2020年も後半に差し掛かり、そろそろ年末調整の準備を始めるという経理担当者もいるのではないでしょうか。特に今年は新型コロナウイルスの影響もあり、従業員からどのように必要書類を回収するか気がかりな人も多いと思います。さらに、2020年度の年末調整は、税制改正により「個人所得課税」が変わったことで、所得税の計算が大きく変わります。
今回は、年末調整に影響する税制改正のポイントを解説します。
基礎控除額の改定
年末調整・確定申告にて個人の所得税額を算出する際、総所得金額などから差し引く控除の一つが「基礎控除」です。基礎控除は、所得控除のように一定の要件に対して適用されるもので、これまで控除額は一律38万円と決まっていました。しかし2020年度からは個人の合計所得金額によって変動するようになります。
■2019年からの基礎控除の変更点
合計所得金額 |
基礎控除額 |
2019年 |
2020年 |
2,400万円以下 |
38万円 |
48万円 |
2,400万円超~2,450万円以下 |
32万円 |
2,450万円超~2,500万円以下 |
16万円 |
2,500万円超 |
0万円 |
※出典:
国税庁「基礎控除」
このように、高所得者になるほど基礎控除の額が少なくなります。中小企業の場合、社員の多くは2,400万円以下に該当すると考えられるため、基本的に38万円から48万円に基礎控除額が増えることになります。
給与所得控除額の改定
従業員などの給与所得者に適用される給与所得控除は、年収に応じ、「給与等の収入金額」から差し引いて算出されます。これについて、2020年度からは控除額が適用される最低額が10万円引き下げられます。
■2019年からの給与所得控除の変更点
給与等の収入額 |
給与所得控除額 |
2019年 |
2020年 |
180万円以下 |
収入金額×40%
※65万円に満たない場合は65万円
|
収入金額×40%-10万円
※55万円に満たない場合は55万円
|
180万円超~360万円以下 |
収入金額×30%+18万円 |
収入金額×30%+8万円 |
360万円超~660万円以下 |
収入金額×20%+54万円 |
収入金額×20%+44万円 |
660万円超~850万円以下 |
収入金額×10%+120万円 |
収入金額×10%+110万円 |
850万円超~1,000万円以下 |
195万円(上限) |
1,000万円超 |
220万円(上限) |
※出典:
国税庁「給与所得控除」
控除の減額は結果的に増税に当たるため、給与所得控除の面では増税されたことになります。基礎控除額の面で減税されたことと合わせれば、両者を合わせて相殺されていると言えるでしょう。ただし合計所得が850万円を超える人の場合は、控除額に195万円の上限が設けられています。そのため、全体的に高所得の人に負担が大きくなるような増税傾向であると言えます。
所得金額調整控除の新設
2020年の年末調整から実質的に税負担が増える、収入が850万円を超える人への救済として、子育てや介護に対する所得金額を調整する制度が新設されています。
■所得金額調整控除の対象者
- 納税者本人が特別障害者
- 23歳未満の扶養親族
- 特別障害者である同一生計配偶者もしくは扶養家族
上記1~3のいずれかに該当する場合「{給与等の収入金額(上限1,000万円) - 850万円}×10%」の計算で算出される金額を所得金額から控除することが可能になります。給与等の収入金額が1,000万円を超える際は、1,000万円での計算となるので注意してください。
複雑化する年末調整には電子ツールで対応
毎年、年末調整に関わる控除額等や申告書の様式は細かく変更されることが多く、その度に経理担当者が変更点をチェックし、対応するのは大きな負担です。特に2020年は新型コロナウイルスの影響でリモート作業が推進されているなど、例年と同じようにいかない状況にあります。
さらに2020年度は国税庁が「年末調整手続の電子化に向けた取組」を発信しており、従業員個人が社内の担当者を通さず、インターネット上で必要書類を取得できるような環境も整い始めました。
そのため、これまで紙で申告を行っていた企業も、上記のような状況に対応した電子ツールを導入するケースが増えています。
年末調整ツールは多種多様ですが、どのツールを使用するか検討する際にポイントとなるのが、クラウド型かどうかです。クラウド型はデータをインターネット上で管理できるため、従業員がどこにいてもPCやスマートフォンからアクセスできるほか、担当者も進捗管理や必要書類の回収を効率よく行うことができます。さらに前年度の書類を流用できる機能や、電子申告時に利用する国税電子申告・納税システム「e-Tax」と連携できるかなども、ツールを選ぶ際の重要な要素です。
ミロク情報サービスが提供している「
Edge Tracker(エッジトラッカー)」にもこのような機能が備わっているので、興味のある人はチェックしてみてください。
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今年度の年末調整のポイントについて解説しました。
所得税額に大きく関わる控除額が変更になったことで、算出にも負担がかかることが予想されます。まだ年末調整ツールを利用していない企業は、これを機に導入を検討してみてください。なお、これからツールを導入する場合、年末調整の実務が始まる10月~11月頃までには準備しておく必要があります。ぜひ、早めの行動を心掛けるようにしてください。
また、既にツールを導入している場合、クラウド型であれば今回の変更点に沿って機能がアップデートされていることもあります。そうでない場合は、やはり今年度の改正に対応したツールを改めて準備する必要がありますので、注意が必要です。