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人事/労務働き方改革 2024/11/12

有給休暇消化できていますか?知らないと労基違反になるかもしれない年間5日の消化義務とは?

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2019年の法改正により、企業における従業員の年5日の年次有給休暇取得が義務化されました。
企業が従業員に有給休暇の取得を促すことは、法令遵守の視点だけでなく、従業員の心身の健康促進や事業における生産性向上としても重要です。
今回の記事では企業が押さえておきたい年次有給休暇の定義と有給休暇の取得促進施策について解説します。

年次有給休暇とは

年次有給休暇とは、企業で働く従業員が給与を受け取りながら取得できる休暇のことです。
一般的には、「有給休暇」、「有給」などと略されることもあります。
有給休暇は、心身の疲労を回復させるなど、より働きやすい環境を従業員に提供することを主な目的としています。
有給休暇取得の権利は、正社員、パートタイム、アルバイトなど、雇用形態を問わず、すべての労働者が持っています。


有給休暇の付与要件
有給休暇の付与要件は、労働基準法第39条に定められています。
労働基準法 第39条1項
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

この規定をわかりやすくまとめると、正社員のように週5日出勤している従業員の場合、以下の2つを満たせば年10日間の有給休暇が取得できることになります。

  • 雇入日から6カ月間継続勤務していること
  • 全労働日の8割以上を出勤していること
※出勤日8割以上の判定にあたって、業務上のけがや病気での欠勤期間、法律上の育児休業や介護休業を取得した期間については、出勤したものとして取り扱います。

例えば、2024年4月1日に入社した正社員の場合、半年後の2024年10月1日には年10日の有給休暇が付与されます。
さらにその日から1年経過した時点で同様の要件を満たしていれば、年間の有給休暇は1日追加され11日となり、これを繰り返すことで最大20日まで増え続けます。

なお、勤務日数が週5日に満たないパートタイム労働者の場合、有給休暇は勤務日数に応じて比例的に付与されます。
例えば週4日勤務の場合は、初年度に年間7日、2年目は年間8日となり、最大年間15日まで取得できるようになります。

※参考資料:厚生労働省「労働基準行政全般に関するQ&A


有給休暇の取得時期
原則として、有給休暇は従業員自身が日付を指定することとなっており、企業側はそれに従わなければなりません。
ただし、どうしても事業の運営に影響が出てしまう場合は、指定された休暇日を変更してもらう「時季変更権」という企業側の権利も存在します。
ただし、単純な多忙などを理由にこの権利を行使することはできず、同じ日に多くの従業員が同時に休暇を指定した場合など、やむを得ない事情がある場合に使用することができます。
なお、有給休暇は発生日から2年間のうちに使用しないと、自動的に消滅してしまうため、注意が必要です。

有給休暇の消化義務

2019年の労働基準法改正により、年10日以上有給休暇が付与されている従業員に対しては、このうちの5日間は確実に有給休暇を取得させることが企業の義務となりました。
この義務を果たさなかった場合は労働基準法違反扱いとなり、経営者に対して30万円以下の罰金が課されます。
これは従業員一人あたりの金額のため、該当する従業員が多いほど、罰金の総額も増加することになります。


有給休暇取得の方法
従業員が有給休暇を取得する際の方法は以下の通りです。

従業員の請求による取得
従業員が有給休暇の取得を請求し、企業が承認するという、もっとも一般的な方法です。
この場合、企業は従業員の請求をできる限り尊重する義務があります。
ただし、繁忙期などにおいて業務に重大な影響が出る場合は、時季変更権を行使し、取得時期を変更することが認められています。

企業による有給休暇の時季指定
従業員が自発的に有給休暇を取得しない場合、年間5日分については企業側が時期を指定して従業員に有給休暇を取得させることが義務付けられています。
この時季指定に当たっては、可能な限り従業員本人の意見を尊重するよう努めることも求められています。

計画的付与制度の活用
計画的付与制度とは、労使協定を結ぶことで、年5日を除いた残りの有給休暇について企業が取得日を計画的に設定できる制度です。
この制度を利用することで、繁忙期を避けた適切な時期に従業員に有給を取得させることができます。

企業における有給休暇取得の促進施策

有給休暇の取得率が低いことは、多くの企業の問題となっています。
経営層が有給休暇取得促進を呼びかけているにもかかわらず社内では十分に認知されていなかったり、管理職が有給休暇を取得していないために部下も有給休暇を取得しにくい環境になっていたりと、様々な課題が存在しています。
こうした課題を克服するために企業はどのような対応をすればよいのでしょうか。


有給休暇取得促進のための施策
有給休暇の取得を促進するために、以下のような施策例が挙げられます。

有給休暇取得促進の方針を全社的に浸透させる
経営層が主体となり、有給休暇取得を全社的に推進する姿勢を見せるようにしましょう。
直接的に有給休暇取得方針を伝える機会を設定するなど、重要事項である旨を従業員にもしっかりと伝えることが大切です。
日数や期日などの数値目標を設定すれば、よりわかりやすく伝えることができるようになります。

計画的付与制度の導入を検討する
計画的付与制度を活用することで、事前にスケジュールを立てつつ従業員に有給休暇を取得させることができます。
特に、多くの人員を抱える大規模企業や繁忙期が明確な企業においては、この制度を利用することでスムーズな事業運営と従業員の有給休暇取得を両立させることができます。

時間単位有給制度を活用する
有給休暇は1日単位での取得が原則ですが、労使協定を結ぶことで、年間5日分までを時間単位で取得することも認められています。
例えば、子育てや介護中の従業員の場合、家族の送り迎えや通院時に、時間給の取得が役立ちます。
ただし、時間単位有給休暇は有給休暇の年5日の取得義務の範囲には入らないため、注意が必要です。

人事評価制度に反映する
管理職が部下の有給休暇取得を積極的に促す環境をつくるため、人事評価に部下の有給休暇取得率や労働時間の管理を含めるという方法もあります。
管理職の意識を高めることで、組織全体の有給休暇取得率の向上が期待できます。

有給休暇に関する研修を行う
有給休暇取得の権利を正しく理解し、取得促進のための意識改革を行うために、管理職や従業員に対して定期的な研修を実施することも有効です。
特に管理職に対しては、有給休暇取得が業務効率の向上や従業員の健康維持につながることを理解させたうえで、実践的なマネジメント手法を学ばせると良いでしょう。


企業が行うべき有給休暇取得率向上に向けた環境づくり
計画的付与制度や時間単位有給制度を導入するためには、労使協定を結ぶなどの体制をつくっておくことが重要です。
また、従業員に確実に有給休暇を取得させるためには、すべての従業員の有給休暇の取得状況を管理できる体制を整備する必要もあります。
勤怠システムなどを通じて有給休暇の取得状況をリアルタイムで把握し、取得の遅れが発生しないようにアナウンスできる仕組みを導入しておくと良いでしょう。
従業員が休暇を取得できれば、リフレッシュした状態で業務に集中することができ、業務効率の向上も期待できます。
義務だからというだけでなく、スムーズに事業を展開するためにも有給休暇を正しく取得できるような体制をつくっておきましょう。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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定期的な有給休暇の取得は、従業員の健康と業務へのモチベーションを守るためにも重要です。
今回の記事を参考に、休暇の取得管理と計画的な取得促進を行えるよう検討してみてください。

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