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経営事業計画/経営計画 2025/09/11

VUCA(ブーカ)とは?“想定外”だらけの時代を乗り切る企業の生存戦略をひも解く

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新型コロナウイルスの世界的流行や国際的な紛争による資源価格の高騰など、社会や経済について予測困難な変化が日常となった現代で、従来の経営手法だけで生き残るのは容易ではなくなりつつあります。
いわゆる「VUCA時代」と呼ばれる今、中小企業にはリスクを避けるだけの経営から、変化に素早く対応できる機動的な経営への転換が求められています。
今回は、VUCAの定義と、不確実性をはじめとする現代企業が直面する課題、そしてVUCA時代に対応できる組織戦略について解説します。

VUCAとは

VUCA(ブーカ)とは、「Volatility(変動性)」、「Uncertainty(不確実性)」、「Complexity(複雑性)」、「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を組み合わせた言葉で、特に現代の社会やビジネスにおいて、将来の予測が困難な状況を指します。
それぞれの要素の意味を理解することで、VUCAという概念の本質をより深く理解することができます。


VUCAの要素の意味
Volatility(変動性)
変化のスピードが速く、その幅も大きいことを指します。
典型的な例としては株価の急激な変動があり、株式市場が短期間で大幅に急騰・急落する状況を表しています。

Uncertainty(不確実性)
将来何が起こるか予測できない状態を指します。
特に紛争・政権交代・経済制裁・資源供給不安などの地政学的リスクは、予測が困難な要因のひとつです。

Complexity(複雑性)
様々な要因が複雑に絡み合い、因果関係が見えにくい状態を指します
グローバルサプライチェーンがその代表例で、例えば一部の輸送拠点で問題が発生すると、その影響が世界中に広がる可能性があります。

Ambiguity(曖昧性)
状況の解釈が複数存在し、何が正解か明確でない状態を指します。
リモートワークの評価が典型例で、ある企業では「生産性が向上した」と評価される一方、別の企業では「従業員同士の関係が希薄になった」と捉えられるなど、同じ施策であっても立場や視点によって評価が大きく異なることがあります。


なぜ今VUCA時代なのか
従来の経営は、予測可能性の高い安定した環境を前提としていました。
高度経済成長期は高まる需要に供給が追い付いていないことから、人々が必要なものを作れば売れる環境であり、売上も比較的予測しやすい時代でした。
しかし現代は、状況が大きく変わり、将来を見通すことが難しい「VUCA時代」に突入しています。

その背景には、複数の要因があります。
まず、ITの技術革新によって社会の仕組みや産業構造が大きく変化し、消費者ニーズも多様化しました。
これにより、将来のビジネス環境を正確に予測することが難しくなっています。
また、AI技術の急速な普及も不確実性を高める要因です。
業務の自動化やAIへの移行が進む中で、人が関わる業務や雇用の状況は、1年先ですら予測できない状況にあります。
さらに、グローバル化の進展も複雑性を増しています。
海外で成功したビジネスが必ずしも日本で通用するとは限らず、各地域特有の条件に対応する必要が出ています。
気候変動や感染症の世界的流行など、突発的に発生する課題への予測も困難であり、企業経営に大きな影響を及ぼしています。
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VUCA時代に企業が直面する課題

VUCA時代には以下のような課題があります。


高まる不確実性
VUCA時代の最大の特徴は、想定外の出来事が次々と起こることにあります。
例えば、新型コロナウイルスの流行や、地球温暖化に伴う気候変動など、予測困難な出来事が立て続けに発生しています。
働き方ひとつをとっても、日本企業で当たり前だった終身雇用や年功序列といった制度が見直され、成果主義の導入や転職の一般化が進んでいます。
さらに、働き方改革の推進や新型コロナウイルスの感染拡大により、リモートワークが急速かつ強制的に導入されたことで、従業員の働き方や暮らし方にも大きな変化が生じました。
企業は、このようにVUCA時代に顕著となった環境要因や働き方の不確実性に対して、柔軟に対応していく必要があります。


IT活用による業界再編
VUCA時代には、ITを活用した画期的なサービスが次々と生まれ、従来の業界の枠組みを壊すような新しいビジネスモデルが登場しています。
例えば、タクシー業界ではUberが、一般の人が自家用車を使って運転手として働けるようにする仕組みを構築しました。
海外では無人自動乗用車をタクシーとして運用する取り組みも始まっています。
このビジネスは、企業が車両や人件費といった固定資産を負担しない、低リスクで効率的なものといえます。
また、ホテル業界ではAirbnbが、個人が所有する住宅と旅行者をマッチングする仕組みを確立しました。
企業側は大きなリスクを負わずに宿泊事業を展開でき、世界中で利用者が拡大しています。
これらの企業はいずれも既存の業界での常識にとらわれず、IT技術と独自のアイデアを掛け合わせることで、世界的な有力企業へと成長しました。
このように、VUCA時代のビジネスでは、既存の強みを活かしながらも業界の常識に縛られない柔軟な発想と、大胆な事業・サービス変革が求められています。


経営資産の陳腐化・負債化
近年、多くの業界で「企業資産の陳腐化・負債化」と呼ばれる現象が起きています。
これは、工場や支店、ITシステムなど企業が保有する資産が、新たなIT技術の登場や企業方針の転換によって、短期間で一気に不要となってしまうことを指します。
特に一度資産として保有したものをすぐに新しい資産へと切り替えるのは容易ではなく、その移行期間に新規参入企業が急速にシェアを拡大するケースも少なくありません。
そのため、既存の事業を展開する企業にとっては、業界のトレンドを常に把握し、柔軟に経営資源を見直していくことがますます重要になっています。
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VUCA時代で生き残る組織づくりのポイント

それでは、VUCA時代で生き残るために、企業はどのような取り組みをしたらよいのでしょうか。


アジャイル経営の実践
VUCA時代の経営には、従来の経営スタイルから「アジャイル型」と呼ばれる経営方針への転換が不可欠です。
アジャイル(Agile)とは「素早い」「機敏な」という意味で、もともとはIT分野の開発手法として使われてきました。
要件定義から設計・開発・テスト・リリースまでの流れを小さな単位に区切り、それぞれを短いサイクルで繰り返し進めることで、仕様変更や問題発生に迅速に対応できる点が特徴です。
この考えを経営に取り入れたものが、アジャイル経営です。
アジャイル経営では大きな計画を小さなタスクに分割し、順次改善・実行を繰り返すことで、柔軟かつスピーディーに経営を進めることができます。
これにより、自社の強みを活かしながら、問題への対応や新たなビジネスチャンスへの挑戦を実施しやすい経営を実現できると考えられています。


リスクマネジメントと人材開発
VUCA時代において企業が持続的な競争優位を築くには、リスクマネジメントの根本的な見直しと人材基盤の刷新を同時に進める必要があります。
リスクを回避するよりも、むしろ不確実性を機会に変える戦略が有効といえるのです。
変化の激しい現代では、過去の成功パターンに依存するのではなく、状況の本質を的確に把握し、タイムリーな情報収集によって時代の変化に対応することが求められます。
実際、会計システムの分野でも、従来のオンプレミス型(買い切り式)からクラウド型への移行が進むなど、技術基盤の柔軟性が経営適応力を左右するようになっています。

組織の適応力を支える人材面でも、VUCA時代に対応できる能力開発は不可欠です。
予期せぬ状況下でもチームを導き、組織の結束を高めるリーダーシップを発揮できる人材が重視されます。
また、従来の日本企業がこれまで苦手としてきた迅速な意思決定や実行力を備え、素早く判断し行動に移せるスキルも欠かせません。

さらに、業界や職種の枠を超えて活躍ができるような汎用性の高いスキルを習得できるような能力開発も重要になります。
今後、日本企業が競争を勝ち抜いていくためには、能力開発と並行して、多様な専門性や価値観を持つ人材を効果的に配置し、組織全体でVUCA時代に立ち向かえる体制を築くことが重要となるでしょう。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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VUCA時代を勝ち抜くためには、従来の安定志向から変化に対応できるような経営方針への転換が不可欠です。
アジャイル経営による迅速な軌道修正体制の構築、リスクを機会に変える戦略的思考、そして多様なスキルを持つ人材育成を段階的に実行することで、不確実性の高い環境を競争優位の源泉に変えることが可能になるでしょう。

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