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FinTech 2017/07/04

新米経理の会計奮闘記 第5回「フィンテックで経理業務が消える!?」

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新米経理の会計奮闘記 登場人物
  • 山本理子

    ようやく経理担当になったものの、分からないことだらけ。毎回様々な経理問題に頭を悩ます。曲がったことが大嫌い。

  • 吉田経男

    毎回経理問題を引き起こす営業部員。おっちょこちょいでずる賢い一面もあるが、本当はやさしい男。

  • 会計仙人

    突如現れて、会計問題をわかりやすく解説してくれる謎の仙人。仏陀の会計担当だったらしい。

新米経理の山本理子が社内で巻き起こる様々な経理問題に挑む会計奮闘記。
毎回、突如現れる会計仙人が経理問題を分かりやすく解説してくれるお悩み解決ストーリー、第5回目です。
今回は、いま話題のフィンテックの脅威に怯える理子の悩みがテーマ。会計仙人がこれから必要とされる経理のスキルについてレクチャーしてくれます。
さて、どんな騒動が待ち受けているのでしょうか。

フィンテックは脅威か?

「何だか不安だよねえ。このまま経理担当でいいのかしら」
浮かない顔の理子である。パソコンの画面にはフィンテックの特集記事。テクノロジーに奪われる金融系職業が列挙されている。銀行の融資担当、保険の審査担当、クレジットカードの審査担当、簿記・会計・監査の担当、税理士・・・。

「どうしたの、渋い顔をして」と、営業部の吉田経男が入ってきた。

「いいですよね、吉田さんは悩みがなくて」

「何ですか、また悩み?」と、吉田は理子が見ているパソコン画面を覗き込む。
「フィンテック?何それ」

「知らないの?営業のくせに情報感度鈍すぎです。フィンテックは、金融を意味するFinance(ファイナンス)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語で、その名の通り、テクノロジーによって新しいサービスや会社がどんどん生まれていて、金融業界が大変革を迎えているの」

「それと、理子ちゃんの悩みとどう関係あるのよ」と、吉田は要領を得ない。

憂鬱な表情でうつむく理子。
「ハァ〜、将来経理という職業はなくなっちゃうのかなあ」

と、その時、どこからともなく重厚な太鼓が鳴り響き、鬱蒼とした霧に包まれた仙人が舞い降りてきた。

「わしは経理の揉め事を解決するためにこの世につかわされた身。その名を『会計仙人』と申す。かつては、仏陀の会計担当として名を馳せた男よ」といつものように会計仙人が現れた。

「珍しく悩んでいるようじゃのぉ」

「フィンテックの進展で、将来的には経理業務はなくなるのかなと思って。転職した方がいいかと、けっこうマジに悩んでいるんです」

「相変わらず見識が甘いのぉ」と、呆れ顔の会計仙人である。
「よいか、テクノロジーの影響を受けているのはどの業界も同じじゃ。金融業界は法規制が厚くてテクノロジーの進展が遅れていたのじゃが、ここへ来て一気に法改正が行われるなど、本格的な波が到来しておる」

「やっぱり、IT化が進むと経理の仕事はなくなるの?」

ルーティンワークが多い経理業務

「そう、短絡的に考えるな。これまで実際に経理の仕事でIT化によってなくなった業務はどんなものか考えてみよ。例えば、ネットバンキングを導入してなくなった業務はなんじゃ?」

「振込とか通帳記帳ですかね」と神妙な面持ちの理子。

「会計ソフトの導入でなくなった業務は?」

「今の会計ソフトは現金出納帳の画面で入力すると、仕訳が自動転記されるのでエクセルで現金出納帳を作成する手間がなくなったわ。管理ソフトを併用すると、見積り、受注、売上、請求書の発行から入金まで一連管理ができるので業務効率が格段に向上したと思う」

「各種ソフトやシステムの導入によってペーパーレス化も進みよった」と会計仙人。

「ペーパーレス化によって、面倒なファイリング作業もかなり減ったわ」と理子。

「そうじゃ、そうじゃ。テクノロジーによって消えた業務に共通することはなんじゃ。一つ言えるのは、誰でもできるルーティンワーク。こちらを見るのじゃ、経理の主な業務をあげてみた」

【経理の主な業務】
毎日の仕事
  • 現金管理
  • 預金管理
  • 手形管理
  • 小切手管理
  • 仕訳
  • ファイリング
  • 仕入・買掛金管理
  • 売上・売掛金管理
  • 経費・未払金管理
  • 在庫
  • 固定資産
  • 社会保険や入退社手続き

1ヶ月ごとの仕事
  • 月次決算
  • 資金繰り表作成
  • 給与計算
  • 社会保険料、住民税、源泉所得税の納付

1年ごとの仕事
  • 年次決算
  • 法人税等申告納付
  • 償却資産申告
  • 賞与計算
  • 年末調整
  • 給与支払報告書
  • 法定調書
  • 算定基礎届
  • 労働保険の年度更新

「こうしてみると、経理の業務というのは実にルーティンじゃのぉ。同じことの繰り返しが多い」

「ということはつまり、やがて消えていく・・」と、吉田も不安気だ。

「やっぱりそうよね」と、理子も心を重ねる。

ヘンリー・フォードの顧問!?

「フィンテックに代表されるような大変革は、わしの記憶では産業革命以来じゃなかろうか。あの頃はヘンリー・フォードの顧問をやっていてのぉ、自動車を一般化する絶好のタイミングを見計らってライン生産方式で一気に大量生産しよった。あれはわしのアドバイスでT型フォード1車に限定したからこそ大量生産が実現したのじゃ」

「ヘンリー・フォードの顧問!?」と驚く吉田と理子。

「あの頃は、一つの商品・サービスが生まれると、それに付随して大量のルーティンワークが発生したのじゃ。それをいかに効率よく行うかが勝負で、その解が同一規格商品のライン生産方式だったわけじゃ。まさに製造業の黎明じゃよ」

「ほおー」と感心しきりの二人である。

「さて、T型フォードによって自動車が社会に普及するわけじゃが、それ以前の一般人の移動手段といえば何かのぉ」

「馬車ですか」と理子。

「その通り。T型フォードが出る以前の19世紀末、とある馬車の製造会社の社長から相談を受けたことがある。この先、自動車の時代になることは容易に予想できた。馬車製造から自動車製造にシフトするか。しかし自動車のマーケットはまだ小さくリスキーじゃ。このまま馬車製造を続けるべきか。その時、わしが授けた妙案がわかるかね」

「やっぱ、自動車製造にチャレンジするべきだろうね」と吉田。

「でも、エンジンも必要だし、馬車とはまったく違う構造よ。ノウハウもなしに無謀なんじゃないかしら」理子は異を唱える。

「タイヤじゃよ。馬車でも自動車でも需要があるじゃろう」

「なるほど。マーケットは広がるし、リスクもない。これまでのノウハウも活かせる」と吉田。

「タイヤ製造に特化することで自社の強みを明確にすることもできるのじゃ。さて、今の時代の経理にとって、このタイヤに匹敵するものは何かのぉ」

「そんなものあるのかしら。さっきの業務一覧を見ても何もないような・・」そう言って顔を伏せる理子である。

「さっきの一覧は経理業務という切り口で見たもの。今度はこの図を見るのじゃ」と会計仙人は1枚の図を広げた。

経理の普遍的価値とは?

【経理と社内の関係】
「どうじゃ、この図に経理の独自の強みが表れていると思わんかね」

「すべての部署とつながっている?」と理子が答える。

「そうじゃ。経理の業務自体はルーティンワークが多いが、その業務を通じてすべての部署とやりとりが生じる。つまり、社内の様々な情報を掌握できるのじゃ。この情報をもとに経営層が必要とするデータを作成して随時提供する。経営層にとって実にありがたい人材だと思わんか。つまり、産業革命黎明期のタイヤに相当する経理の普遍的価値とは、『社内情報』なのじゃ」

「社内情報かぁ」理子の表情が明るみを帯びてきた。

あくる日。営業部吉田の車の助手席にはなぜか理子が乗り込んでいる。 「今日から社内各部署の業務の理解と課題発見をテーマに、各部署に潜入することにしました。まずは、営業部から。今週は吉田さんに同行して仕事ぶりをとくと拝見しま〜す」

「トホホホ、面倒なことになっちゃったなあ」と吉田。

「行動力だけは一人前じゃなぁ」雲間では、会計仙人がほくそえむ。

**********
フィンテックに代表されるテクノロジーを脅威と感じるか、味方として捉えるか。この違いは大きいと思います。会計仙人が力説していたように、経理の業務はルーティンワークが多く、テクノロジーに代替される可能性が高いでしょう。しかし、経理の各業務を情報収集のツールとして捉え、経営層に有益な情報とアドバイスを提供できる業務と経理の定義を変えると、俄然その存在は輝きを帯びてきます。日々の業務をしっかり遂行しながら、経営企画やコミュニケーションについて学び、他の部署と綿密に連携を取るよう心がけましょう。そうした目標を立てた時、日々の経理業務を効率化してくれるテクノロジーは、脅威ではなく心強い味方として捉えることができるのです。
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