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人事/労務働き方改革 2020/03/17

働き方改革とともに電子化の波がやってくる!

多様な労働力の確保、柔軟な働き方の推進、生産性の向上を柱とする働き方改革の要となるのが、業務の電子化。それを実現するための重要なポイントご紹介します!

講師プロフィール

社会保険労務士 加藤 千博 氏
加藤マネジメントオフィス 代表。MJS税経システム研究所
客員講師。社会保険労務士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー。1990年よりイタリアを中心に一流ホテル、高級ブランド店のサービスを学び、帰国後はファッション、不動産、飲食など多くの会社経営に携わる。同時に従業員の福利厚生を向上させるため、人事評価制度、賃金制度構築に長年にわたり尽力。2010年、センズプランニング株式会社設立。2013年、加藤マネジメントオフィス設立。

働き方改革が必要とされる本当の理由は「圧倒的な人材不足」

経営者や人事担当者の皆様に「働き方改革とは何でしょう?」という質問をすると、多くの場合、「労働時間を削減すること」という答えが返ってきます。これは間違いではありません。しかし、なぜ働き方改革が必要なのか、その本当の理由は「圧倒的な人材不足」にあります。

今後、日本では大幅に人口が減ることが確定しています。何十年後にどれくらいの人口が減ってしまうかも分かっています。このような状況では、すべての企業が待ったなしで考え方を変えていかなければ将来がない!と言うのが働き方改革の核心と言えるでしょう。
それでは、実際に企業はどのような取り組みをしていくべきなのでしょうか?

今回はさまざまな取り組みの中から「電子化」に焦点を当て、社会保険労務士としてご活躍している加藤千博氏の人気セミナー「人事総務を徹底的に効率化するセミナー『70年ぶりの労働法大改正の実態』電子化の波に乗り遅れるな!」の講義内容から、経営者や人事・総務担当者が知っておくべき重要なポイントをダイジェストでご紹介します。

そもそも、日本人は本当に働き過ぎなのでしょうか?

一人あたりの年間総実労働時間について2018年の国別ランキング(※1)を見てみますと、1位はメキシコの2,148時間、お隣の韓国が3位で2,005時間。日本はと言えば、1,680時間で22位となっています。たいして働いてないじゃないか!と思えますが、この計算からパートタイム労働者を除き正社員に絞り込んでみると、90年代からずっと2,000時間前後をキープし続けていることがわかります(※2)。
残業を減らせと言われ続けながらも、なかなか減らないのは何故なのでしょうか? そこには4つの理由があります。

1つは、「絶対的な仕事量が多い」こと。2つ目は、「適正な人員配置ができていない」こと。3つ目は、「残業代を前提とした家計」になってしまっていること。実はこの3つ目がとても大きな理由となっており、生活残業という言葉があるほどで、残業がないと困るという人は多いようです。4つ目の理由としては、「残業に幸福感がある」こと。不思議な話ですが、働けば働くほど達成感を得られるという方もまた多いそうです。

2020年4月からは、中小企業にも時間外労働の上限規制が設けられます。しかし、根本的な原因を解決しないまま労働時間だけを抑制していくと、従業員の収入は減り、隠れてサービス残業する人が増え、モチベーションも下がって、会社の業績が悪化してしまうこともありえます。そのような事態を防ぐためには、業務を効率化して生産性を上げていかなければなりません。

※1=出典:OECD「2018年 世界の労働時間国別ランキング」 ※2=出典:厚生労働省「毎月勤労統計」2018年度

決して高くはない日本企業の「生産性」

生産性を上げていかなければならないと指摘しましたが、実を言えば、日本の生産性は昔からそれほど高くありません。諸外国と比べてみますと、同じ価値を生み出すために非常に長い労働時間を費やしているのが日本の特徴です。

日本のGDP(国内総生産)は、2016年時点でも世界ランキング3位をキープしていますが、国民1人あたりのGDPで見ると、1988年に3位だった世界ランキングは、2016年には22位にまで落ち込んでいます。これは非常に深刻な話で、このままでは日本は先進国ではなくなってしまうという声も経済界ではささやかれています。このような状況から見ても、生産性の向上は我が国の重要課題であることがわかります。
ところが、企業が生産性向上を目指そうとしても、従業員はなかなか同調してくれません。今までの楽な仕事のペースを崩したくない、残業が減ると生活が苦しくなる、と言うのがその理由です。

そのため企業としては、労働時間を短縮して利益が増加するのであれば、その利益が必ず従業員に還元される仕組みを作らなければなりません。そして、その仕組みづくりの中で要となっていくのが「電子化」ということになります。

電子化で実現する「働く環境」の改革

働き方改革において何を変革するのかと言えば、それは「人材」「評価」「環境」に他なりません。

「人材」に関しては、正社員のみならず、外国人、高齢者、未就労女性、障害者など、多様な人材を受け入れて人材不足を解消していくことが重要です。

「評価」という意味では、今までのような「労働時間=労働の成果」ではなく「時間あたりの成果」で評価することによって、人材の価値を最大化していく必要があります。

そして「環境」の改革で要となるのが電子化です。生産性を改善していくためには、最新テクノロジーに頼れる部分は頼って業務を効率化し、ヒトでなければできない仕事に集中できる環境を作ることが不可欠です。これは人手不足を解消することにもつながります。

電子化のメリットとしては、
を挙げることができます。通信環境に影響される、書式スタイルに制限があるといったデメリットもありますが、電子化による業務効率化のメリットはそれ以上に大きいと言えます。

さまざまな業務を電子化で「効率化」

電子化によって業務がどのように効率化されるのか、人事・総務部門を例にとってご紹介しましょう。

まずは「勤怠管理」です。労働時間に関する規制が厳しくなり、働き方が多様になってくると、勤怠管理も複雑になってきますが、これを電子化すると非常に業務が楽になります。今どきはスマートフォンで出退勤を打刻するシステムが主流ですが、外回りが多い従業員や在宅勤務の従業員も位置情報付きで打刻できます。勤怠データは給与システムと連携できますから、給与計算にかかる時間も短縮できます。

「給与明細」や「経費精算」の電子化も、大きなメリットがあります。給与明細を印刷して封入して配布するという手間が省けますし、従業員は好きなときにスマートフォンやパソコンで確認できます。経費申請も、申請書と領収書を持ってわざわざ経理部に届ける必要がなくなります。スマートフォンのカメラで領収書を撮影し、アプリでいつでもどこでも申請できるようになります。

人事・総務部門にとって「年末調整」の電子化は魅力的でしょう。申告書を配布して、回収して、訂正して、集計する、その煩わしさから解放されます。スマートフォンやパソコンから簡単に申請書を作成できるので、従業員と人事・総務部門の双方の業務負荷が軽減されます。
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2020年4月から、健康保険等に関する行政手続きの一部について電子申請が義務化されました。現在は、大企業など特定の法人のみが義務化の対象ですが、2019年5月に成立したデジタル手続き法によると、将来的にはすべての行政手続きが電子化されることになっています。中小企業にも電子化の波がやってきますから、それに乗り遅れないよう、今のうちから環境を整えておくことをおすすめします。

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