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経理/財務管理会計 2019/02/19

予算編成を効率化する3つの改善テーマ

データの収集と集計に手間がかかり、なかなかスムーズに進まない予算編成業務を効率化する3つの改善テーマとは?ある建材商社の例でご紹介します。

何かと手間のかかる予算編成業務を効率化しよう!

3月決算の企業であれば、1~3月期は、次年度の予算編成で忙しい経理部の皆さんも多いことでしょう。各部門から希望予算を収集・集計し、経営部門の意向を踏まえて調整を図っていく予算編成業務は、単に数値を集計するだけではなく、

  • 経営方針に沿って予算が策定されているか
  • 予算を裏付ける理由や実現するための計画が存在するか
  • 予算を実行するための資金調達は可能か

などを確認しながら進めていく必要があり、なかなか手間のかかる仕事と言えます。
各部門に配布する予算編成シートは、Excelで作成されているケースが多いようです。財務会計システムのカバーしにくい部分を運用していくために欠かせないExcelですが、事業が拡大したり複雑化したりすると、各部門とやりとりするExcel書類の数や種類が増え、それゆえに管理が煩雑化し、計算式も複雑化・属人化しがちです。

予算管理の業務負荷を増大させるこのような状況は、どのように解消していくべきでしょうか。今回は、建材商社として着実に業績を伸ばしているS社のケースをご紹介します。

Excelでの予算編成で起こりがちな3つの問題

省エネや環境保護、施工省力化などに役立つ高機能建材を中心に販売を行うS社は、付加価値の高い商材を専門に扱うことにより、長期的な景気低迷の中でも堅実に業績を伸ばしてきました。

「多くの企業と同じように、当社でも予算編成シートはExcelで作成して各部門に配布し、記入してもらって回収・集計していました。しかし、部署数や事業所数が増えるにしたがって、Excelによる運用では予算編成業務が滞るようになってきたのです」と、S社 管理本部 経理部部長の芝山氏は振り返ります。
経理部門の現場で聞き取りを行うと、次のような問題が浮かび上がってきました。

  • 予算編成シートが期限までに提出されず、進捗状況も分からない
  • 予算編成シートの計算式やレイアウトを各部門で勝手に変更してしまう
  • どの予算編成シートが最新版か分からなくなることがある

「これらは、Excel書類による運用ではよくある話です。会社が小さいうちは経理部でカバーしてきましたが、事業規模が大きくなれば当然無理が出てきます」と、芝山氏は指摘します。

「予算編成は、次年度の企業があるべき姿を数字で設計するものです。予算の審議や調整に時間をかけるべきで、シートの回収や集計で遅延させるわけにはいきません。そこで当社では、3つの改善テーマを定めて問題解決を図ることにしました」

予算編成シートの編集権限を制限し、集計を迅速化

「まず、第1の改善テーマとして設定したのが『Excelからの脱却』です」と、芝山氏は語ります。

「予算編成シートはExcelで作成せず、予算管理システム上で作成・管理するようにしました。編集権限を経理部門の管理者に限定しているので、各部門が計算式やレイアウトを勝手に改変するというようなことはできません」と、芝山氏は語ります。

計算式の内容も経理部門の管理者チームで共有しているため、属人化して担当者以外は理解できなくなるというリスクも無くなったとのこと。

「とは言え、Excelにもたくさんの長所がありますし、何より使い慣れていますから、ユーザーインターフェースのデザインがExcelに近いこと、Excel書類を読み込んで活用できることも、システム選定の大きなポイントになりました」 また、予算編成シートは書類として配布せず、各部門の担当者が予算管理システム上のシートに直接アクセスして入力するようになっています。

「入力内容はリアルタイムで集計されるので、経理部門が集計に時間を費やすことはなくなりました。Excel書類のように複製できないため、どのデータが最新版か分からなくなることもありません」


ワークフローの活用で予算編成シートの回収遅延を解消

S社が設定した第2の改善テーマは『進捗状況の管理』です。

「今回、予算編成のみならず、予算管理全体を効率化するために予算管理システムを導入したのですが、その選定にあたっては、ワークフローをしっかり設定・管理できることを重視しました」
予算編成のワークフローをシステムで管理することにより、

  • 予算編成シートの入力状況を一覧で把握できる
  • 提出の遅れている部門に対して簡単に催促メッセージを送れる
  • 予算の承認、否認、差戻などもワンクリックでできる

といったことが可能になり、予算編成シートの回収をめぐる遅延は大きく改善されました。

「入力状況や承認状況は、経理部門だけではなく、経営幹部や各部門長も参照できるようにしました。経営幹部がリアルタイムでチェックしていることを意識するようになったためか、提出が遅れる部門はほとんど無くなりましたし、予算の数値を入力する前に、それが適切なのか、実現可能なのか、慎重に検討するようになっています」と、芝山氏は述べています。

予算データの一元管理で容易になるレポート作成や各種分析

S社では、予算管理に関するデータは、いままで基本的にExcelで管理していました。

「しかし、データがExcel書類間で連動しているわけではありませんから、収集されたデータは管理されることもなく、各担当者のPCにバラバラに蓄積されていくだけでした。これではせっかく収集したデータを効率的に活用できません」と、芝山氏は指摘します。

そこで設定されたのが、第3の改善テーマ『データの一元管理』です。予算管理システムを導入することにより、予算に関するあらゆるデータをひとつのデータベースで管理しようというものです。

「導入前は、バラバラに保存されたExcel書類から必要なデータを探し出し、コピー&ペーストや再入力をしていましたから、レポートひとつ作成するのも大変でした。今は、データベースからレポートの任意の箇所にリアルタイムの数値を簡単に読み込むことができます」
データの一元管理が威力を発揮するのは、レポート作成だけではありません。

「着地見込分析や予実比較分析など、さまざまな切り口での分析やシミュレーションが容易にできるようになりました。ビジネスのスピードが上がり続ける中で、予算のきめ細かな見直し・修正は欠かせません。その判断材料となる分析レポートを迅速かつ効率的に提供できるようになったことは、大きな成果です」と、芝山氏は評価してくださいました。
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