キャッシュフローとは「キャッシュ」と「フロー」を合わせた言葉で、「キャッシュ」は現金、普通預金、当座預金などの資金を、「フロー」はそれら資金の流れを示しています。この考え方を踏まえ、資金の流出を「キャッシュアウト(もしくはキャッシュアウトフロー)」、資金の流入を「キャッシュイン(もしくはキャッシュインフロー)」といいます。
■キャッシュアウトの例
- 給与の支払い
- 家賃の支払い
- 商品の仕入れ金額の支払い(買掛金の支払い)
- 借入金の返済
■キャッシュインの例
- 売掛金(売掛債権)の回収
- 金融機関からの借入
- 株式の発行
キャッシュフローは「キャッシュイン」から「キャッシュアウト」を差し引いた値です。
利益が増えても、キャッシュフローがマイナスであれば資金が不足していることになります。そうなると、長期的な経営が困難となり、倒産のリスクが高くなるのです。このような事態を防ぐために、事業のキャッシュフローを正しく理解し、キャッシュフローを黒字にする必要があります。
キャッシュフロー分岐点売上高とは、事業運営に必要な最低限の売上高を示したものです。損益分岐点売上高が利益をゼロとして計算するものに対し、キャッシュフロー分岐点売上高は、仕入費用、借入金の返済額、経費などを含めた収支をゼロとします。基本的に、キャッシュフロー分岐点売上高は損益分岐点売上高よりも値が大きくなります。
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■発生主義と現金主義
キャッシュフロー分岐点売上高と損益分岐点売上高は、算出時に異なる考え方を用います。キャッシュフロー分岐点売上高は、入金時に収益、出金時に費用を計上する「現金主義」を用いて算出するのに対し、損益分岐点売上高は、入出金のタイミングだけでなく、掛取引などの「経済的事実」が発生した時点で計上する「発生主義」に則って算出されています。
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キャッシュフロー分岐点売上高は、以下で求められます。
(固定費-減価償却費+借入金返済額)÷限界利益率
基本的な計算構造は損益分岐点売上高と同じですが、キャッシュフロー分岐点売上高では現金主義を用いるため、以下の2点を調整しています。
1.固定費、変動費のうち、支出を伴わないものを除く
固定費-減価償却費
2. 費用に計上されない支出を加える
借入金返済額を加える
■キャッシュフロー分岐点売上高の計算例
ある企業の売上高、固定費、変動費を以下とする。
- 売上高:300,000円
- 固定費:130,000円(うち減価償却費20,000円、借入金返済額25,000円)
- 変動費:72,000円
まずは発生主義の場合の値を算出します。
限界利益(売上高-変動費):228,000円
限界利益率(限界利益÷売上高):76.0%
損益分岐点売上高(固定費÷限界利益率)=171,000円(端数切り捨て)
そして、減価償却費(20,000円)と借入金返済額(25,000円)を反映させて調整すれば、キャッシュフロー分岐点売上高を求められます。
キャッシュフロー分岐点売上高
(130,000-20,000+25,000)÷76%=177,000円(端数切り捨て)
上記の計算で、損益分岐点売上高は171,000円、キャッシュフロー分岐点売上高は177,000円であることが明らかになりました。
これにより、売上高が171,000円以上となれば利益は出るものの、177,000円以下であれば資金がショートすることがわかります。事業を安定させるには、売上高が双方の指標を満たしていることが大切です。