HOME 人事/労務働き方改革 雇用保険被保険者証は健康保険証とどう違う?必要となる場面は?
人事/労務働き方改革 2024/07/30

雇用保険被保険者証は健康保険証とどう違う?必要となる場面は?

この記事をシェアする

雇用保険被保険者証は、従業員を雇用した際に企業が手続きを行い取得するものです。
今回の記事では、雇用保険被保険者証の定義や利用場面、発行手続きなどについて解説します。
人事・労務担当者はもちろん、従業員にとっても役立つ内容かと思いますのでぜひチェックしてみてください!

雇用保険被保険者証とは

雇用保険被保険者証とは、雇用保険に加入していることを証明する書類です。
従業員が新たに雇用された際に企業から発行されます。
加入者には一人ひとりに固有の被保険者番号が割り振られ、転職してもこの番号は引き継がれます。
雇い入れた従業員が被保険者となる場合、企業はその従業員を雇った日の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出する必要があります。
なお、雇用保険被保険者証は雇用保険の加入手続きが完了したことを本人が確実に把握できるようにするためのものなので、原則として労働者に直接渡すこととされています。


健康保険被保険者証との違い
雇用保険被保険者証と似たものに健康保険被保険者証がありますが、健康保険被保険者証は、健康保険に加入していることを証明するものであり、健康保険組合に加入して被保険者になるとその証明書として交付されます。
保険医療機関を受診する際に健康保険被保険者証を提示すると、自己負担分(原則3割)のみの支払いで治療を受けることができます。
交付 利用場面
雇用保険被保険者証 ハローワーク 従業員の入退社時や職業訓練を受講する際など
健康保険被保険者証 健康保険組合など 従業員が医療機関を受診する際など
なお、健康保険被保険者証については、事前に利用手続きをした場合、オンライン資格確認を導入している医療機関などではマイナンバーカードを被保険者証として利用できます。


雇用保険被保険者証の記載事項について
雇用保険被保険者証には、被保険者番号や資格取得年月日、事業所名略称などの情報が記載されており、これらの情報で従業員が雇用保険に加入していることを証明します。

雇用保険被保険者証が必要となるタイミング

雇用保険被保険者証が必要となる具体的なタイミングには以下のようなものがあります。


入社・雇用開始時
雇用保険の加入条件を満たす従業員を新たに雇い入れた際、企業は雇用保険の加入手続きを速やかに行う必要があります。
従業員が新卒者など、これまで雇用保険被保険者でなかった場合は、従業員の情報を「雇用保険被保険者資格取得届」に記載してハローワークに雇用保険被保険者証の交付手続きを行います。
一方、転職者などの場合は雇用保険の被保険者番号を引き継ぐため、前職の会社で交付された雇用保険被保険者証を本人から受け取ったうえで、必要な手続きを行います。
なお、転職者が前職の雇用保険被保険者証を持っておらず、被保険者番号もわからないという場合は、再交付の手続きが必要です。


資格喪失時
従業員が退職した場合や死亡した場合、または労働条件の変更によって被保険者資格の要件を満たさなくなった場合には、雇用保険の加入資格を喪失します。
この場合、企業は、従業員が被保険者でなくなった日の翌日から10日以内に、資格喪失届と離職証明書をハローワークに提出する必要があります。
なお、従業員が退職後に転職する場合、転職先へ雇用保険被保険者証の提示が必要となります。
そのため、会社で雇用保険被保険者証を保管している際は、離職票などと併せて本人に交付するようにしましょう。


教育訓練給付金申請時
職業訓練給付金などの支給を受ける際にも雇用保険被保険者証が必要です。
この制度は、一定の要件を満たす従業員が指定された教育訓練の講座を受講した場合に、その受講料の一部について給付金が支給されるというものです。
なお、教育訓練給付金に関する手続きは、企業ではなく給付を受ける従業員本人が行います。
支給申請の際にマイナンバー確認書類などと併せて雇用保険被保険者証が必要となります。

※参考資料:厚生労働省「一般教育訓練給付金

雇用保険被保険者証の発行手続き

企業が雇用保険被保険者証を発行する際は、以下のような手続きを行います。


新たに事業所を設置して初めて従業員を雇用する場合
事業所を新たに設置して労働者の雇用を開始した場合には、雇用を開始した日から10日以内に「雇用保険適用事業者設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」を、所轄のハローワークに提出する必要があります。
提出の際は、登記事項証明書や賃金台帳、出勤簿などの書類も必要となりますので併せて持参しましょう。
手続き完了後、ハローワークから交付された雇用保険被保険者証を従業員に渡すことになります。

※このほか、労働保険保険関係成立届を労働基準監督署に提出する必要もありますので注意してください。


既存の事業所で新たに従業員を雇用する場合
既に上記の手続きを完了している事業主が新たに従業員を雇用した場合には、「労働保険保険関係成立届」を所轄の労働基準監督署に、「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出することで、雇用保険被保険者証が発行されます。
なお、従業員が雇用保険被保険者証を紛失・破損した場合、企業を通じてハローワークで再発行が可能です。

実務におけるポイント

雇用保険被保険者証に関する実務については、以下を押さえておくとよいでしょう。


社会保険の適用範囲拡大について
近年、政府は雇用保険の適用範囲を拡大しており、今後はこれまで雇用保険の対象となっていなかった一部のパートやアルバイトも対象となる可能性があります。
既に、週20時間以上の労働と31日以上の雇用見込みがある人まで適用範囲が拡大していますが、2028年度を目処に、週20時間未満の労働を行う人まで拡大することが検討されています。
この適用範囲の拡大により、雇用保険の対象となる人員が増えるため、雇用保険関連の手続きを行うことも増えていくと予想されます。

※参考資料:厚生労働省「第189回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会


保管に関する注意点
雇用保険被保険者証は、基本的には従業員自身が保管し、退職や教育訓練給付の申請時に関連機関に提出するものです。
特に退職後の転職時には、速やかに新しい雇用主に雇用保険被保険者証を提出することが重要になります。
企業側で雇用保険被保険者証を保管しているケースもあるかと思いますが、その場合は退職時などに本人への交付を忘れないようにしましょう。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
**********

今回は雇用保険被保険者証の役割と必要な手続きについて解説しました。
近年、社会保険関連の改正も多い中で、特に経理だけでなく社会保険関連も担当している事務担当者にとっては大変な状況かと思います。
本記事を通じて、雇用保険被保険者証の重要性を再確認し、対応を行うためのポイントを身につけていただければ幸いです。

人気記事ランキング - Popular Posts -
記事カテゴリー一覧 - Categories -
関連サイト - Related Sites -

経理ドリブンの無料メルマガに登録