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経理/財務会計処理 2021/10/15

「のれん」とは?M&Aでの事例や日本と国際の会計処理方法の違いまでかんたん解説

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会計用語としての「のれん」は主にM&A(企業買収)のシーンで使う用語です。今回はM&Aでの事例や、実際にどのような会計処理を行うのかなどをかんたんに解説します。

  • 投稿日:2017/11/14
  • 更新日:2021/10/15

「のれん」とは、見えない資産価値

「のれん」と言えば、誰もが思い起こすのが店先にかかる布。それ自体に物質的な価値はありませんが、顧客への知名度や品質など、ブランド価値を示す象徴的な存在です。会計用語の「のれん」も、店先の「のれん」と同様の意味をもちます。簡単に言うと、企業を買収した際に計算される仮想的な資産です。

何だかよくわかりませんよね。例えば、ある企業の資産価値が100億円だとします。この企業を100億円で売ってくれと頼んでも思い通りにはいきません。資産価値と同額では相手企業も納得してくれないし、同じく買いたいと思っている競合会社の存在も影響します。ですから、通常、買収成立価格は資産価値よりも高くなります。

仮に120億円で買収が成立したとしましょう。この20億円の割増は、買い手企業にとって損なのでしょうか。そんなことはありません。この20億円の差額は、買収後、いずれ上回る価値(超過収益力)が発生すると考えたから支払った金額なのです。

この超過収益力には、企業がこれまで培ってきたノウハウやブランドなど、目には見えない価値が含まれていると考えるのです。まさに、企業イメージを象徴するもので、店先の「のれん」そのもの。その名を受けて、資産価値よりも高い金額となった買収金額、この場合の20億円を「のれん」代と言います。

企業買収失敗の代償とは

資産価値より高い金額となる「のれん」代をプラスしてまで買収したのはいいけど、買収した後、それほど資産価値がなかった。あるいは、業績が振るわなかったというケースがあります。既にお金は支払っていますから、資産価値が減れば相対的に「のれん」代は大きくなります。

しかし、「のれん」はその金額以上に利益に貢献してくれると想定した仮想資産。想定以上に利益が出ないという状況になれば、適切な金額に価値を減らさなければなりません。この処理を「減損」と言い、損失として計上する必要があります。現在、東芝を苦しめているのも、この『「のれん」代の減損』なのです。

東芝は、2006年10月に米・原子力会社ウエスチングハウス(WH)を買収しましたが、三菱重工やゼネラル・エレクトリックなど日米4社の争奪戦の結果、買収金額は約6,000億円に上昇、買収金額とウエスチングハウス(WH)の資産価値との差額、つまり「のれん」は約3,500億円にもなりました。完全に「高値づかみ」だったのです。

日本基準と国際会計基準(IFRS)の違い

「のれん」代の減損処理の仕方は、日本の会計基準と国際会計基準(IFRS)では大きく異なります。日本基準では、「のれん」は買収後20年以内に均等に償却していきます。設備などの減価償却と同様の考え方で、「のれん」を買収コストの一つと捉えているのです。一方、国際基準(IFRS)は償却せず、毎期評価して価値がないと判断されれば一括で減損処理します。

いずれの基準でも、「のれん」代は収益力の低下に伴い減損処理をする必要があります。東芝は、早くから原子力事業の不振が指摘されていましたが、それを認めず減損処理を行ってきませんでした。さらに、2017年初頭に子会社であるウエスチングハウス(WH)が2015年に買収した原子力サービス会社、CB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)に関連する巨額の「のれん」代も計上することになりました。

企業買収(M&A)が一般的になった現在、「のれん」を抱えている企業が増えています。資産規模に比べて多額の「のれん」がある場合は、一気に巨額の損失を出す可能性もあるのです。日本の会計基準では、「のれん」代の減損は損益計算書(P/L)の特別損益に計上されているので、気になる企業をチェックしてみてください。
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