法定調書とは、「所得税法」、「相続税法」、「租税特別措置法」、「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」により、税務署への提出が定められている資料のことです。
現在63種類ありますが、代表的なものは以下の通りです。
- 給与所得の源泉徴収票
- 退職所得の源泉徴収票
- 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
- 不動産の使用料等の支払調書
- 不動産等の譲受けの対価の支払調書
- 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
この判定枚数「100枚以上」が、2027年1月以降提出分からは「30枚以上」に変更されます。
つまり、2025年中に提出する法定調書の枚数が30枚以上となった場合は、2027年に提出する法定調書は電子申告によって提出する必要があるのです。
この基準改正により、法定調書を電子申告する企業の範囲は大幅に拡大すると考えられており、特に中小企業において新たに電子申告が必要となるケースが多く発生すると予想されています。
※参考資料:国税庁「法定調書のe-Tax等による提出義務化の概要について」
具体的な判定方法
提出義務の判定方法について、実務上以下の点が重要となります。前々年の提出実績で電子申告による提出義務を判定する
電子申告による法定調書の提出義務は、前々年の法定調書の提出枚数で決まります。例えば、2027年に提出する法定調書については、2025年の提出実績が基準となります。
つまり2025年の提出枚数が30枚以上であれば、2027年の提出では電子申告が必須となるのです。
判定基準の年が前々年となっていることについては、企業側の準備期間を十分に確保するという意図が含まれています。
2025年の提出枚数が決まった時点で、企業は2027年提出時までの期間を電子申告に向けた準備に費やすことができます。
法定調書の提出義務者ごと、法定調書の種類ごとに判定する
電子申告による法定調書の提出義務の判定は、法定調書の提出義務者ごと、法定調書の種類ごとに行うことが可能です。例えば、管轄する税務署が異なる複数の支店を持つ企業の場合、給与所得の源泉徴収票は支店ごとに異なった枚数提出していることが想定されます。
A支店が40枚、B支店が20枚の源泉徴収票を、それぞれ異なる管轄税務署に提出していた場合、会社全体では法定調書が60枚となり30枚を超えますが、提出義務者ごとの判定となるため、A支店のみが電子申告よる提出義務を負うことになります。
なお、A支店が源泉徴収票とは別に25枚の報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書を提出していた場合、法定調書の種類ごとの判定となるため、30枚以下となる支払調書については従来通り書面での提出が可能です。
上記の通り、判定は少し複雑であるため、特に法定調書の種類が多い企業では注意が必要です。
※参考資料:国税庁 質疑応答事例「e-Tax又は光ディスク等による法定調書の提出義務」
改正による注意点
従業員数の少ない中小企業も対象となる
今回の基準の変更により、従業員の少ない中小企業やこれまで電子申告が義務付けられていなかった小規模事業者も、法定調書の電子申告が必要となる可能性があります。給与所得の源泉徴収票については、従業員一人につき年1枚の提出が必要となるため、従業員数と源泉徴収票の枚数がほぼ一致する正社員中心の雇用形態を取る企業では、対応の見通しが立てやすい傾向にあります。
一方で、パート・アルバイトを多く雇用する小売業やサービス業では、従業員の入れ替わりが多いため、提出する源泉徴収票と期末の従業員の数が一致しない可能性が高く、注意が必要です。
給与支払報告書も電子申告による提出が必要
国税で給与所得の源泉徴収票における電子申告が義務付けられた場合には、市区町村への給与支払報告書の提出も電子申告が義務付けられているため、注意が必要です。法人税・消費税の申告書や法定調書、決算内訳書、各種申請・届出書の作成から国税・地方税の電子申告までをフルサポート。給与システムとの連携で、法定調書の電子申告も確実でスピーディに!