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ITDX 2024/08/27

AIに仕事を奪われるのは本当?AI時代の到来で経理担当者がより飛躍するために獲得したいスキルとは

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近年、「AI」という言葉を日常的に耳にするようになり、ビジネスの世界でもその導入が進んでいます。
経理部門においても、会計ソフトの進化に続き、AIが新たな変革をもたらそうとしています。
AIは万能ではありませんが、それを理解し、「頼れるパートナー」として活用することで、経理担当者はより高度な業務に集中できるようになります。
本記事では、AIによる経理業務の内容について説明したうえで、AI時代に求められるスキルについて解説します。

経理業務に活用されるAIの現状

「AIって具体的に何ができるの?」、「AIは本当に経理業務に役立つの?」という疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
まずは、AIをどのように経理業務に活用することができるのか具体例を見ていきましょう。


入力作業を効率化するAI-OCRによる自動仕訳
領収書や請求書の処理など、経理業務には膨大な量の入力作業が発生します。
この作業は正確性を求められる一方、単調で時間を取られる一面もあることから、多くの経理担当者を悩ませてきました。
しかし、画像から文字を自動で認識してデータ化するOCR(光学的文字認識)技術に、AIを搭載したものが登場したことで、この状況は大きく変わりつつあります。
AI-OCRは、従来のOCRでは難しかった手書き文字の認識や、複雑なレイアウトの書類に対しても読み取り精度が大きく向上しています。
この技術を活用すれば、自動でデータを読み取って仕訳まで行うことも可能となります。


AI検知による不正会計の防止
AIは、膨大なデータの中から不正の疑いがある取引を検知する能力も持っています。
例えば、AIに過去の不正取引データや、通常とは異なる取引パターンなどを学習させれば、リアルタイムで不正リスクを分析しアラートを上げることもできます。


経営サポートを行うAIによる予算策定・分析
予算策定は、企業の将来を左右する重要な業務であるにもかかわらず、従来の方法では過去のデータや担当者の個人的な経験に頼らざるを得ず、精度の高い予測が難しいという課題がありました。
AIを活用すれば、過去の売上データや市場トレンド、外部要因などを加味したうえで、より精度の高い需要予測や売上予測が可能になります。
これにより、予算策定や、データに基づいた経営判断もスムーズに行えると考えられます。

※関連記事:生成AIでバックオフィス業務が変わる今、経理・人事担当者が知っておきたい生成AIのキホン

経理担当者に求められる役割と必要なスキル

AIにより、経理担当者の仕事がなくなるのではないかと不安を感じている方もいるかもしれません。
確かに、単純作業はAIに代替される可能性がありますが、その反面「人間ならではの業務」がこれまで以上に重要になってきます。
「人間」が、AIをツールとして活用し、その能力を最大限に引き出すことで業務の質が大きく向上します。


AI時代に経理担当者が求められる役割
AIを活用した業務では、経理担当者は以下のような役割を求められることになるでしょう。

AIが出力したデータの分析
AIは、大量のデータからその時必要となる情報を見つけ出してくることができます。
その結果を解釈し、ビジネスに活かしていくためには、人間による分析力が必要です。
経理担当者には、AIが出力したデータを理解したうえで問題点や改善点を発見するという役割が求められます。

未来を見据えた戦略的な思考と判断
AIは、過去のデータに基づいて最適な答えを導き出すことは得意ですが、未来予測や創造的なアイデアを生み出す点においては限定的となります。
経理担当者は、業務を通じて企業の成長戦略やリスク管理などに関する未来を見通す力を身に付け、AIを補完するような戦略的な視点を持つ必要があります。

人とAIをつなぐコミュニケーション
AIが出力した結果を経営層や他の部署にわかりやすく説明し、理解を得るための対応を行うことも経理担当者の重要な役割となります。
AI時代においても、コミュニケーション能力の重要性は変わりません。
むしろ、AIを使いこなすためには、人間の判断力などが重要になってくるという点から、これまで以上に高いコミュニケーション能力が求められることになるともいえるでしょう。


これからの経理担当者に必要なスキル
このように、AIの進化によって、経理担当者に求められる役割は変化しつつあります。
膨大なデータ入力や単純作業に時間を割かざるを得なかった時代から、AIを活用することで、より高度な分析や戦略立案に集中できる時代に突入しているのです。
この変化を恐れずに、積極的にスキルアップに取り組めば、経理担当者が活躍できる場は拡大するでしょう。
例えば以下のようなスキルを身に付けることが有効と考えられます。

データ分析のための環境作成
AIが出力したデータを分析するためには、目的に併せてデータを加工する必要があります。
その際、グラフやチャートを用いてデータを可視化することで、隠れている傾向やパターンを発見しやすくなります。
例えば、Excelの基本的な関数やグラフを使えば、効率的にデータを整理することができます。
さらにピボットテーブルやVLOOKUP関数などを使いこなせるようになれば、より分析しやすい環境を作り上げられるでしょう。

基本的なデータ分析
データ分析を行う際、平均値、分散、相関関係など、統計学の基本的な知識を学ぶことで、有意な情報を導き出すことができるようになります。
さらに高度な分析に挑戦してみたい場合は、機械学習やプログラム言語、データベース言語の知識も役に立ちます。
興味があれば学んでみるとよいでしょう。

経営判断や戦略立案
財務や経営に関する知識や学びを深めることで、的確な経営判断や戦略立案を行うことができるようになります。
MBAや関連する資格の取得を目指したり、専門書籍を読んだりするほか、オンライン講座やセミナーなども活用して積極的にスキルアップを目指しましょう。

コミュニケーション能力
分析結果や提言を分かりやすく説明するためにはプレゼンテーションスキルを磨くことが重要です。
データに基づいた論理的な説明と視覚的な資料を用意するだけでなく、相手が理解しやすい言葉遣いや表現を使うことも大切です。

AIの活用
AIを効率よく活用するために、ユーザーとして必要な知識を学ぶことも有効です。
AIができることとできないことをより実践的に落とし込むことで、自身がどのように取り組むべきかイメージしやすくなります。
AIベンダーやITコーディネーターに相談し、具体的にどのような知識を優先的に身につけるべきか聞いてみるのも良いでしょう。

このように、業務にAIを取り入れても、経理担当者が取り組むべき内容はたくさんあります。
積極的にスキルアップに取り組むことで、経理担当者としてより充実したキャリアを築くことが可能になります。

AIによる経理業務自動化の課題と展望

AI技術は日々進化を続けていますが、現時点ではまだ課題も残されています。
例えばAI-OCRにおいては、手書き文字や複雑なレイアウトの書類に対しても読み取り精度が大きく向上しているものの、100%というわけではなく、状況によってはうまく読み取れない場合もあります。
また、AIによる不正検知は、あくまでも「疑いのある取引」を検知するだけであり、それが必ずしも不正であるとは限りません。

今後、AI技術がさらに進化することで、これらの課題も解決されていくことが期待されていますが、いずれにしても最終的な判断は人間が行うことになるでしょう。
経理業務へのAI活用は、単なる業務効率化だけではなく、不正リスクの低減や経営判断のスピードアップなど、企業に多くのメリットをもたらします。
AIは「仕事を奪う脅威」ではなく、「業務を効率化し、より創造的な仕事に集中するためのツール」と捉えれば、経理担当者にとっての「心強い味方」となります。
積極的にAIを受け入れ、自身の業務の在り方も変えていくことで、経理担当者は企業にとってより不可欠な存在となるでしょう。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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AIは経理業務の効率化と正確性の向上を実現し、人が行う業務を高度な分析や戦略立案へと導きます。
AI時代を生き抜くには、常に学び続け、AIを活用する視点を持つとともに、人間ならではの強みを磨くことが重要です。
脅威ではなく、より創造的でやりがいのある仕事を生み出すパートナーとしてAIと向き合っていくことで、自身と企業の成長につながるでしょう。

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