HOME 経営事業計画/経営計画 会計監査の準備不足は命取り!実査で困らないための基礎知識と必須対策
経営事業計画/経営計画 2025/04/15

会計監査の準備不足は命取り!実査で困らないための基礎知識と必須対策

この記事をシェアする

会計監査において、監査人が企業の事業所や倉庫を直接訪問し、実際に資産の存在を確かめる実査は重要な手続きの一つです。
今回の記事では、実査の概要から具体的な進め方、注意すべきポイントまで詳しく解説します。

会計監査とは

会計監査とは、企業や組織の財務諸表や会計書類が適正に作成されているかを確認するために、独立した第三者が行う検証手続きのことです。
監査は、主に公認会計士や監査法人など独立した監査人が実施します。
会計監査は、企業の透明性を高め、投資家やステークホルダーに対する信頼性を確保するために重要な役割を果たします。

※関連記事:三様監査とは?目的によって異なる、会計監査人監査、監査役監査、内部監査の違い


会計監査における実査とは
実査とは、会計監査の一環として、企業が保有する資産が実際に存在するかどうかを直接確認する作業です。
具体的には、監査人が現金などの資産を自らの目で確認し、その数量や内容を精査します。
実査の価値は、単なる帳簿上の確認に留まらず、実際の保有状態を確認することにあります。
これにより、財務諸表の正確性を担保し、企業の信頼性を高める重要な役割を果たしています。
また、定期的に実査を行うことで、企業の資産管理の適正性を維持できます。
このように、実査は企業の財務状況や内部統制を評価するために欠かせない手続きであり、監査人が直接資産を確認することで、より高い監査証拠を得られます。


監査と実査の違い
監査と実査はよく似た言葉で関連するものの、目的が異なります。

  • 監査
    財務諸表が適正に表示されているかを確認すること
  • 実査
    企業が保有する資産が実際に存在するかどうかを直接確認すること

実査の時期
実査は決算日やその前後に実施されることが一般的です。
これは、決算日時点でその資産が実際に存在するかどうか、正確な数量はいくらであるかなどを確認することが重要であるためです。 例えば、9月決算の企業では、9月30日の営業終了後や10月初めに実査を行うことが多くあります。
また、監査人が必要と認めた場合には、予告なしに実査を行うこともあります。


実査の対象となるもの
実査の対象には、主に企業が保有する現物資産が挙げられます。
具体的には、以下の通りです。
実査の対象となるもの 内容
現金 企業が保有する現金そのもの
預金通帳・証書 銀行に預けている資金を示す書類
受取手形 取引先から受け取った手形
有価証券 株券や債券など、金融市場で取引可能な証券
有形固定資産 土地や建物、機械設備など
会員権 ゴルフ会員権など
絵画や貴金属 美術品や金、銀などの貴金属
このうち、現金・預金証書・受取手形・有価証券など換金性の高い流動資産については、時期が異なると流用や不正が起こるリスクが高まるため、できるだけ同時に確認が行われます。
仕訳チェックの自動化で監査をサポート
MJS AI監査支援

財務報告書の作成に必要な月次監査業務を効率的に行うための支援システムです。入力作業の自動化・エラーチェック・検出の作業などを支援し、監査時間の短縮や業務の効率化を可能にします。

詳しく見る

会計監査で実査を行うときの具体的な進め方

企業担当者が実査の当日行うべきことを、流れに沿って具体的に解説します。


STEP1:資料と対象資産を監査人に提出する
監査人が到着したら、依頼に応じた資料と対象資産を同時に提出します。
例えば以下のような資料や対象資産を求められることが多いでしょう。

提出資料
  • 現金内訳表
  • 現金補助元帳
  • 試算表 など
対象資産
  • 現金
  • 受取手形
  • 預金通帳
  • 切手・収入印紙 など
提出後、監査人は帳簿の記載内容と実際の資産額が一致しているかを確認し、不自然な資産増減がないかを精査します。
このステップで重要なのは、企業の経理担当者が必ず同席することです。
現金などの現物を監査人が直接扱うため、立ち合いによって紛失や残高不一致などのトラブルを未然に防ぎます。


STEP2:会社の管理体制が審査される
実査の次のステップでは、提出された実査対象物をもとに企業の資産管理の状態が詳細に検討されます。
監査人は金庫や倉庫などを精査し、以下の点を確認します。

  • 本来資産計上すべき資産が漏れていないか
  • 預かり資産の管理が適切か
  • 金庫や倉庫の鍵は誰がどのように管理しているか
これらの確認を通じて、資産管理の網羅性と適切性が総合的に評価されます。
また、企業所有外の現金などを預かり保管している場合、追加の調査が必要となる場合があります。
監査人はその預かり理由の合理性を検証し、適切に管理されているかチェックします。


STEP3:監査人から講評を受ける
実査の最終段階として、監査人による講評が行われます。
この講評は通常、監査報告書に基づいて行われ、企業が遵守すべき会計基準や法令について再確認する重要な機会です。
資産の管理体制や企業内部の手続きなどに不適切な点が認められた場合は、この段階で具体的な指摘が入ります。

講評では、財務諸表の適正性に関する意見だけでなく、企業の内部統制や会計処理の改善点についても指導が行われます。
企業側は指摘事項を真摯に受け止め、次回の監査に向けて、より高い透明性と信頼性を目指して業務改善していくことが求められます。
仕訳チェックの自動化で監査をサポート
MJS AI監査支援

財務報告書の作成に必要な月次監査業務を効率的に行うための支援システムです。入力作業の自動化・エラーチェック・検出の作業などを支援し、監査時間の短縮や業務の効率化を可能にします。

詳しく見る

会計監査で実査をスムーズに進めるための対策

実査をスムーズに進めるためには、事前準備をしっかりと行っておくことが重要です。
特に企業担当者が注意すべき点を3つ解説します。


帳簿上の残高と実際の残高が合うか確認しておく
実査前に、帳簿上の残高と実際の残高に差異がないかを確認しておきます。
数字が合わない場合はその原因を突き止め、記帳ミスがあれば速やかに訂正しましょう。
実査時に会計上の残高が一致しない場合には、監査上重大な問題となる可能性があります。
そのため、十分な余裕をもって事前確認を行いましょう。


固定資産の実査は現物台帳を準備する
固定資産の実査では、現物台帳を用意しましょう。
現物台帳とは、企業が保有する資産の状況や状態を記録する帳簿です。
固定資産に関する帳簿には固定資産台帳もありますが、実査には現物台帳を使用するのが望ましいとされています。
2つの台帳には、以下のような違いがあります。

台帳名 概要 記載内容
現物台帳
  • 企業が保有する資産の状況や状態を詳細に把握するための管理表
  • 物理的な資産に関する情報を記録する
  • 資産番号
  • 資産の保管場所
  • 使用者や管理部門
  • 出し入れの履歴 など
固定資産台帳
  • 企業が所有する固定資産の価値を記録・管理するための帳簿
  • 主に財務報告や税務申告のために使用される
  • 資産の取得価額
  • 耐用年数
  • 減価償却の状況
  • 資産の種類
  • 使用場所 など
上記のように、固定資産台帳は主に簿価や減価償却の計算を目的としたもので、実際の物品の情報を管理するための項目が不足しています。
そのため、現物台帳を用意することで、実査時に資産の保管場所や利用状況を迅速に確認でき、監査人とのコミュニケーションがスムーズになります。


実査が行われる旨を関係者に伝えておく
実査がスムーズに進むよう、関連部門への周知も忘れないようにしましょう。
実査では、原則として対象物が同時に検査されます。
そのため、たとえば会計士による実査時に、対象物が持ち出されていると、実査ができないといった問題が生じることがあります。
また、当日に使用予定の切手や収入印紙を担当者が持っている状態だと、帳簿残高と実際残高が一致しないなどのケースが起こる場合もあります。
実査の流れやタイムスケジュール、必要な準備物などを明確に伝え、スムーズに実査を進行できるように心がけましょう。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
仕訳チェックの自動化で監査をサポート
MJS AI監査支援

財務報告書の作成に必要な月次監査業務を効率的に行うための支援システムです。入力作業の自動化・エラーチェック・検出の作業などを支援し、監査時間の短縮や業務の効率化を可能にします。

詳しく見る
**********

会計監査における実査は、企業の財務透明性と信頼性を高める重要な手続きです。
実査では、事前準備を適切に行うことで、監査人とのコミュニケーションがスムーズになり、より効果を発揮すると考えられます。
適正な実査を通じて企業の透明性を高め、ステークホルダーからの信頼獲得につなげていきましょう。

人気記事ランキング - Popular Posts -
記事カテゴリー一覧 - Categories -
関連サイト - Related Sites -

経理ドリブンの無料メルマガに登録