育児・介護休業法が改正され、2025年は企業に様々な対応が求められています。
今回の記事では、改正の概要や、企業担当者が押さえるべきポイントを解説します!
育児・介護休業法とは
育児・介護休業法とは、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」を正式名称とする、働く人が育児や介護を行いながら職業生活を継続できるよう支援することを目的とした法律です。
育児休業や介護休業の取得、短時間勤務などの両立支援制度が定められており、企業には従業員が仕事と育児・介護を両立できるような環境を整える義務があることを示しています。
この法律で定められた義務に違反した場合、厚生労働大臣からの是正勧告の対象となり、従わなければ企業名が公表される可能性もあります。
2025年の改正の背景と目的
育児・介護休業法はこれまでも何度か改正されていますが、2025年に施行される法改正には、少子高齢化と労働力不足、子育て・勤務環境の変化、介護離職の増加という社会的背景があります。
また、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、介護需要が大きく増大するとともに人材不足が顕著になる、いわゆる2025年問題が到来しています。
今回の法改正には、こうした課題を解消して、育児や介護といった多様なライフステージに対応した働き方を実現し、雇用を拡大するという目的があります。
そのため、労働者の状況に応じて以前にはない様々な支援制度が準備されています。
2025年の改正の主な内容
今回の改正では、2025年4月から主に以下の内容が段階的に適用されます。
2025年4月1日施行
- 子の看護等休暇の見直し
- 所定外労働の免除対象拡大
- 育児・介護のためのテレワーク導入の努力義務化
- 介護休暇の取得要件緩和 など
2025年10月1日施行
- 柔軟な働き方を実現するための措置の義務化
- 仕事と育児の両立に関する個別の意向確認義務化 など
組織の人的資源を最大限に活用!
給与・人事システム
複雑な支給形態を網羅!勤怠管理などのシステムとも連携することで、給与・賞与計算を自動化できます。また、従業員のあらゆる情報を適切に管理することで、組織の人的資源を最大限に活用することができます。
【2025年施行】育児に関する主な改正ポイント
まずは育児・介護休業法における育児に関する改正内容を見ていきましょう。
2025年4月施行の内容
子の看護等休暇の見直し
子の看護等休暇は、子どもが怪我や病気をした際の看護のために取得できる休暇です。
今回の改正では、対象となる子の範囲、取得事由、取得要件が変更されました。
項目 |
従来 |
改正後 |
対象となる子の範囲 |
小学校就学の始期に達するまでの子 |
小学校3年生修了(9歳)までの子 |
取得事由 |
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- 病気・けが
- 予防接種・健康診断
- 感染症などに伴う学級閉鎖など
- 入園(入学)式・卒園式
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要件 |
|
※勤続6カ月は廃止
|
小学校低学年の子どもを持つ親や、入社直後に休暇が必要な従業員なども休暇を取得できるようになったり、取得事由に看護以外の行事参加が追加されたりと、範囲が拡大されています。
所定外労働(残業免除)の対象拡大
小さな子どもがいる家庭では残業が難しい場合があることから、法律で残業時間を制限する残業免除という仕組みがあります。
これまで残業免除の対象となるのは「3歳未満の子を養育する労働者」に限られていましたが、改正後は「小学校就学前の子を養育する労働者」まで拡大されます。
育児のためのテレワーク導入の努力義務化
今回の法改正で、3歳未満の子どもを持つ従業員がテレワークを選択できるようにすることが、事業主の努力義務となります。
また、短時間勤務制度の代替措置としてテレワークが追加されます。
育児休業取得状況の公表義務の拡大
これまで、従業員が1,000人を超える企業の事業主には、男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられていました。
2025年4月からは企業範囲が拡大し、従業員数300人超1,000人以下の企業も対象となります。
公表内容は以下のいずれかの割合で、年1回、対象となる事業年度の終了後概ね3カ月以内に行う必要があります。
- 育児休業等の取得割合
育児休業等を取得した男性労働者の数 ÷ 配偶者が出産した男性労働者の数
- 育児休業等と育児目的休暇の取得割合
(育児休業等を取得した男性労働者の数 + 育児目的休暇を取得した男性労働者の数)÷ 配偶者が出産した男性労働者の数
※参考資料:厚生労働省「2025年4月から、男性労働者の育児休業取得率等の公表が従業員が300人超1,000人以下の企業にも義務化されます」
2025年10月施行の内容
柔軟な働き方を実現するための措置の義務化
3歳から小学校就学前の子を養育する従業員への柔軟な働き方支援措置の導入が、すべての事業主に義務付けられます。
事業主は以下の5つの措置のうち、少なくとも2つ以上を選択して整備しなければなりません。
- 始業・終業時刻などの変更(時差出勤・時短勤務やフレックスタイム制など)
- テレワーク制度の導入(月10日以上の利用が可能なもの)
- 事業所内保育施設などの設置運営など(ベビーシッター費用の補助を含む)
- 養育両立支援休暇の導入(年10日以上)
※子の看護や行事参加などに活用できる休暇制度
- 短時間勤務制度(原則1日6時間の勤務)
テレワークと養育両立支援休暇は、原則として時間単位での取得が可能であることが求められます。
なお、従業員は事業主が整備した措置の中から1つを選択して利用できる仕組みとなっています。
個別の意向確認義務
企業は、3歳未満の子どもを養育する従業員に、上記の柔軟な働き方制度に関する情報提供と利用意向の確認を個別に行うことが義務化されます。
これは従業員から妊娠・出産の申し出があった際など、適切な時期にも行う必要があります。
この義務は、子どもの年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための施策として位置づけられています。
事業主には、従業員の家庭や仕事の状況が変化する場合があることを踏まえて、その状況に応じて勤務時間・業務量や労働条件に関する配慮を行うことで、仕事と育児を両立しやすい環境を整えることが求められています。
【2025年施行】介護に関する主な改正ポイント
続いて、育児・介護休業法における介護に関する改正内容を見ていきます。
2025年4月施行の内容
介護休暇の取得要件緩和
介護休暇については取得要件が変更され、勤続6カ月未満の労働者の休暇取得が可能になります。
中途採用者など勤続期間が短い従業員であっても、入社直後から介護休暇を取得できるようになり、人材確保の面からは企業にとってもメリットがあると考えられます。
介護離職防止のための雇用環境整備義務化
今回の改正で、政府が最も力を入れているものの一つが介護離職防止策です。
介護に直面する従業員に対する支援として、以下の措置が義務化されます。
- 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
- 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
- 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
- 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
例えば、家族が要介護状態になったと従業員からの申出があった場合には、従業員が相談できる体制を整備し、介護休業に関する制度内容などを提供したうえで、仕事を継続するかどうかの意向確認を行う必要があります。
また、今回の改正では、介護に直面する前の40歳の労働者に、早い段階で介護休業に関する制度内容、申出先、休業給付金について情報提供を行うことも必要となりました。
介護は突然始まるケースも多く、実際に始まってからだと十分に対策できないことが多いとされていることから、事前の教育や情報提供は、従業員の介護離職を防止するために重要な施策といえます。
介護のためのテレワーク導入の努力義務
今回の法改正で、介護を行う従業員がテレワークなどの在宅勤務を選択できるようにすることが、事業主の努力義務となります。
育児と同様に、業種によっては導入が困難な場合もあるための努力義務となりますが、介護との両立を支援するための重要な選択肢として可能な限り導入を検討することが望ましいでしょう。
組織の人的資源を最大限に活用!
給与・人事システム
複雑な支給形態を網羅!勤怠管理などのシステムとも連携することで、給与・賞与計算を自動化できます。また、従業員のあらゆる情報を適切に管理することで、組織の人的資源を最大限に活用することができます。
企業の実務担当者が取り組むべきポイント
法改正に対応するには、まず改正内容を正確に把握することが重要です。
そのうえで、自社が対応すべき事項を整理し、現行の就業規則や対象従業員の確認などを行い、改定が必要な箇所を特定しましょう。
その後、具体的な規程改定と体制整備を進めます。
今回の改正の場合、テレワーク環境や相談窓口の整備、40歳になった従業員への情報提供体制の構築、育児休業取得状況の公表準備などに対応する必要があるほか、10月施行予定の柔軟な働き方を実現するための措置についても準備が求められます。
就業規則を見直す際は、厚生労働省が提供する「育児・介護休業等に関する規則の規定例」を参考にしてみてください。
※参考資料:厚生労働省「育児・介護休業等に関する規則の規定例」
実務対応にあたってのポイント
今回の改正では、対象となる従業員の抽出と提供する情報を整理することが重要となります。
人事情報を管理できるシステムなどを利用し、40歳に到達した従業員や、子どもを持つ従業員など、対象の従業員の有無と、それぞれの相談・申請状況などを体系的に管理できるとよいでしょう。
この時、経理システムと連携できるものであれば、休暇取得者の給与計算や社会保険料免除の処理もスムーズに行うことができます。
法改正対応にあたっては、社会保険労務士や税理士などの専門家の意見が必要となる場合もありますが、システムの中には法改正に対応した雛形やテンプレートが搭載されているものもあり、基本的な内容はそれで完結できることもあります。
また、新たにテレワークを導入する場合は、クラウド型の勤怠管理システムを活用することで業務の効率化・見える化が図れるでしょう。
法改正対応を働き方改革や業務効率化を推進する機会と捉えて、システム導入・更新も検討してみてください。
※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
組織の人的資源を最大限に活用!
給与・人事システム
複雑な支給形態を網羅!勤怠管理などのシステムとも連携することで、給与・賞与計算を自動化できます。また、従業員のあらゆる情報を適切に管理することで、組織の人的資源を最大限に活用することができます。
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2025年4月から段階的に施行される育児・介護休業法の改正内容は多岐にわたります。
企業には就業規則の改定を含めた様々な対応が求められるため、状況に応じてシステムを活用するなど、効率的な対応を検討してみるとよいでしょう。