予定納税は、納税者があらかじめ税金の一部を支払うことで、一括納税の負担を軽減する制度です。
予定納税を行う際は、税務管理を効率化するための理解と計画が必要となります。
本記事では、予定納税の基礎知識から実務のポイントまでを解説します。
予定納税の基本的な仕組みと対象税目
予定納税とは、一定の基準に達した納税者が確定申告で納める税金の一部をあらかじめ先払いする制度のことです。
所得税、法人税、消費税が対象となっており、それぞれ異なる基準が設けられています。
この制度は、納税者側の一括納税に対する負担緩和のほか、国側の安定的な税収確保も目的としています。
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所得税の予定納税
所得税の予定納税は、前年の予定納税基準額が15万円以上で、給与所得以外の所得がある場合に必要です。
主に事業所得や不動産所得のある人が典型的な対象者となります。
予定納税基準額とは、その年の5月15日に確定している、前年の総合課税所得に基づく所得税額と、株式関連の申告分離課税に基づく所得税額から、源泉徴収税額を引いた金額のことです。
前年に山林所得、退職所得などの分離課税所得や、譲渡所得、一時所得、雑所得がない場合、前年分の所得税がそのまま予定納税基準額となります。
納付方法
それぞれ前年の所得税額の3分の1ずつを、7月と11月の年2回に分けて納めます。
例えば、前年の所得税額が300万円だった場合の納税額は以下の通りです。
7月末まで(第1期) |
100万円 |
11月末まで(第2期) |
100万円 |
確定申告時 |
残額の精算(年間所得に基づく) |
このように分割納付することで、一度の支払負担を軽減することができます。
なお、年間の税額が確定した際に過不足を精算することも可能です。
実務で押さえておきたいこと
所得税の予定納税では6月中旬に税務署から納税額の通知があるため、担当者はそれまでに必要な資金を準備しておく必要があります。
なお、その年の所得が昨年に比べ大きく減少する場合などには、所得税の予定納税額の減額が認められる場合があります。
減額申請の期限は、第1期分については7月31日まで、第2期分については11月15日までとなります。
申請には合理的な理由と具体的な数値による裏付けが必要となるため、留意しておきましょう。
※参考資料:国税庁「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続」
法人税の予定納税
法人税の予定納税は、前事業年度の法人税額が20万円を超える場合に必要です。
納付方法
前期の法人税額の2分の1を、事業年度開始から半年(6カ月)を経過した月から2カ月以内に納めます。
例えば、前期の法人税額が1,000万円の3月決算の法人の場合は以下のようになります。
事業年度開始日 |
4月1日 |
半年経過日 |
9月30日 |
申告期限 |
11月30日 |
納税額 |
500万円 |
実務で押さえておきたいこと
法人税の予定納税には、前期実績による納付のほかに仮決算による納付という方法があります。
前期実績による納付
前事業年度の法人税額 ÷ 前事業年度の月数 × 当期の中間期間の月数(通常6カ月)の計算結果が10万円を超える場合(年間で前事業年度の法人税が20万円を超える場合)に対象となります。
仮決算による納付
事業年度開始から6カ月間を1事業年度と見なして仮決算を行います。
仮決算による納付は、当期の経営状況に即した納税額の算定ができるため、前期よりも当期の業績が大きく悪化している場合に有効です。
ただし、仮決算を行うためには予定申告書や財務諸表の作成など、追加の手続きによって事務負担が発生するため、費用対効果を考慮した判断が必要になります。
消費税の予定納税
消費税の予定納税は、前年度の消費税納税額(地方消費税を除く)が48万円を超える事業者が対象となります。
具体的には以下の通りです。
個人事業主 |
前年の確定消費税額が48万円超 |
法人 |
前事業年度の確定消費税額が48万円超 |
納付方法
消費税の予定納税の回数と納付税額は、前年度の消費税額によって異なります。
|
回数 |
納税額 |
48万円超~400万円以下 |
年1回 |
前年度消費税額の1/2 |
400万円超~4,800万円以下 |
年3回 |
前年度消費税額の1/4 |
4,800万円超 |
年11回 |
前年度消費税額の1/12 |
法人と個人事業主では課税期間が異なるため、納付期限にも違いがあります。
法人の納付期限は課税期間終了後の2カ月以内です。
法人の課税期間は通常、事業年度の開始から終了までの1年間であり、予定納税は課税期間中の各対象期間終了から2カ月以内が期限となります。
例えば、3月決算の法人の場合、以下の通りです。
年1回の中間納付 |
9月末 |
年3回の中間納付 |
1回目:6月末、2回目:9月末、3回目:12月末 |
年11回の中間納付 |
毎月末(課税年度の開始から1カ月間は、その期間が2カ月経過した後の2カ月後) |
個人事業主の課税期間は1月1日から12月31日までの1年間で、予定納付期限は次の通りです。
年1回の中間納付 |
8月末 |
年3回の中間納付 |
1回目:6月末、2回目:10月末、3回目:翌年2月末 |
年11回の中間納付 |
毎月末(1月〜3月分は5月末) |
なお、前年度の消費税額が48万円以下の事業者でも自主的に予定納税を行うこともできます。
実務で押さえておきたいこと
消費税の予定納税は前年の納税額に応じて納付回数が大きく変動するため、手続きを効率よく行うには、前年の消費税の申告を行ったタイミングで当期の消費税の申告納税計画を立てることが重要です。
遅くとも税務署からの納付書や通知書が届いたタイミングで対応する必要があるでしょう。
なお、法人税と同様に仮決算による方法の選択が認められているため、自社の状況に応じてどちらが最適か検討するとよいでしょう。
※参考資料:国税庁「中間申告分の納付期限及び振替日について」
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予定納税を忘れた場合のリスクとシステム管理
予定納税を行わない場合、確定申告時に全額を一括納付しなければなりません。
この場合、事業主はキャッシュフローへの影響を考える必要があります。
経営状況が悪化している状況であれば、税務署に減額申請を行うことも検討しましょう。
また、予定納税の納付期限を過ぎても納付を行わなかった場合は、延滞税が発生する可能性があります。
そうならないためにも、納付期限は正確に把握することが重要です。
会計システムの活用
納税スケジュールの管理や資金計画を効率化し確実な納付を行うためには、会計システムを活用するのも有効です。
計画的な予定納税の実施は企業の財務基盤を安定させるだけでなく、延滞税発生などの税務リスクの回避にもつながります。
システムの選定に当たっては、予定納税額の試算、納付期限の管理とアラート機能、資金繰り状況の把握ができるものを検討するとよいでしょう。
また、クラウド型であればリアルタイムでデータを確認できるため、急な業績変動があった場合でも対応可能です。
従来はつい見落としてしまいがちだった予定納税の期限の確認や納付方法の比較も容易になり、担当者の負担軽減にもつながるでしょう。
※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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予定納税は納税者側にも国側にもメリットのある制度です。
適切に行うために、納付額の計算や納付スケジュールを管理できる会計システムの導入も検討すると、より効率的に対応できるでしょう。