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経理/財務会計処理 2025/08/05

「のれん」とは?M&Aでの事例や日本基準と国際会計基準(IFRS)の会計処理方法の違いまでかんたん解説

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M&Aが日本でも活発化する中で、のれんは経理担当者が必ず押さえておくべき重要な概念です。
今回の記事では、のれんの定義や会計基準による違い、会計と税務の違いなどについて、わかりやすく解説します。

  • 投稿日:2017/11/14
  • 更新日:2025/8/5

のれんとは

「のれん」と聞いて多くの人が思い起こすのは、店先にかかる布の「暖簾」のことではないでしょうか。
布としての物質的な価値はほとんどありませんが、のれんは顧客への知名度や品質など、企業としてブランド価値を示す象徴的な存在です。
会計用語の「のれん」も店先ののれんと同様の意味を持ち、ブランド、ノウハウ、顧客基盤など、貸借対照表には計上されないものの、その企業がこれまでの営業努力で築き上げた価値があるものを指します。
実際の定義は「企業を買収・合併する際に支払った金額と、相手企業の純資産との差額」であり、簡潔にいえば「企業を買収した際に計算される目に見えない資産の集まり」であると考えられます。
企業買収(M&A)が活発になる中で、のれんを計上する企業も増えてきています。
しかし、資産規模に対して多額ののれんがある場合は、一気に巨額の損失を引き起こすリスクもあります。
その点で、のれんは注意すべき勘定科目といえます。


のれんが発生する場面の例
例えば、ある企業の資産価値が100億円だとします。
しかし、この企業を100億円で売ってくれと頼んでも、思い通りにいかないこともあります。
資産価値と同額では相手企業が納得しないことも多く、買収を希望する他の競合企業の存在が価格に影響を与える場合もあるからです。
そのため、通常の買収成立価格は実際の資産価値よりも高くなります。
仮に買収価格を120億円とすると、割り増し分の20億円は買い手側にとって損になるかといえばそんなことはありません。
相手企業と自社の技術を組み合わせることでシナジーを生み出したり、相手企業が持っていたブランドを利用したりと、相手企業がこれまで培ってきたノウハウやブランドから、支払った差額を上回る価値(超過収益力)が発生するためです。
のれんは、この場合の差額20億円を指しています。


負ののれんとは
のれんは、買収価格が相手企業の純資産を上回った場合に発生するものです。
逆に、買収価格が純資産を下回った場合(安く買えた場合)に発生する差額は「負ののれん」と呼ばれます。
負ののれんが発生する背景には、買収される側が後継者問題などにより早期に売却を希望するケースや、未払給与・賞与など、貸借対照表には計上されていない負債の存在が認識され、実質的な純資産価値が低いと判断された場合などがあります。
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日本基準と国際会計基準(IFRS)でののれんの違い

のれんの会計処理は、日本の会計基準と国際会計基準(IFRS)では大きく異なります。
その中でも特に重要な、のれんの償却と減損処理について確認しましょう。


のれんの償却
日本基準
原則として、のれんは貸借対照表で資産として計上されます。
その後、買収から20年以内の期間にわたって定額法などで均等に償却し、償却額は損益計算書の販売費及び一般管理費に計上することとされています。
買収金額の方が会社の資産負債の金額よりも低い場合には、負ののれんとして処理され、発生した事業年度で損益計算書の特別利益に計上されます。

国際会計基準(IFRS)
IFRSの場合は、のれんを資産に計上しますが、償却を行いません。
そのため、基本的には一度計上されたのれんの簿価はそのまま据え置かれます。
ただし、毎期のれんの減損テストを行い、価値が低下していると判断した場合に減損処理を行います。
IFRSには営業利益と特別利益の区別がないため、負ののれんが発生した場合については、通常ののれんと同様に営業利益に含めて表示されることになります。


のれんの減損処理
資産価値より高い金額となるのれんをプラスして買収したものの、買収後にそれほど資産価値がないことが判明したり、業績が振るわなかったりするケースがあります。
支払いは既に行っているため、資産価値が減れば相対的にのれんは大きくなりますが、のれんはその金額以上に利益に貢献することを想定して支払った過去の買収の対価です。
想定以上に利益が出ないという状況になれば、その価値を適切な金額に減少させなければなりません。
この処理をのれんの減損といい、損益計算書に損失として計上します。

日本基準
のれんは時間の経過とともにその価値が目減りしていくため、定額償却を行います。
償却後ののれんについて価値が低下している兆候がある場合には、のれんの価値が低下しているかどうかの減損テストを行い、実際に価値が低下していれば減損処理を行うこととなります。

国際会計基準(IFRS)
償却処理は行いませんが、年1回は必ず減損テストを行う必要があります。
その結果、のれんの価値が低下している場合には減損処理を行います。
そのため、IFRSでは日本基準と比較して、のれんに伴う費用の年度ごとの発生額に差が生じます。
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のれんの会計と税務の違い

企業を買収する際に、支払対価と買収会社の資産・負債の時価との間に差額が生じる場合には、会計上、のれんまたは負ののれんが発生します。
法人税では、これらは資産調整勘定や差額負債調整勘定と呼ばれます。
企業を買収する際に支払った対価の方が会社の純資産より多い場合には資産調整勘定、少ない場合には差額負債調整勘定が使用されます。

会計 法人税
のれん 資産調整勘定
負ののれん 差額負債調整勘定

資産調整勘定
税務上、資産調整勘定は原則として5年間で均等償却を行い損金算入されます。
法人税では強制的に償却をする必要があるため、仮に会計上はのれんの償却を行っていなくても、税務上は資産調整勘定の償却処理を行います。
また、会計上の償却期間は20年以内、税務上の償却期間は5年間となるため、会計と税務で毎期の償却額が異なる可能性もあります。
会計での費用計上額と、税務での損金算入が認められる金額が異なる場合、差額については法人税申告で申告調整項目として別途税務調整を行う必要があります。


差額負債調整勘定
税務上、差額負債調整勘定は原則として5年間で均等償却を行い益金に算入されます。
会計上、負ののれんは発生した年度で一括して利益に計上するため、税務とは取り扱いが異なる点に注意が必要です。
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のれんは単なる会計数値上の差額ではなく、M&Aを行った後の買収成果を左右するとても重要な勘定科目です。
日本基準とIFRSでの違いや会計と税務での処理の違いを正確に把握し、適切に処理できるようにしましょう。
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