国税庁の通達では、次のような場合には現物を残したままでも除却損を損金に算入できると定められています。

  • 使用を廃止し、今後通常の方法で事業に利用される可能性がないと認められる固定資産
  • 特定製品の生産専用に使われていた金型などで、その製品の生産中止により将来使用される可能性がほとんどないことが明らかなもの
※参考資料:国税庁「除却損失等の損金算入

ただし、一時的に使用を停止している場合や、将来的に使用する可能性が残っている場合は適用できません。
有姿除却は税務調査で問題となりやすい項目のため、使用していないことを証明するための書類(経営計画書や取締役会議事録など)を準備しておくことが重要です。


固定資産台帳の整備と照合
固定資産の除却や売却を行う際には、固定資産台帳の整備と照合が欠かせません。
実際に除却した資産が台帳から正しく削除されているかを確認し、帳簿の記録と現物の資産状況が常に一致している状態を保ちましょう。
帳簿上だけに存在する資産や所在不明の資産を早期に発見できれば、誤った会計処理や資産管理上のリスクを未然に防げます。
確認作業は担当者ひとりに任せるのではなく、複数名で相互チェックを行うことで、精度と信頼性を高めることができます。


除却を証明できる資料の保管
固定資産を除却した際には、必ずその事実を裏付ける資料を保管しておくことが重要です。
税務調査では「本当に除却したのか」、「どの事業年度に処理したのか」を厳しく確認されます。
証拠となる書類をきちんと揃えておくことで、不要なトラブルや指摘を避けられます。
具体的には、廃棄証明書・稟議書・取締役会議事録・除却理由を記した社内文書などを保管しておくと安心です。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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勘定科目の選択や残存簿価の処理を誤ると、利益計上や損失処理にずれが生じ、税務調査で指摘される可能性が高まります。
実務担当者は、直接法・間接法の違いや廃棄費用の扱いを正しく理解し、仕訳を正確に行うことが重要です。
まずは自社の仕訳処理が正しく運用されているか確認し、必要に応じて専門家のアドバイスを取り入れましょう。

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