監査法人や公認会計士による「会計監査」を毎年受けている会社では、監査期間は少し緊張する経理担当者もいるのではないでしょうか。会計監査は経理部の上長が監査責任者となることが多く、デキる経理担当者になるためには、いつか最前線で対応する必要がある業務のひとつです。そこで今回は、今から知っておきたい会計監査に関わる重要な言葉を解説します。これからのステップアップの参考にしてみてください。
会計監査の重要ワード1「財務諸表監査」
一口に会計監査と言っても、実際には様々な種類があります。その中でも一般的なのが「財務諸表監査」です。その名の通り、財務諸表が正しく作成されているかを検証し、証明することが目的で、上場企業などの大規模な会社では不正防止のために金融商品取引法や会社法で監査を受けることが義務付けられています。一方で中小企業でも、経理担当者が作成した財務諸表の記帳ミスや不正を防いで銀行からの信頼を得るために、財務諸表監査を実施することもあります。
財務諸表監査は、一般的に下記の流れで実施されます。
- 予備調査
- 監査計画の立案
- 監査の実施
- 監査意見の取りまとめ
- 審査
- 監査報告書を提出
監査実務のメインとなる2と3の段階では会社の事業形態や取引状況などを調査して記帳ミスが多そうな箇所を洗い出し、実際に確認していきます。おかしな箇所があると担当者に回答を求められるケースもあるので、経理担当者は「なぜこの金額になったのか」、「なぜ前年度よりも大きく変動があったのか」などを説明できるように準備しておくことが大切です。
会計監査の重要ワード2「監査法人」
一般的に大企業の会計監査は「監査法人」が行います。監査法人は、最低5名の公認会計士で設立が可能な組織です。日本では、以下の大規模な監査法人4社をまとめて「4大監査法人」と呼称しています。
■4大監査法人
- EY新日本有限責任監査法人
- 有限責任あずさ監査法人
- 有限責任監査法人トーマツ
- PwCあらた有限責任監査法人
会計監査の重要ワード3「監査意見」
監査意見とは、公認会計士などの監査人が調査した結果を意見することです。各監査人が発する意見は4種類に決まっており、必ずいずれかを表明しないといけません。
各意見の内容は以下の通りです。
■監査意見の種類
- 無限定適正意見
企業会計基準に従って、調査対象の会社の財務状況が「すべての重要な点において適正」と判断された場合に、無限定適正意見が表明されます。ほとんどの上場企業はこれに該当します。
- 限定付適正意見
一部に不適切な内容があった際、それが財務諸表などの全体で俯瞰したときに重要性がないと判断された場合に、限定付適正意見が表明されます。監査報告書には、不適切な内容の詳細とともに「その事項を除き、すべての重要な点において適正」と記載されます。
- 不適正意見
不適切な内容があり、それが財務諸表などの全体に大きな影響を与えると判断された場合に、不適正意見が表明されます。監査報告書には「適正に表示していない」という記載とともに、その理由が明記されます。上場企業の場合は上場廃止の対象になるなど、非常に重いリスクが伴うことになります。
- 意見不表明
監査証拠や会計記録が不十分など、適正かどうかを判断できなかった際は、意見不表明として監査意見が表明されないことになります。監査報告書には意見不表明の旨とその理由が記載されます。不適正意見と同様、これに該当した場合は経営の信用や信頼性が著しく低下してしまい、上場企業では上場廃止の基準に抵触してしまうことになります。
経理担当者が目指すべきはもちろん「無限定適正意見」という監査人からのお墨付きです。そのためには「監査証拠」の精度を上げることが求められます。
会計監査の重要ワード4「監査証拠」
監査証拠とは、監査人が監査意見を述べるために活用する情報のことです。監査証拠は大きく分けて「会計記録に含まれる情報」と「その他の情報」に分類することができます。
それぞれの例を以下にまとめました。
■監査証拠の種類
- 会計記録に含まれる情報
仕訳帳、総勘定元帳、補助元帳、原価計算資料、請求書、領収書、契約書など
- その他の情報
議事録、ヒアリング、状況証拠など
「会計記録に含まれる情報」には、まさに経理担当者が作成するものが目白押し。いずれも日次業務からミスなく作成することが重要です。また、「その他の情報」には、監査人が上司や同僚にヒアリングをした経理担当者の普段の勤務態度などが反映されることもあります。監査に直接関わることがなくともしっかりチェックされているので、普段から職場での立ち振る舞いも意識しましょう。
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ざっくりわかる会計用語!今回は、会計監査の基本的なワードについて解説しました。直接、監査人の対応をすることはなくても、経理担当者が作る帳簿などはしっかりとチェックされています。監査をスムーズに進めるためにも、まずは日々の業務を正確にこなしていきましょう。そしてステップアップした先に待ち受ける監査人対応のために、しっかり予習しておいてください。