デジタル化や法改正が進む中でマイナンバーの活用シーンは広がりを見せており、企業にとっても管理体制の整備が欠かせない課題となっています。
管理が不十分な場合、情報漏えいや不正利用などのリスクに加え、行政指導や罰則といった法的リスクも避けられません。
このような状況下で「どこまで対応すれば十分なのか」、「法改正で何が変わったのか」と、不安や疑問を抱える担当者も多いのではないでしょうか。
今回は、2024年・2025年のマイナンバーに関する法改正を踏まえながら、企業が押さえておくべき管理ポイントを解説します。
マイナンバーとは
マイナンバーは、日本国内に住民票を持つすべての人(外国人を含む)に割り当てられる12桁の個人番号です。
2016年に「マイナンバー法」に基づいて導入され、主に以下のような目的で活用されています。
- 行政手続きの効率化
- 社会保障の適正な管理
- 税務管理の円滑化
- 災害時の支援体制の整備
- 健康保険証との一体化
- 国家資格情報の登録手続きや在留資格の申請手続きなど
複数の機関が保有する情報をマイナンバーで紐づけることにより、個人の特定を正確に行えるようになり、行政サービスの利便性と効率性が向上します。
一度割り当てられたマイナンバーは、原則として生涯変更されません。
そのため、マイナンバーを含む情報は「特定個人情報」として扱われ、個人情報保護法により厳重な管理が求められています。
なお、個人情報保護法では「個人情報」は生存する個人に限って保護の対象とされており、故人のマイナンバーは「特定個人情報」に該当しません。
※参考資料:デジタル庁「マイナンバー制度とは」
企業がマイナンバーを扱う場面と書類一覧
企業がマイナンバーを取り扱うのは、主に給与・報酬の支払いや社会保険・税務関連の各種手続きにおいてです。
企業がマイナンバーを記載する主な書類には、具体的に以下のようなものがあります。
管轄の行政機関 |
分類 |
書類名の例 |
国税庁 |
法定調書関係 |
・給与所得の源泉徴収票
・退職所得の源泉徴収票
・支払調書(報酬・料金、契約金等)など
|
源泉所得税関係 |
・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
・給与所得者の保険料控除申告書
・給与所得者の配偶者控除等申告書
|
厚生労働省 |
雇用保険関係 |
・雇用保険被保険者資格取得届/喪失届
・雇用保険被保険者転勤届
・雇用保険被保険離職証明書
|
労災保険関係 |
・障害補償給付支給請求書
・遺族補償年金支給請求書
・傷病の状態等に関する届
|
日本年金機構 |
健康保険・厚生年金 |
・健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届/喪失届
・算定基礎届
・月額変更届
・賞与支払届
|
マイナンバー漏えい時に企業が負うリスク
マイナンバーは氏名・住所・生年月日などの個人情報と結びついており、厳格な管理が義務づけられています。
万が一漏えいが発生した場合には、以下のような多岐にわたるリスクを負うことになります。
刑事罰 |
内容 |
刑事罰 |
故意または過失によりマイナンバーを漏えいさせた場合、企業や担当者に対し、最大で4年以下の懲役または200万円以下の罰金が科される可能性がある。
不正にマイナンバーを取得した場合も、懲役または罰金が科される可能性がある。 |
行政処分 |
マイナンバーの漏えいが発覚した場合、行政機関からの調査や処分を受けることがある。 |
民事賠償 |
被害に遭った個人から、慰謝料や損害賠償を請求される可能性がある。 |
レピュテーションリスク |
情報漏えいの事実が明るみに出ることで、企業の信用が著しく低下する可能性がある。
顧客や取引先の信頼を失い、事業継続に大きな影響を及ぼす可能性もある。 |
マイナンバーが漏えいした際の影響は、法的責任にとどまらず、企業の信頼やブランド価値にも深刻なダメージを与えかねません。
こうしたリスクを未然に防ぐためには、物理的・技術的・人的な多層的なセキュリティ対策の導入と、社内教育の徹底が不可欠です。
※参考資料:デジタル庁「マイナンバー制度における罰則の強化」
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【2024年・2025年】企業が押さえるべきマイナンバー法改正のポイント
2024年から2025年にかけて、マイナンバー制度をめぐる法改正が段階的に進められています。
ここでは、企業が押さえておくべき改正ポイントを詳しく解説します。
マイナンバーの利用範囲拡大
これまでマイナンバーの利用は、社会保障・税・災害対策の3分野に限定されていましたが、法改正によりその枠組みが大きく広がることが決まりました。
具体的には、医師・保育士・税理士など約80の国家資格に関する手続きに加え、自動車登録や在留資格の申請業務などにもマイナンバーの活用が可能となります。
これにより、住民票や課税証明書といった添付書類の省略や、マイナポータル経由でのオンライン申請が実現し、企業の業務効率が向上します。
該当する手続きが自社業務に関わる場合には、マイナンバー取り扱い規程などに新たな利用範囲を追記し、社内規程の見直しを検討することが重要です。
※参考資料:デジタル庁「マイナンバー法の改正事項」
健康保険証との一体化
2024年12月2日から、新たな健康保険証の発行は原則停止され、マイナンバーカードが健康保険証として使用されるようになっています。
既に発行されている健康保険証は、有効期限まではそのまま使えますが、更新や再発行はされません。
マイナンバーカードを所持していない方や、保険証としての利用登録をしていない方には、協会けんぽから代替として「資格確認書」が発行されます。
協会けんぽでは、2024年9月以降、全加入者に以下の2点を送付しています。
- 「資格情報のお知らせ」
- マイナンバーの下4桁が記載された加入者情報(資格確認書)
上記は基本的に送付済みですが、念のため確認しておきましょう。
資格確認書の有効期限は最長5年間のため、従業員には大切に保管するよう周知することも重要です。
※関連記事:マイナ保険証がないと保険適応されない?企業担当者が押さえておきたい健康保険証廃止に伴う実務対策
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企業がマイナンバーを管理する際のポイント
マイナンバーは情報漏えいのリスクを伴うため、取り扱いには細心の注意が必要です。
ここでは、企業がマイナンバーを扱う際のポイントを紹介します。
取得時は利用目的を明示する
企業が従業員からマイナンバーを取得する際は、事前にその利用目的を明確に示すことが重要です。
明示にあたっては、以下の点に留意しましょう。
- 書面などで明示することが望ましい
- 利用目的は具体的に記載する
- 明示した目的以外での利用や保管は禁止
実務では、以下のような文言で目的を伝えるケースが一般的です。
- 給与所得の源泉徴収票作成のため
- 健康保険・厚生年金保険などの社会保険手続きのため
- 雇用保険関係の届出のため など
具体的に利用目的を明示し、従業員が利用目的を正しく理解できるようにしましょう。
セキュリティ対策を徹底する
マイナンバーの外部漏えいリスクを最小限に抑えるためには、万全なセキュリティ対策が不可欠です。
書面で保管する場合は、鍵付きキャビネットや金庫などに厳重に保管し、施錠管理を徹底します。
電子データで保管する場合は、アクセス権限の制限・データの暗号化・ウイルス対策など、技術的なセキュリティ対策を確実に行いましょう。
また、マイナンバーを取り扱う従業員は、業務上必要な人に限定し、守秘義務を課すことが求められます。
定期的な教育や研修を実施し、セキュリティ意識を高めることも重要です。
さらに、マイナンバーの取り扱い状況を定期的に点検し、監査体制を整えることで、継続的に管理体制を強化する必要があります。
保存が不要になった場合は速やかに廃棄する
マイナンバーは、利用目的が終了した場合や、法律で決められた保存期間が過ぎた場合には、速やかに廃棄しなければなりません。
紙の書類の場合は、焼却・溶解・細断(シュレッダー)などの方法で、復元できない状態にすることが推奨されています。
マイナンバーカードのコピーを取得している場合もこれらの方法で確実に廃棄するようにしてください。
電子データの場合は、単に削除するだけでは復元される恐れがあるため、専用の削除ソフトを使うか、記録媒体そのものを物理的に破壊することが推奨されます。
その際にはバックアップデータも含めて完全に消去しましょう。
※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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2024・2025年の法改正によりマイナンバーの利用範囲が拡大し、企業の対応がますます重要になっています。
万が一情報が漏えいすれば、刑事罰や民事賠償だけでなく、企業の信用失墜といった深刻なダメージにつながりかねません。
この機会に、自社の運用ルールやセキュリティ体制を見直し、万全な管理体制の構築を進めましょう。