働き方改革を成功させるために正しい労働時間の考え方を知っておこう!
「労働時間」を正しく理解することなくして、働き方改革は語ることができません。経営者や人事担当者が知っておくべき重要なポイントをダイジェストでご紹介します。
労働時間の正しい理解無くして、働き方改革は語れない!
しかし、そもそも「労働時間」とは何でしょうか?
「労働時間」を正しく理解することなくして、働き方改革は語ることはできません。
今回は、社会保険労務士としてご活躍している加藤 千博 氏の人気セミナー「人事総務を徹底的に効率化するセミナー 『働き方改革』なぜ、今必要なのか?正しい労働時間の考え方と労務管理の方法」の講義内容から、労働時間の定義、労働時間や時間外労働の具体的な考え方、適正な労務管理などについて、経営者や人事担当者が知っておくべき重要なポイントをダイジェストでご紹介します。
講師プロフィール
社会保険労務士 加藤 千博 氏
加藤マネジメントオフィス 代表。MJS税経システム研究所 客員講師。社会保険労務士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー。1990年よりイタリアを中心に一流ホテル、高級ブランド店のサービスを学び、帰国後はファッション、不動産、飲食など多くの会社経営に携わる。同時に従業員の福利厚生を向上させるため、人事評価制度、賃金制度構築に長年にわたり尽力。2010年、センズプランニング株式会社設立。2013年、加藤マネジメントオフィス設立。
労働時間とは「使用者の指揮命令下に置かれている時間」のこと
では、実際の判例を見てみましょう。
労働基準法32条の労働時間とは、労働者が「使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいい、労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるものではない。※判例より引用、「 」は引用者によるもの
この「使用者の指揮命令下に置かれている時間」が「労働時間」であると解釈されます。厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」も、この解釈に沿って策定されています。
いくら就業規則や労働契約などで会社独自の労働時間を定めていても、裁判では通用しません。タイムカードに打刻されていても、使用者の指揮命令下に置かれていなければ、それは労働時間ではありません。 ここを間違えると、裁判で争ったときに大変なことになってしまいます。いま話題となっている「未払い残業代」の問題も、この解釈の違いから発生しています。
朝の掃除は? 研修は? 具体例で理解する「労働時間か否か」の境界線
例えば、朝の掃除や制服に着替える時間、朝礼の時間などは、会社からの指揮命令が「あってもなくても」労働時間に含まれます。
それでは、仕事でのスキルを上げるために研修に参加した時間はどうでしょう? その場合は、会社の命令を受けて参加したのなら労働時間、自発的に参加したものは労働時間に含まれません。 よく問題になるのが、新入社員の歓迎会、送別会、新年会といった会社の飲み会や社員旅行です。これもまた、会社からの指揮命令があれば労働時間に含まれることになります。会社としては「労働時間外に」「自発的に」全員参加して欲しいかもしれませんが、その場合は「強制できない」のです。
出張の移動時間については意見が分かれるところですが、原則として「労働時間ではありません」。移動中は会社の指揮命令下になく、自由に過ごせるからです。ただし、機密書類や物品などを運ぶこと自体が任務である場合などは、例外として扱われます。
もうひとつ、健康診断を受ける場合。健康診断は事業主にとっても労働者にとっても義務ですが、原則的には「労働時間ではありません」。しかし、業務時間中に受診した場合でも賃金は控除しないよう、労働基準監督署は指導しています。
「所定労働時間」と「法定労働時間」の違いから理解する「時間外労働」
「所定労働時間」は会社で定められた労働時間で、労働契約によって異なります。 「法定労働時間」は法律で定められた労働時間で、1日8時間・1週40時間(一部業種では44時間)までとなっています。
原則として、法定労働時間を超えて働かせてはいけないと法律で決まっています。それ以上働かせる必要がある場合には、労使間で36協定を結ばなければなりません。
所定労働時間と法定労働時間の違いをわかりやすく表現したのが、下の図です。
この図は、所定労働時間が7時間である会社の場合ですが、所定労働時間を超えて残業したとしても、法定労働時間(8時間)までは割増賃金がかかりません。法定労働時間を超えると、25%の割増賃金を支払う必要があります。 割増賃金が必要となるのはあくまでも法定外労働時間なのですが、会社によっては所定外労働時間にも割増賃金を払っているケースがあります。残業代がかさんで困っているという企業の皆様は、この辺りをぜひ見直してみてください。
「未払い残業代」などの労働トラブルを防ぐには適正な労務管理が不可欠
通常業務の延長であれ、自宅に仕事を持ち帰る場合であれ、基本的には会社からの指揮命令があれば時間外労働となります。 明らかに納期が切迫している場合は例外で、指示命令がなくても当然やらなくてはならない業務として、時間外労働がカウントされます。ただし、この例外は非常に曖昧な線引きなので、注意が必要です。 終業後の飲み会についても、会社からの指示命令があれば、それは残業となります。