これらの手続きはそれぞれ定められた期限内に行う必要があり、期限を過ぎると従業員の生活や福利厚生に影響を及ぼすだけでなく、企業側に罰則がある場合もあります。
近年ではマイナンバー制度や電子申請の普及により手続き方法が変化しているため、最新情報を確認したうえでの適切な対応が求められます。
保険関連の手続き
保険に関連する手続きは以下の通りです。提出書類 | 提出先 | 期限 | |
---|---|---|---|
社会保険 | 被保険者資格取得届 | 年金事務所 | 従業員が入社した日から5日以内 |
雇用保険 | 雇用保険被保険者資格取得届 | ハローワーク | 従業員が入社した月の翌月10日まで |
労災保険 | 保険関係成立届 | 労働基準監督署 | 最初の従業員が入社した日の翌日から10日以内 |
概算保険料申告書 | 労働基準監督署、都道府県労働局、金融機関のいずれか | 最初の従業員が入社した日の翌日から50日以内 |
社会保険
社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険)とは、企業に勤める従業員が病気やけがなどのリスクに対して備えるための公的な保険制度です。加入義務の基準は企業の規模や従業員の雇用形態により異なっており、株式会社や合同会社などの場合、正社員などの一般労働者は全員社会保険に加入させる必要があります。
一方でパート・アルバイトなどの短時間労働者については、従業員が51人以上の企業の場合のみ、加入義務が発生します。
※関連記事:社会保険の適用拡大とは?従業員数が50人を超えたら要注意!
一般労働者 | 所定労働時間・所定労働日数が正社員の4分の3以上、かつ、契約期間が2カ月以上の人 |
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短時間労働者 | 以下のすべての要件を満たす人
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期限を過ぎても2年以内であれば遡って加入することはできますが、追加の手続きが発生したり、未加入の時期にトラブルが発生したりする場合があるため、早めに対応する必要があります。
※参考資料:日本年金機構「従業員を採用したとき」
雇用保険
雇用保険とは労働者が休職・失業した際に給付が行われる公的保険です。従業員の加入基準は「週の所定労働時間が20時間以上、かつ31日以上継続して雇用される見込みがある人」とされており、企業側が加入手続きを行う必要があります。
社会保険に加入させるためには、原則として従業員が入社した月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出します。
パート・アルバイトなどの従業員を雇用する際には、加入基準を満たしているかどうか確認することが重要です。
※参考資料:厚生労働省「事業主の行う雇用保険の手続き」
労災保険
労災保険とは正式名称を「労働者災害補償保険」といい、仕事や通勤が原因で従業員が負傷した場合などに給付が行われる公的保険です。労災保険は従業員ごとの加入ではなく企業自体が加入するものであり、従業員が1人でもいる場合は雇用形態に関係なく加入する必要があります。
初めて従業員を雇ったとして新たに労災保険に加入する場合、原則として従業員の入社日の翌日から10日以内に「保険関係成立届」を労働基準監督署に提出します。
また、労災保険は概算の金額を事前に納めるため、「概算保険料申告書」を作成し、50日以内に提出・納付する必要があります。
なお、1度加入すれば、従業員を雇用した際に毎回加入手続きをする必要はありません。
※参考資料:厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー (労働保険適用・徴収関係主要様式)」
税金関連の手続き
税金に関連する手続きは以下の通りです。提出書類 | 提出先 | 期限 | |
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所得税 | 提出物なし(従業員から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を回収) | ||
住民税 | 特別徴収切替届出書 | 従業員の居住する市区町村 | 各自治体の規定に従う |
所得税
所得税は、原則給与から天引きで源泉徴収されます。従業員が入社した際は、毎月の給与の源泉徴収税額から各種控除を受けるために「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらう必要があります。
この申告書は年末調整をするためにも必要なので、必ず提出してもらいましょう。
また、従業員が以前の職場から退職した年に再就職で入社した場合は、以前の勤務先から「給与所得の源泉徴収票」を提出してもらいます。
住民税
住民税については、企業が従業員の給与から天引きし、本人の代わりに従業員の住所地となる市区町村に納付する特別徴収という制度があります。特別徴収を適用する場合、「特別徴収切替届出書」を従業員の居住する市区町村へ提出します。
提出期限は各自治体で定められているため、従業員入社後速やかに確認しましょう。
これまで自身で納税していた従業員が入社を機に特別徴収への切り替えを行う場合も、この手続きが必要です。
また、前職で特別徴収が適用されていた従業員が転職後も特別徴収を継続する場合は、以前の職場から「給与所得者異動届出書」を発行してもらい、必要事項を追記のうえ従業員の居住する市区町村へ提出します。
なお、住民税は前年度分を翌年6月から1年間で後払いをする方式であり、新卒者など過去に所得がない従業員の場合、特別徴収は入社2年目からとなるため、入社時の手続きは不要です。
複雑な支給形態を網羅!勤怠管理などのシステムとも連携することで、給与・賞与計算を自動化できます。また、従業員のあらゆる情報を適切に管理することで、組織の人的資源を最大限に活用することができます。