例によって新米経理の理子と営業部の吉田経男が言い争いをしている。もはや、犬猿の仲といった二人である。
どうやら、言い争いの種は経費精算のようだ。
コンビニでペンやノートなどの文房具を購入した吉田、レシートでの精算を頼んでいるのだが、理子は断固として応じないのだ。精算は領収書との引換えをもって行うべし。
前任者で経理の師匠でもある会田計造の教えを忠実に守っている。
というより、ようやく経理担当としてひとり立ちした気負いと生来の負けん気が態度を硬化させているだけなのかもしれないのだが。
一転して懐柔策に出た吉田だが、まったく歯が立たない。真面目なのはいいことだが、その融通の利かなさに怒りが沸いてくる吉田である。
と、その時、どこからともなく重厚な太鼓が鳴り響き、鬱蒼とした霧に包まれた仙人が舞い降りてきた。
「やったー!」と吉田はガッツポーズ。対照的に理子はがっくりとうなだれる。
◯購入した年月日
◯購入したお店や企業の名前
◯購入した物品やサービス名
◯購入金額
1週間後。営業部の吉田が足早に経理部を訪れ、理子に経費精算を頼んでいる。おなじみの光景である。しかし、理子の目はキラリと光る。
手には吉田に渡された領収書。高級寿司店での食事代3万円となっている。