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業務全般制度改正 2025/01/28

「103万円の壁」が123万円に?令和7年度税制改正の速報と企業への影響

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令和7年度税制改正は、「税は国家なり」という基本認識のもと、日本の経済社会が直面する様々な課題に対応するための包括的な改正となっています。
今回の記事では、令和7年度税制改正における基本的な考え方と、主に企業実務に影響がある内容を速報版でお届けします。

令和7年度税制改正の基本的な考え方

令和7年度税制改正の基本的な考え方は以下の通りです。

  • 持続的な経済成長を目指した活力ある社会の構築
  • 質の高い国民生活の実現
  • 国際的な経済環境への対応
現在の日本経済は長引いたデフレからの脱却を視野に入れ、賃上げや企業収益の増加、設備投資の活発化など、経済再生に向けた重要な局面を迎えています。
この状況を踏まえ、改正では生産性向上や中小企業のデジタル化投資促進を重点課題とし、経済基盤の強化が図られています。
物価上昇に伴う税負担増を抑えるため、基礎控除や給与所得控除の見直しが進められ、家庭の生活を支える制度も整備されました。
また、カーボンニュートラルや国際課税対応など、地球規模の課題にも対応する仕組みが導入されています。
以降では具体的な改正内容のうち、企業の担当者が押さえておくべき内容を中心に紹介します。
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個人所得課税の改正点

物価上昇と就業調整への対応(103万円の壁への対応)
令和7年度の個人所得課税改正で最も注目すべき点は、基礎控除と、給与所得控除の最低保障額の見直しです。
2025年分以降の所得税において、基礎控除は48万円から58万円へ、給与所得控除の最低保障額は55万円から65万円へ、それぞれ10万円引上げられます。
これらの改正により、給与所得者にとって所得税の支払いが発生する年収のボーダーラインが103万円から123万円に変更となります。

なお、上記の改正に伴い、扶養親族や同一生計配偶者が各種控除を受けるための合計所得金額要件も48万円から58万円に引上げられる予定です。
この変更は企業の給与計算実務にも大きな影響を与えると考えられるため、注意が必要です。

※関連記事:年収103万円を超えたらどうなる?扶養に関する所得の「壁」とは


特定親族特別控除(仮称)の新設
労働における深刻な人手不足への対策として、19歳から22歳までの大学生年代の子を扶養している親への控除が創設されます。
2025年分以降の所得税において、子の合計所得金額85万円(年収150万円相当)までは、親は特定扶養控除と同額の63万円の控除を受けることができます。
さらに85万円を超えた場合でも120万円までは段階的に控除額を減らす仕組みが導入されます。


子育て世帯に対する生命保険料控除の拡充
子育て支援税制の一環として、23歳未満の扶養親族がいる場合には、生命保険料控除における新生命保険料の適用限度額が4万円から6万円に引上げられることになります。
ただし、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除などとの合計での適用限度額については現行の12万円から変更されません。


確定拠出年金制度の見直し
確定拠出年金制度については、企業年金制度への加入状況にかかわらず、継続的かつ平等に資産形成できる環境を整備するため、「穴埋め型」による拠出限度額の引上げなどが実施されます。
これにより、確定拠出年金、個人型確定拠出年金(iDeCo)の拠出限度額において、ともに月額7,000円の引上げが行われます。

法人課税の改正点

中小法人の軽減税率の特例延長と対象法人の見直し
賃上げや物価高などに直面している中小企業の状況を踏まえ、「中小企業者等の法人税の軽減税率の特例」における適用期限が2年延長されることとなりました。
ただし、所得金額が年10億円を超える事業年度については、年800万円以下の所得金額に適用される税率が15%から17%に引上げられます。
また、適用対象法人の範囲からグループ通算の適用法人が除外されることとなりました。


中小企業経営強化税制の拡充
売上高100億円超を目指す成長意欲の高い中小企業を対象に、設備投資を促進するための制度が創設されます。
投資計画に記載された、年平均の投資利益率が7%以上、かつ、経営規模拡大要件を満たす投資について、特定経営力向上設備等として特別償却または税額控除の適用が認められます。
対象設備については、機械装置、工具、器具備品に加えて、建物及びその附属設備などが含まれることとなります。


地域未来投資促進税制の見直し
「地域未来投資促進税制」は機械などの対象資産について、特別償却(取得価額の20%~50%)または税額控除(取得価額の2~6%)のいずれかを選択できるものです。
この制度の投資規模要件が、1億円以上からと、より多額の投資が必要となりました。
また、「事業計画に定められた施設などの取得予定価額の合計額が10億円以上であること」など、適用要件が新たに追加されます。


企業版ふるさと納税の拡充
地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)について、適用期限が3年延長されます。


高度な資源循環投資促進税制の新設
「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」により高度再資源化事業計画または高度分離・回収事業計画の認定を受けた法人が、それらの目的のために一定の設備などの取得をした場合、特別償却が可能となる税制が創設されます。
対象となる資産は、脱炭素社会の実現に向けて国から認められた再資源化事業等高度化設備としての機械装置や器具備品のうち、2028年3月31日までの間に取得したものであり、20億円までであればこれらの資産の取得価額の35%を特別償却することができます。


新リース会計基準の適用に関する措置
2027年4月1日以降開始する事業年度からは、新たなリース会計基準が適用されます。
この会計基準では、特に借手側のオペレーティング・リース取引について、賃貸借取引を廃止し、資産及び負債を計上することが求められています。
しかし、今回の税制改正大綱では、税務上、オペレーティング・リース取引については大きな変更がありませんでした。
そのため、会計上の処理と税務上の処理で相違が生じることとなり、法人税申告書で別表調整が必要となる可能性があります。
また、リース期間定額法における減価償却計算ではリース期間経過時点での残価保証額を控除しないこととなり、リース期間経過時点で備忘価額1円まで償却することとなります。


カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の延長
カーボンニュートラルに向けた投資促進税制は、脱炭素化に向けた取り組みを支援するため、対象設備の見直しをしたうえで延長されることとなりました。
特に、生産工程の脱炭素化に資する設備投資について、重点的な支援が行われる予定です。
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国際課税の改正点

グローバル・ミニマム課税制度の新制度導入
OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」で合意されたグローバル・ミニマム課税について、令和5年度税制改正で導入された所得合算ルール(IIR)に続き、軽課税所得ルール(UTPR)と国内ミニマム課税(QDMTT)が法制化されました。
概要は以下の通りです。

軽課税所得ルール(UTPR)
海外親会社などの実効税率が15%未満の場合に、15%となるまでの差額を日本子会社などに追加課税する制度です。
IIRでは日本の親会社に課税しますが、UTPRでは海外の親会社の税負担が低い場合に日本の子会社に課税することになります。

国内ミニマム課税(QDMTT)
多国籍企業グループに所属する日本法人について、日本での実効税率が最低税率である15%未満になった場合に、15%になるまでの差額を日本で追加的に課税する制度です。
日本以外の国でIIRやUTPRによる追加課税を防止することを目的としています。


外国子会社合算税制の見直し
グローバル・ミニマム課税導入による納税者の事務負担増加を考慮し、外国子会社合算税制について以下の見直しが行われます。

外国関係会社の合算対象時期の変更
合算対象となる時期が、外国関係会社の事業年度終了日の翌日から4月を経過する日を含む内国法人の各事業年度と変更され、現行の2カ月から4カ月に延長されました。
特に外国関係会社が12月決算、日本親会社が3月決算の場合、外国子会社合算税制の対応に余裕が生まれることになります。

添付・保存書類の範囲の見直し
租税負担割合が20%未満などの外国関係会社について、申告書に添付が必要な書類から、株主資本等変動計算書及び損益金処分計算書、勘定科目内訳明細書が除かれることとなりました。

※関連記事:【令和5年度税制改正】グローバル・ミニマム課税とは?動向を注意しておくべき国際課税分野について

消費課税の改正点

外国人旅行者向け免税制度の見直し
外国人旅行者における消費税の免税制度の不正利用を防ぐため、外国人旅行者向けの免税制度である「輸出物品販売場制度」について、以下の通り抜本的な見直しが行われることとなりました。

免税方式の見直し(リファンド方式)
店舗では消費税を含む価格で販売し、出国時に持ち出しの確認をした後、消費税相当額を返金するリファンド方式に移行します。
この変更により、確実な輸出確認が可能となり、不正利用が抑止されます。

免税対象品の範囲の大幅な見直し
免税対象物品の範囲について以下の通り見直しが行われます。

  • 一般物品と消耗品の区分の廃止
  • 消耗品の同一店舗一日当たりの免税対象となる購入上限額(50万円)と特殊包装の廃止
  • 「通常生活の用に供するもの」かどうかの免税対象物品の判断要件の廃止
  • 金地金などの不正目的で購入されるおそれが高い物品について、個別に免税販売の対象外とする
免税販売手続きの見直し
100万円(税抜)以上の免税対象物品については、購入記録にシリアルナンバーなど、その物品を特定するための情報を加えることとされました。

資産課税の改正点

事業承継税制の実務的な見直し
「事業承継税制の特例措置」における役員就任要件が「贈与の直前において特例認定贈与承継会社の役員等であること」とされ、現行の「贈与の日まで引き続き3年以上」という要件が緩和されることとなります。
これにより、より柔軟に特例措置を利用することができます。


結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の延長
「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」について、適用期限が2年延長されることとなりました。

防衛特別法人税の創設

防衛力の抜本的強化を行うための安定的な財源を確保するため、法人税に対し、税率4%の新たな付加税として防衛特別法人税が課されることとなります。
ただし、中小企業の税負担増を回避するために、課税標準から年500万円を控除する措置が設けられています。

税額の計算方法
(基準法人税額 - 500万円)× 4% = 防衛特別法人税

防衛特別法人税は、2026年4月1日以降に開始する事業年度から適用されることとなります。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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令和7年度税制改正大綱は改正内容が多岐にわたるほか、速報時点では検討中の事項もあり、法案成立まで動向を見逃せません。
今回紹介した内容を参考に自社に関係のある項目を整理し、今のうちに今後の税務マネジメントを検討しておく必要があるでしょう。

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