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人事/労務労務管理 2025/08/28

離職票(離職証明書)の書き方ガイド!企業担当者が見落としがちな注意点とは?【記入例あり】

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離職票は従業員の退職時に重要となる書類です。
特に企業が作成する「離職票-2」通称「離職証明書」は、記載ミスや提出遅れがあると、トラブルやペナルティにつながることもあります。
今回の記事では、企業担当者が押さえておくべき離職票に関する基本知識を、記入方法を交えながら解説します。

離職票とは

離職票(雇用保険被保険者離職票)は、従業員が企業を退職する際に発行される書類です。
雇用保険の被保険者が退職する際、事業主は資格喪失届と併せて「離職票-2」をハローワークに提出します。
その後、ハローワークから「離職票-1」が交付され、事業主を通して退職者の手に渡ります。
事業主が提出する「離職票-2」は、ハローワークから交付される「離職票-1」と区別するため、便宜上「離職証明書」とも呼ばれています。
離職票は、退職者が雇用保険の給付手続きを行うために必要な書類です。
そのため事業主は、従業員の退職日の翌日から起算して10日以内に、離職証明書を提出しなければなりません。


離職票の交付義務
離職証明書は、従業員の在職期間の長短にかかわらず事業主側で作成するものです。
事業主が離職証明書の作成や提出を怠った場合、退職者が雇用保険の給付手続きをスムーズに行えなくなるだけでなく、雇用保険法に基づき、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
なお、退職者本人が離職票は不要と申し出た場合は、離職証明書の提出は不要です。
ただし、59歳以上の離職者は本人の希望にかかわらず離職証明書の提出が必要となるため注意しましょう。


(2025年1月改正)離職票の電子交付
従来、ハローワークから交付される離職票は企業から退職者に郵送されるのが一般的でした。
しかし、2025年1月20日からはマイナポータルで離職票を受け取れる機能が提供されています。
雇用保険の離職手続きを電子申請で行い、かつ以下の要件をすべて満たす場合、退職者はマイナポータルを通じて離職票を直接受け取ることができます。

  • 届け出たマイナンバーが被保険者番号と適切に紐付いていること
  • 退職者自身がマイナポータルと雇用保険WEBサービスの連携設定を行うこと
  • 事業主より電子申請で雇用保険の離職手続きを行うこと
上記の要件を満たしていれば、ハローワークでの審査完了後に、離職票が退職者のマイナポータルに自動的に送付されます。
企業・退職者双方にとってメリットのある仕組みのため、積極的に活用するとよいでしょう。

※参考資料:厚生労働省「事業主の皆さまへ 2025年1月から、希望する離職者のマイナポータルに「離職票」を直接送付するサービスを開始します!
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離職証明書の記入方法

離職票は、3枚1組の複写式になっています。
1枚目は事業主控、2枚目はハローワーク提出用、3枚目は「離職票-2」として退職者に交付されます。
この複写式の様式は、インターネット上で作成することはできないため、紙で申請する場合はハローワーク窓口で用紙を入手する必要があります。
なお、電子申請で手続きする場合は、別途用紙を取得する必要はありません。
※出典:ハローワーク「記入例:雇用保険被保険者離職票-2


基本情報欄の記入方法
左側上半分は退職者の情報と事業所の情報を記載する欄です。

①、②、③ 被保険者番号、事業番号、離職者氏名欄
被保険者番号、事業所番号、離職者の氏名を記入します。

④ 離職年月日欄
離職日を記入します。
原則として雇用保険被保険者資格喪失届と同じ日とします。

⑤ 事業所名称所在地電話番号欄
事業所名称及び事業所の所在地を記入します。
事業所所在地だけでは事業主に連絡が取れないような場合は、事業主の住所も併せて記載します。

⑥ 離職者の住所又は居所欄
離職者の住所と電話番号を記入します。


賃金支払状況欄・賃金支払対象期間と基礎日数
左側下半分は賃金支払状況などを記載する欄です。

⑧、⑨ 被保険者期間算定対象期間、⑧の期間における賃金支払基礎日数欄
一般被保険者はA欄に離職の日以前の被保険者期間算定対象期間と賃金の支払基礎日数を記入します。
賃金支払基礎日数とは、賃金の支払い対象となった日数を指します。
まずは「離職日の翌日」の隣の空欄部分に離職日翌日の日付を記入し、その日付を基準として1カ月ごとに遡りながら下の欄も記入していきます。
雇用保険の失業給付を受けるには支払基礎日数が11日以上ある月が12カ月以上必要です。
そのため、支払基礎日数が11日以上となる月が12カ月分に達するまで記入を続けます。
なお、支払基礎日数には有給休暇を取得している日も含めます。

⑩ 賃金支払対象期間欄
まず、最上段に、離職日の直前の賃金締切日の翌日から離職日までの期間を記入します。
その下に賃金締切日の翌日から賃金締切日までの期間を、支払基礎日数が11日以上になる月が6カ月分になるまで遡って記入します。

⑪ ⑩の基礎日数欄
月給制の場合はその月の日数を記入します。
ただし、欠勤によって給与が減額されている場合は、控除後の賃金に対応する日数が賃金支払基礎日数となります。
日給制・時給制の場合は、出勤日数・有給休暇取得日数・会社都合による休業日(休業手当が支払われた日)の合計を記入します。
なお、ここでは賃金支払いの対象となった日数を記入するため、短時間でも出勤している日は1日と数えます。

⑫ 賃金額欄
その期間の実際の労働分に対して支払った給与額を、月給制・週給制はA欄、日給制・時給制はB欄に記入します。
また、残業手当などの基本給以外の手当がある場合にはその合計額も記入します。
例えば、6カ月など長期の通勤定期券を事業主が購入し労働者に交付した場合、購入金額を6カ月で割った金額を1カ月分に記入します。
端数が生じた場合は、最後の月にまとめて支払われるものとして取り扱います。

例: 6カ月定期券代48,000円を4月に支給した場合
  • 4月~8月:各月8,000円
  • 9月:8,000円(端数調整なし)
また、固定給はその月、残業代などの変動給は翌月に支払う、という企業もあるでしょう。
この欄に記入するのは、その期間に実際に支払った労働分となるため、変動部分についてはその月の支給額から調整が必要になる場合があります。

例: 以下のように給与を支払った場合における、離職証明書に記入する8月分賃金
  • 8月31日支給の内訳 = 8月の基本給280,000円・7月の残業手当10,000円
  • 9月15日支給の内訳 = 9月の基本給210,000円・8月の残業手当20,000円
8月の基本給280,000円 + 8月の残業手当20,000円 = 300,000円


これらの賃金の記載をまとめると、記載例は以下となります。
離職理由欄の記載
右側には離職理由を記載します。

⑦ 離職理由欄
該当する項目の□の中に○印を記入のうえ、表内一番下の具体的事情記載欄にできるだけ詳細な具体的事情を記載します。
添付資料の提出が必要になるため、主観的な見解によって離職理由を記載しないよう注意しましょう。

自己都合退職の記入例:
5.労働者の判断によるもの
(2) 労働者の個人的事情による離職(一身上の都合、転職希望等)

具体的事情記載欄(事業主用)
転職のため自己都合により退職。令和5年2月15日に退職願を提出し、同年3月31日付で退職。

会社都合退職の記入例:
4.事業主からの働きかけによるもの
(3) 希望退職の募集

具体的事情記載欄(事業主用)
企業業績悪化に伴う人員整理のための希望退職の募集に応じたため。

契約期間満了の記入例:
3.労働契約期間満了等によるもの
(2) 労働契約期間満了による離職

具体的事情記載欄(事業主用)
有期雇用契約(令和4年4月1日~令和5年3月31日)の期間満了。事業主から更新の明示をしたが、労働者が契約更新を希望せず離職。

⑯、⑰ 離職者による確認欄:
すべての記入が済んだら、内容に相違がないか退職者に確認してもらい、署名をもらいます。
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離職証明書の作成にあたって注意したいポイント

離職証明書は企業が作成して提出するものです。
ここからは、企業が離職証明書に関する対応を行う際に注意したいポイントを紹介します。


賃金の範囲
離職証明書に記載する賃金の範囲は、月額賃金や給料に限らず、家族手当や残業手当など、労働の対償として事業主が支払うすべての賃金が対象となります。
基本給だけを記載すればよいと誤解されやすいため、しっかり押さえておきましょう。
また、先述の通り、離職証明書に記載する賃金の支給額は、実際の現金支給の時期とずれる場合があるため、注意が必要です。


記載ミスの訂正方法
離職証明書の作成中に記載を誤った場合は、該当箇所に二本線を引いて取り消し、上部の余白に正しい内容を記入してください。
併せて、訂正した各欄の左側の欄外に、以下のような訂正内容の表示を行います。
  • 訂正字数が異なる場合…「○欄○字抹消○字挿入」
  • 訂正字数が同じ場合…「○欄○字訂正」

離職理由
離職証明書に関するトラブルの中で特に多いのが、離職理由に関するものです。
離職理由によっては、失業給付の所定給付日数が長くなったり、給付開始時期が早まったりする場合があります。
そのため、たとえ退職者が自己都合で退職した場合でも、ハローワークで離職理由について異議申し立てを行うケースは珍しくありません。
こうしたトラブルを避けるためにも、離職理由の欄は客観的な事実関係に基づき、届け出前に退職者本人と十分に確認したうえで記載することが重要です。
また、離職理由の根拠を示すため、離職票の提出時に出勤簿・賃金台帳・労働者名簿・就業規則などの確認書類の提出を求められる場合があります。
必要なときにすぐ提出できるよう、あらかじめ準備しておきましょう。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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離職証明書の記載事項には、被保険者期間や賃金支払いの状況、離職理由など多くの項目がありそれぞれに記載ルールがあります。
記入ミスや内容の不備は退職者の給付手続きに支障をきたすため、ポイントを押さえておきましょう。
また、2025年に始まった電子交付制度もチェックしてみてくださいね。

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