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人事/労務年末調整 2024/11/06

年調減税事務ってなに?2024年の年末調整は定額減税に要注意!

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2024年の年末調整には様々な変更点がありますが、特に注意しておきたいのが定額減税の対応です。
今回は定額減税における年調減税事務の内容を中心に、2024年の年末調整において押さえておきたい内容を解説します。

年末調整とは

年末調整とは、企業が従業員の給与や賞与から毎月源泉徴収している所得税の過不足分を年末時点で正しい税額に調整する手続きのことです。
源泉徴収は年間の収入金額や所得控除・税額控除の金額が確定する前に概算で行われているため、確定後に正確な所得税額を計算して修正する必要があります。
この対応を年末調整として企業が行うことにより、従業員は基本的に確定申告を行う必要がなくなります。


年末調整の対象者
年末調整は、原則として年末までに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している従業員すべてが対象となります。
これは主に、1年を通じて勤務している人や、年の途中で入社して年末まで勤務している人が該当します。
ただし、年間の給与総額が2,000万円を超える人、2カ所以上の勤め先がある場合に主要な勤め先が他社である人などは、年末調整の対象外となります。


年末調整で必要になる主な書類
年末調整時は、従業員から提出される各書類によって各種控除額を確定します。
年末調整で必要となる申告書と各種控除の対応表は以下の通りです。
書類名 所得控除・税額控除
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、定額減税
給与所得者の基礎控除申告書 基礎控除、定額減税
給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 配偶者控除、配偶者特別控除、定額減税
所得金額調整控除申告書 所得金額調整控除
給与所得者の保険料控除申告書 生命保険料控除、地震保険料控除など
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 住宅借入金等特別控除など
※定額減税については2024年に限り適用される事項です。

※参考資料:国税庁「令和6年分 年末調整のしかた


2024年の年末調整では例年に加えて定額減税に関する手続きも行うことになります。
年末調整における定額減税額を計算する際は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」、「給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書」などから本人・配偶者・扶養親族の状況を確認することになるため、書類に記載された内容が誤っていないか、より細心の注意を払って確認する必要があります。

年末調整での定額減税の適用について

2024年の年末調整において最も重要なのは定額減税の年調減税事務です。
定額減税とは、納税者本人とその配偶者や扶養親族1人につき所得税3万円、住民税1万円の合計4万円が控除される制度であり、2024年の税制改正により1年限定で導入されています。
定額減税には月次減税事務と年調減税事務があり、月次減税事務では、2024年6月以降最初に支払われる給与において控除対応を行ったうえで、その時に控除しきれなかった分を以降の給与や賞与などの源泉徴収税額から順次控除します。

ただし、月次減税事務は6月時点での所得・扶養情報をもとにして行うものです。
実際の定額減税の適用判定は年末調整時に確定するため、その時点での最新の情報に基づいた金額・情報への修正が必要となります。
この作業を年調減税事務といいます。

年調減税事務での定額減税額は、本人及び配偶者・扶養親族1人につき所得税分の3万円分を合計した額です。
そのうえで、申請者本人の2024年年末調整における所得税額は、各種控除を適用した所得税額から年末調整時点の定額減税額を差し引いた額に、所得に応じた所得税率を掛けた金額となります。

※関連記事:定額減税に備えるには?月次減税事務で慌てないために必要なこと【令和6年度税制改正】


年調減税事務の対象者
定額減税の対象者は、2024年分の所得税の納税義務者のうち、合計所得金額が1,805万円以下の居住者とされています(給与収入のみの場合は、収入が2,000万円以下)。
したがって、年末調整を行う従業員は原則として全員が定額減税手続きの対象となります。
また、本人以外の配偶者や扶養親族については、同一生計の国内居住者であり、2024年の合計所得金額が48万円以下である人が対象となります。
配偶者や扶養親族の年調減税事務を行う際は各種提出書類に記載の内容が必須となるため、記入漏れやミスがないかどうかは慎重に確認するようにしましょう。
特に、2024年6月以降に結婚や出産などの変化があった場合は、その情報を確認し、定額減税の適用判定をする必要があるため注意が必要です。
なお、定額減税の対象となる扶養親族が2024年中に死亡した場合は、その親族の死亡日時点で適用要件を満たしていれば、定額減税の適用を受けることができます。


年末調整書類における定額減税の記載欄
2024年版の「給与所得者の基礎控除申告書」には定額減税の適用要件と判定結果の記入欄が設けられています。
所得金額が1,805万円以下であることを確認し、対象となる場合はこの欄にチェックを入れます。
また、扶養親族や配偶者に対する定額減税の適用については、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」や「給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書」で判定したうえで対応することになります。

※関連記事:定額減税にどう対応する?2024年に改めて確かめたい給与所得者の基礎控除申告書の書き方

2024年の年末調整におけるその他の変更点

2024年の年末調整でチェックしたいそのほかの変更点についても紹介します。


扶養控除等申告書の簡略化
前年の申告内容から変更がない場合、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」については簡易な申告書での提出が認められます。
例えば、前年の年末調整時に提出した申告書の余白部分に「異動がない」ことを記載することで対応が可能になります。
これにより、配偶者や扶養親族などの状況に変化がない従業員については手続きが簡略化されます。


保険料控除申告書の簡素化
「給与所得者の保険料控除申告書」の記載事項のうち、生命保険料控除・地震保険料控除・社会保険料控除の適用に関して記載が必要とされていた「あなたとの続柄」欄が削除されています。


住宅ローン控除の手続き簡略化
これまで住宅ローン控除を行うためには、従業員が金融機関交付の年末残高証明書を年末調整書類に添付して勤務先に提出する必要がありました。
しかし新たに導入された「調書方式」による場合、金融機関側が税務署に年末残高調書を提出することになったため、従業員が年末残高を証明する手続きが不要となり、年末残高の証明手続きが簡略化されています。

※2024年時点では調書方式に対応していない金融機関も多くあるため、従来通り証明書方式による手続きも認められています。


その他、年末調整関係書類の様式や記載内容については国税庁ホームページにも詳細が掲載されています。
こうした情報も併せて確認のうえ、必要な内容については早めに従業員に案内するようにしましょう。

※参考資料:国税庁「年末調整がよくわかるページ(令和6年分)

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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上記のように、2024年の年末調整で最も重要なのが定額減税に関する対応です。
慣れない作業となることでミスが起こりやすい状況が予想されますので、慎重に行いましょう。
そのほかにも、今回紹介した変更点をしっかり理解することで対応がスムーズになります。
例年と異なる部分については十分に注意のうえ対応を進めてみてください。

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