退職届とは、従業員の退職確定後、正式に労働契約を解除する意思を従業員から雇用先に通知するための文書です。
法律上、従業員が退職する際は労働契約の解除意思を伝えるだけで十分なのですが、その内容を文書で表明し残しておく役割として、退職届が重要となります。
退職の事実確認など、文書を通して企業と従業員の認識を一致させれば、退職に関するトラブルを回避することもできます。
そのため、企業によっては退職届の提出が就業規則で義務付けられている場合もあります。
退職願との違い
退職願は、従業員が退職したい旨を雇用先に伝えるための文書です。
退職届と同様、特に法的な拘束力はないため、退職願を省略し口頭で退職希望を伝えても問題はないのですが、退職に対するより強い意志を表明するのに効果的です。
また、退職願に退職希望日や条件を書くことで、退職時期の協議や引き継ぎ期間の調整などもスムーズになります。
企業にとっては、退職願に書かれた退職理由から職場環境の改善などを検討する機会にもつながります。
こういった退職願の活用が、退職というネガティブな印象を和らげることもあります。
組織の人的資源を最大限に活用!
給与・人事システム
複雑な支給形態を網羅!勤怠管理などのシステムとも連携することで、給与・賞与計算を自動化できます。また、従業員のあらゆる情報を適切に管理することで、組織の人的資源を最大限に活用することができます。
退職届には特に法律で決められた様式はありませんが、いくつか必要となる要素があります。
退職届の記載例
上記の例を参考に、以下の要素を簡潔にまとめます。
タイトル
タイトルとして「退職届」と明記します。
冒頭文
冒頭文は「私儀、このたび一身上の都合により、〇〇年〇月〇日をもちまして退職いたします」といった表現が一般的で、詳細な理由を記載する必要はありません。
宛先
企業の代表者名を記載します。
署名
最後に、従業員本人が署名します。
従来の退職届は白の便箋に黒インクのペンで手書きするのが一般的でしたが、最近はパソコンで作成する場合もあります。
その場合でも従業員本人の署名だけは手書きが望ましいとされています。
封筒
退職届を提出する際には封筒を使用し、表面に退職届と記載します。
退職届は上記のように作成したうえで、コピーをとり、原本を企業、コピーを従業員が持っておくとよいでしょう。
これにより、提出後の確認作業やトラブル対応がスムーズになります。
退職届の提出方法
確実に提出するため、退職届は直属の上司に手渡しするのが理想的です。
この時、退職理由などを口頭で補足し双方の認識を合わせておくと、その後の対応が円滑に進むでしょう。
直接渡すことが難しい場合は、追跡可能な郵送方法を利用すると安心です。
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企業担当者には、退職希望日から逆算して各種スケジュールを調整し、従業員と企業双方にとって無理のない進行をサポートすることが求められます。
従業員の退職手続きにおける手順
従業員の退職手続きをスムーズに進めるために、一般的な手順を確認しておきましょう。
退職意思の表明と退職願の提出
従業員は、退職の意思が固まったら直属の上司などを通して雇用主側にそれを伝えます。
この時、口頭で伝えることも可能ですが、先述の通り退職願があればよりスムーズとなります。
業務の引き継ぎや後任者の選定
退職する従業員が関与している業務について詳細をまとめ、後任者を選定のうえ、退職日を決定します。
その後、業務の引き継ぎも行います。
退職届の提出
企業が退職の意思を承諾し、退職日が確定した後で、従業員に退職届を提出してもらいます。
最終出勤日の対応
退職する従業員の有給休暇が残っている場合、事前に使用したうえで最終出勤日を迎えることも、最終出勤日後に有給休暇を使用することも可能です。
どちらの方が都合がよいか、従業員と協議して決めましょう。
なお、最終出勤日には、保険証、社員証、制服、名刺など企業からの貸与物を返却してもらい、離職票などの必要書類の受領を行います。
退職意思表明のタイミング
上記の手続きをスムーズに行うためには、最初のステップである従業員からの退職意思表明のタイミングが重要となります。
法律上のタイミング
民法627条では、従業員が正社員である場合、退職の意思を伝えて2週間経過すれば、企業の承認がなくても退職となる旨が定められています。
そのため、極端にいえば、退職希望日の2週間前に意思を伝えるだけで法律上の要件は満たされます。
しかし、この期間では引き継ぎ対応や後任者確保が困難な場合が多いため、現実的にはもう少し長い期間を設けることが一般的です。
なお、契約社員など雇用期間の定めがある従業員の場合は、雇用契約を結んでから1年以内はやむを得ない事情がない限り退職できませんので注意してください。
現実的なタイミング
法律で定められた2週間では引き継ぎなどの期間が十分確保できないと企業が判断した場合、「退職希望日の1~2カ月前」など、退職申出の期日を就業規則で定めることができます。
特に繁忙期やプロジェクト進行中に退職申出が行われた場合、業務に大きな影響があるのは否めません。
従業員には、退職意思が固まった段階でなるべく早く表明してもらうよう、普段から就業規則の内容を理解してもらうようにするとよいでしょう。
注意すること
退職はネガティブな感情を抱きやすいイベントでもあるため、手続中はできる限り関係者の心理的負担を和らげる必要があります。
特に退職する従業員に対して、上司や同僚と円滑なコミュニケーションがとれるようサポートすることが大切です。
未払給与や有給消化についても本人に十分確認をとり、退職後のトラブルを防ぐようにしましょう。
また、後任となる従業員に対しては、業務量調整や労働時間の管理などのケアをすることも必要です。
企業として従業員を失うことは損失となりますが、退職理由などを丁寧にヒアリングすることで企業の成長につなげることもできます。
以上の点を注意しておくと、関係者が気持ちよく手続きを終えることができるでしょう。
※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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