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業務全般制度改正 2025/02/04

法定調書の電子申告による提出義務の基準が30枚に!2025年に確認しておきたい新ルールとは

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法定調書の電子申告による提出義務の基準が変わり、2025年の提出枚数次第ではこれまで対象外だった多くの中小企業で電子申告の対応が求められます。
今回の記事では、法定調書の電子申告における改正の概要や実務での対応手順など、実務対応者の目線で解説していきます。

電子申告による法定調書提出義務の基準変更と判定方法

2027年1月以降の提出分から、法定調書の電子申告による提出義務の基準が大きく変わります。
法定調書とは、「所得税法」、「相続税法」、「租税特別措置法」、「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」により、税務署への提出が定められている資料のことです。
現在63種類ありますが、代表的なものは以下の通りです。

  • 給与所得の源泉徴収票
  • 退職所得の源泉徴収票
  • 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
  • 不動産の使用料等の支払調書
  • 不動産等の譲受けの対価の支払調書
  • 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
これまでの法定調書の提出は、前々年(2年前)の提出枚数が種類ごとに100枚以上となった場合、e-TaxやCD・DVDなどの光ディスクを利用した電子申告が義務とされてきました。
この判定枚数「100枚以上」が、2027年1月以降提出分からは「30枚以上」に変更されます。
つまり、2025年中に提出する法定調書の枚数が30枚以上となった場合は、2027年に提出する法定調書は電子申告によって提出する必要があるのです。
この基準改正により、法定調書を電子申告する企業の範囲は大幅に拡大すると考えられており、特に中小企業において新たに電子申告が必要となるケースが多く発生すると予想されています。

※参考資料:国税庁「法定調書のe-Tax等による提出義務化の概要について


具体的な判定方法
提出義務の判定方法について、実務上以下の点が重要となります。

前々年の提出実績で電子申告による提出義務を判定する
電子申告による法定調書の提出義務は、前々年の法定調書の提出枚数で決まります。
例えば、2027年に提出する法定調書については、2025年の提出実績が基準となります。
つまり2025年の提出枚数が30枚以上であれば、2027年の提出では電子申告が必須となるのです。
判定基準の年が前々年となっていることについては、企業側の準備期間を十分に確保するという意図が含まれています。
2025年の提出枚数が決まった時点で、企業は2027年提出時までの期間を電子申告に向けた準備に費やすことができます。

法定調書の提出義務者ごと、法定調書の種類ごとに判定する
電子申告による法定調書の提出義務の判定は、法定調書の提出義務者ごと、法定調書の種類ごとに行うことが可能です。
例えば、管轄する税務署が異なる複数の支店を持つ企業の場合、給与所得の源泉徴収票は支店ごとに異なった枚数提出していることが想定されます。
A支店が40枚、B支店が20枚の源泉徴収票を、それぞれ異なる管轄税務署に提出していた場合、会社全体では法定調書が60枚となり30枚を超えますが、提出義務者ごとの判定となるため、A支店のみが電子申告よる提出義務を負うことになります。
なお、A支店が源泉徴収票とは別に25枚の報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書を提出していた場合、法定調書の種類ごとの判定となるため、30枚以下となる支払調書については従来通り書面での提出が可能です。
上記の通り、判定は少し複雑であるため、特に法定調書の種類が多い企業では注意が必要です。

※参考資料:国税庁 質疑応答事例「e-Tax又は光ディスク等による法定調書の提出義務


改正による注意点
従業員数の少ない中小企業も対象となる
今回の基準の変更により、従業員の少ない中小企業やこれまで電子申告が義務付けられていなかった小規模事業者も、法定調書の電子申告が必要となる可能性があります。
給与所得の源泉徴収票については、従業員一人につき年1枚の提出が必要となるため、従業員数と源泉徴収票の枚数がほぼ一致する正社員中心の雇用形態を取る企業では、対応の見通しが立てやすい傾向にあります。
一方で、パート・アルバイトを多く雇用する小売業やサービス業では、従業員の入れ替わりが多いため、提出する源泉徴収票と期末の従業員の数が一致しない可能性が高く、注意が必要です。

給与支払報告書も電子申告による提出が必要
国税で給与所得の源泉徴収票における電子申告が義務付けられた場合には、市区町村への給与支払報告書の提出も電子申告が義務付けられているため、注意が必要です。
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法定調書の電子申告の方法

法定調書の電子申告には、e-Tax、eLTAX、光ディスク、クラウドサービスなどを利用する方法があります。


e-Tax
e-Taxは国税庁が運営している国税の電子申告・納税システムです。
無料で利用可能ですが、利用者識別番号を取得し電子証明書を用意するなど、事前準備が必要となります。
e-TaxにはWeb版とソフト版がありますが、企業で使用する際はすべての法定調書を作成・提出できるソフト版を利用するのが望ましいでしょう。


eLTAX
eLTAXは地方税共同機構が運営する地方税の申告システムで、正式名称を「地方税ポータルシステム」といいます。
給与支払報告書など、地方公共団体への申告の際はeLTAXを利用することになりますが、e-Taxと同様、利用者IDを取得するなどの事前準備が必要となります。
なお、eLTAXには「電子的提出の一元化」と呼ばれる機能があるため、eLTAXを通じて市区町村に給与支払報告書を提出すると、税務署への源泉徴収票も作成・提出できるようになっています。


光ディスク
光ディスクはCDやDVDなどを指します。
法定調書が大量にある場合、e-Taxでは提出がうまくいかないことがあるため、その際は光ディスクにデータを保存して提出することも認められています。


認定クラウドサービス
認定クラウドサービスとは、国税庁が法定調書の提出に利用することを認定したクラウドサービスのことです。
国外財産調書や財産債務調書を除くすべての法定調書の電子申告に対応しています。

※参考資料:国税庁 質疑応答事例「クラウドサービス等を利用した法定調書の提出について
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実務の進め方

今回の改正に対応するために、企業担当者はまず、自社が2027年に法定調書の電子申告による提出を行う必要があるかを確認する必要があります。
これまで電子申告による提出の義務がなかった企業については、過去の法定調書の提出実績から基準を満たしているかどうかをある程度予測することができるでしょう。
この際、単に総数を確認するだけでなく、支社ごとの提出状況や、法定調書の種類別の内訳まで把握することが重要です。
さらに従業員の増減傾向も考慮し、2025年中に提出枚数が30枚以上となる法定調書を特定しておくと、その後の対応がスムーズになります。

2027年に新たに電子申告による提出が必要となった場合、e-Taxを利用するか、認定クラウドサービスを利用するかなどの判断が必要になります。
e-Taxは基本的な機能が無料で利用できますが、継続的に利用するのであれば認定クラウドサービスの利用や市販の会計ソフトと組み合わせた方法を検討した方がよい場合もあるでしょう。
利用ソフトの選択にあたっては、企業規模や業種に応じた検討が必要ですが、会計データや給与計算システムとの連携が可能であれば業務効率の向上も図ることができます。

また、これまで紙で実施していた提出作業を電子化することで実務の運用フローが変化するため、担当者間での認識合わせや手順の整理についても事前に行っていくことが大切です。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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2027年から改正される法定調書の電子申告による提出義務化は、2025年の提出枚数が判断基準となるため、今からいかに準備できるかが鍵となります。
利用可能な電子申告の方法を理解して自社に合った手段を選択し、計画的に対応を進めましょう。

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