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経理/財務公認会計士の仕事術 2025/03/19

第24回 「プロセス思考」で転んでもただでは起きない(その15)

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前回は、プロセス思考の5thステップのその1として発生した問題を業務改善につなげていくための説明をしました。今回は、プロセス思考の5thステップのその2として、もう少し視野を広げて改善すべきポイントを考える必要性について説明していこうと思います。

1.はじめに

仕事をしていく中では、時として問題が発生することもあります。問題なんて起きない方がいいのかもしれませんが、本稿を通じてご紹介している仕事術「プロセス思考」を知っていると、実際に問題が発生したとしても、そのマイナス要因を業務改善のチャンスに変えることもできるのです。
本稿ではここまで、プロセス思考のステップのうち、問題の発生原因を特定していくステップに相当する4つのステップを説明してきました。

【1stステップ】ザックリとプロセスをつかむ

【2ndステップ】起こりがちな問題のパターンを押さえておく

【3rdステップ】起こりがちな問題をプロセスと紐づける

【4thステップ】問題が起きやすいプロセスが持つ弱点を押さえておく


そして前回からは、発生した問題を業務改善につなげていくためのステップについて説明しています。

2.ケースで考える プロセス思考のステップ(5thステップ-その2)

発生した問題を業務改善につなげていくためには、問題の発生原因の特定から出てきた改善ポイントを整理し、改善案を検討する必要があります。前回は、その際に役立つ方法の1つを取り上げて説明しました。それは、チェックリストを使って「整備面や運用面の弱点」を追及した結果、「No」となった項目、すなわち弱点がある項目について、それを「Yes」に変える良い方法がないかを考えてみるという方法でした。
ただし、場当たり的な改善にならないようにするためには、もう少し視野を広げて改善すべきポイントを考える必要があるのです。
そこで今回は、前回取り上げたケース(前回の【シーン1(T社のケース)】を参照)を前提に、これらの点について説明していくことにしましょう。

まずは前回の【シーン1】を振り返ってみます。【シーン1】では、チェックリストを使って「整備面の弱点」を追及した結果、購買部門における入荷プロセスについて、ルール面でいろいろとあいまいなところがあり、それを明確にするような見直し案を考えてみました。


【図表1】チェックリストを使った「整備面の弱点」の追及(入荷プロセスの購買部門部分)
項目 Y N 状況についてのコメント 見直し案
1 When(時期)に関する適切なルールがあるか? 購買部門では、「納品書」を「注文書」と照合することになっているが、それをいつ(いつまでに)実施するのかという時期に関するルールは特に定まっていない。 □いつまでに実施するか?
→3営業日以内
2 What(元資料)に関する適切なルールがあるか?   「納品書」を「注文書」(元資料)と照合することになっている。
3 Who(人)に関する適切なルールがあるか? 担当者は定まっている。
4 How(手段)に関する適切なルールがあるか? 購買部門では、「納品書」を「注文書」と照合することになっているが、具体的なやり方が定まっていない。どの項目を照合するのか、全件照合するのかサンプルで照合するのか、照合した証跡はどのように残すのか、不一致だった場合はどうするのかなども定まっていない。

□どの項目を照合するか
→品番(商品名)、数量他


□全件照合するのかサンプルで照合するのか
→全件照合


□照合した証跡はどのように残すのか
→照合日・照合者印を押印

5 Why(趣旨)の考慮がされているか? (省略) (省略)
6 How Much(コスト対効果)の考慮がされているか? (省略) (省略)

しかし、弱点を追及し、見直し案を考える際に、そうした弱点が特定のプロセスや特定の部署だけのものなのかといった観点からの検討は行われていませんでした。
例えば、購買部門が入荷プロセスにおいて行っている「納品書」と「注文書」との照合業務についてはルールがあいまいなのは確かだとして、同じく購買部門が仕入計上プロセスにおいて行っている「請求書」と「納品書」との照合業務についてもルールがあいまいかもしれません。むしろ、同じ部署内のことですからその可能性が高いとさえ言えるかもしれません。
また、ルールがあいまいなのは、購買部門に限ったことではなく、他の部門にも当てはまることかもしれません。例えば、倉庫部門で行っている商品(現物)と「納品書」の照合業務や、経理部門で行っている「請求書」に基づく仕入計上の際の入力結果の照合業務などでも同様の弱点があるかもしれません。部署は違っても同じ会社内のことですから、同様の弱点があることは十分に考えられることです。
つまり、一連の業務プロセスのどこかで見つかった弱点を、特定のプロセスや特定の部署だけの問題として完結させてしまうのではなく、他のプロセス・他の部署でも同じような弱点がないのかを確認し、弱点があるならその部分についても合わせて改善を検討する、すなわち「横展開」する必要があるということです。
そして、改善案を考える際も、他部署との連携、すなわち「横連携」が必要になることが少なからずあるはずです。
問題が顕在化した部分の改善だけで完結してしまって、「横展開」・「横連携」の視点が抜け落ちていたら、次は別の部分で同じような問題が顕在化することになりかねません。

3.プロセス思考のステップを踏んで、発生した問題を業務改善につなげよう

今回は、プロセス思考の中の5thステップとして、問題の発生原因の特定から出てきた改善ポイントを整理し、改善案を検討する際に忘れてはならない「横展開」・「横連携」の視点について説明しました。整備面の弱点のケースを使って説明しましたが、運用面の弱点についても同様のことが当てはまります。プロセス思考で目指すのは、他の部署のことをブラックボックスのまま終わらせることなく、より意味のある改善につなげていくことです。そのためにも、この「横展開」・「横連携」の視点を意識して頂ければ幸いです。

(提供:税経システム研究所)
**********

いかがでしたでしょうか。今回は、プロセス思考の5thステップのその2として、発生した問題を業務改善につなげ、さらに視野を広げて改善すべきポイントを考える方法ついて説明しました。
次回は、第25回 「プロセス思考」で転んでもただでは起きない(その16)になります。お楽しみに!
なお、このコラムの提供元である税経システム研究所については下記をご参照ください。

税経システム研究所
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