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経営資金調達 2021/11/09

金融機関が融資しやすい企業になるためのポイントとは?(新米経理の会計奮闘記第12回)

新米経理の会計奮闘記 登場人物
  • 山本理子

    ようやく経理担当になったものの、分からないことだらけ。毎回様々な経理問題に頭を悩ます。曲がったことが大嫌い。

  • 吉田経男

    毎回経理問題を引き起こす営業部員。おっちょこちょいでずる賢い一面もあるが、本当はやさしい男。

  • 会計仙人

    突如現れて、会計問題をわかりやすく解説してくれる謎の仙人。仏陀の会計担当だったらしい。

企業が成長を遂げるためには、資金調達が必要不可欠です。資金調達にはさまざまな手段がありますが、その方法の一つに融資があります。ところで、融資されやすい企業とされにくい企業があるのはご存じでしょうか?
今回は、融資業務に疎い経理担当の理子と営業担当の吉田が、会計仙人から融資のイロハを叩き込んでもらうようです。

経営が順調でも融資を断られてしまうことがある?

「吉田さん、今月の調子はどうですか?」
理子が、経費精算をしに来た吉田に問いかける。

「いや~今月は不調なんだよね。
ここだけの話、1件いいところまでいってたんだ。でもさ、その会社、融資を断られちゃったみたいで、結局、新規プロジェクトは見直しになっちゃったってわけよ」
吉田は痛いところを突かれたように苦笑いだ。

「えっ!でもあの会社って業績はよかったんじゃ…」

「そうなんだよね。経営状態が悪いなんて聞いたこともないし、何で断られたのか分からないみたい」

「経営がうまくいってるのに、融資を断られるなんてあるのかな?銀行がケチだったんじゃない?」

「バッカも~ん!お前らは単純に考え過ぎじゃ!」
どこからともなく、怒り爆発の会計仙人が現れた。

「おぉっ!久々の会計仙人怒りの登場!」

「口をそろえて、映画のタイトルみたいに言うんじゃない!」

「だって最近の会計仙人は、どこにでもいるほんわかおじいちゃんみたいだったんだもの。なんだか新鮮よ」

「なにを言うておるんか!…まぁそんなことはどうでもよい。
お前ら、融資についてなんもわかっとらんのじゃな。そんなことでは、いざ自社で融資をしてもらおうという時につまずくぞ」

「仙人は、どうして営業先の会社が融資を断られたかわかるんですか?」

「もちろんじゃ。融資は現在の経営状態だけではなく、いろんな観点で審査されとるんじゃぞ」

「今の経営状態がよければ、問題ないと思ってたけれど…」

「まったく仕方ないのぅ。それじゃあ今日は、金融機関が融資をするときの判断基準について解説するぞ」

「よろしくお願いします!」

金融機関に融資されやすくなる3つのポイント


「さて、早速じゃが、融資の成功率を左右するのは以下の3つじゃ」

  • 現在の経営状況
  • 直近3期の営業利益
  • 経営計画書の作り込み

「直近3期分の営業利益ということは過去も見られてるってことだし、経営計画書がどうなってるかは未来も見られてるってことね」

「今の経営状況だけで判断するわけじゃないってことか」

「そうじゃ。決して今だけを見てはいけないのじゃ。多くの人が今の経営ばかりに目を向けがちじゃが、実はそれ以外の部分も重要なのじゃよ」

「融資を断られた会社は、過去の経営状況や今後の計画が甘かったのかもしれないな」

「盲点だったわ。ちゃんと勉強しておかなくちゃ…。仙人、具体的にはどんなことをすればいいんですか?」

「うむ、1つずつ解説するぞ」

金融機関が重視する3つの資料


「まずは『現在の経営状況』についてじゃ」

「当然だけど今の状況は大事よね。とはいえ、銀行はどんなことで経営状況を判断しているんですか?」

「経営状況を知るためには財務諸表を見るのが一番じゃ。具体的には『貸借対照表』、『損益計算書』、『キャッシュフロー計算書』の3つを確認するんじゃよ」

「名前は聞いたことあるけど、それぞれ何が書いてあるんだろう」

「え、吉田さん取引先の財務諸表、見たことないの?それでどうやって経営状況を判断してるんですか?」

「うっ…ネットの口コミとかは見るけれど…」

「まぁ、ビジネスマンとしては知っておくべきものじゃな。簡単に解説してやろう」

■貸借対照表(B/S)
1年ごとに以下をまとめているもの。
  • 企業が保有している資産
  • 返済しなければならない負債
  • 総資産から負債分を差し引いた純資産
※関連記事:新米経理のための基本講座「決算書」第3弾 貸借対照表(B/S)編

■損益計算書(P/L)
会社の利益や損失を、「収益・費用・利益」の3つの観点でまとめているもの。
※関連記事:新米経理のための基本講座「決算書」第2弾 損益計算書(P/L)編

■キャッシュフロー計算書
売掛金・買掛金など、貸借対照表や損益計算書だけでは把握できないお金の流れをまとめているもの。
※関連記事:キャッシュフロー計算書とは?内容やパターンなど基礎知識をご紹介

「結構、色んなことをまとめてるんだ。経理って大変そう」

「いまさら気付いたんですか!?」

「悪かったって!
でもこれって、銀行でも全部の資料に目を通すってことなのかな」

「当然じゃ。しかし特に重視しているのは貸借対照表じゃな。 貸借対照表では、融資先企業の安全性や財務状況、お金の使い方の良し悪しがわかるんじゃ」

「そんなの、どこを見ればわかるんですか?」

「流動資産が流動負債より多くなってるのが重要よ。
すぐに現金化できる資産が、すぐに返済しなきゃいけない負債よりも多いってことが大事なの」

「おぉ、さすが経理担当者じゃのう!
つまり、以下の関係性を満たしていれば、すぐに現金化できる資産があるということになり、経営状況が安定していると判断できるのじゃ」

流動資産(すぐに現金化できる資産)> 流動負債(すぐに返さなければならない借入金)

「現金化できる資産があっても、返さなきゃいけないお金があったら意味ないですからね」

「じゃあ、純資産って項目はなに?」

「えーっと、純資産は自己資本って呼ばれるもので、返済する必要のない資産のことよ!」

「もう少しわかりやすく説明するとじゃな。
純資産は、株主からの出資や、会社が今まで稼いできた利益の累積を表すものなのじゃ。だから、理子の言う通り返済する必要もない。そのために自己資本と呼ばれておる」

「じゃあ、自己資本が多いのが一番いいじゃん!」

「その通りじゃ。
じゃからのぅ、総資産に自己資本がどれくらい含まれておるのかが重要になるわけじゃ。これを自己資本比率と呼ぶ。自己資本比率が50%を超えれば優良企業と評価されるが、20%程度でも融資に通る可能性は高いと言えるぞ」

「自己資本比率は、総資産に対する自己資本の割合だから、『自己資本÷総資産』で算出できるわね」

「なんかわかってきた!自己資本比率ね」

大切なのは「今」の業績だけではない


「では次に、直近3期の営業利益について話すとするかの」

「過去どうなってたかって話ね」

「営業利益っていうのは、厳密には何を指してるんですか?」

「うむ。そもそも営業利益は、企業の売上から商品の原価と経費を差し引いた金額のことじゃ。
要するに純粋にその企業で儲かっているのかどうかを表しておる」

「いわゆる黒字か、赤字かってことね」

「さよう。
銀行は返済する見込みがあるのかを審査しているので、過去数年間で赤字が続いているようだと、融資を断られる可能性があるぞ」

「今まで赤字だったのが急激に黒字になった場合もダメってことですか?」

「無論、その通りじゃ。たまたま一つのサービスや商品がヒットしただけでは、経営という観点で見たときに継続的に収益を得られないと判断される場合もあるからの」

「当然とはいえ、なんか世知辛いなぁ」

「でも、実際に今から急成長する場合もあるじゃないですか。
それでもやっぱり融資されないのかしら?」

「その際に重要となるのが『経営計画書』じゃな」

「今度は未来の話ね」

「そうじゃ。経営計画書は、企業のビジョンを書いた資料のこと。
融資金を何に使うのか、今後どういう活動に取り組むのか、いつまでにどれくらいの利益を得るのかなど、未来に向けた計画書なのじゃ」

「確かに、ローンを借りるときもマイカーローンとか、何に使うのかあらかじめ決まってるもんね」

「これって結構、重要なんじゃない?経営計画書に説得力があれば融資成功の確率はかなり上がりそう」

「そうじゃな。特に大事なのは、具体的な数字を持って経営計画書を作成することじゃ。
『1年後、3年後、5年後にどれだけの収益を達成できるか』など、商品の売上によって得られる収益と、達成する見込みの売上を具体的に記載するんじゃよ。
そのとき、売上を立証できる業務委託契約書なども合わせて提示すると説得力が強くなる」

「売上がどのくらい確約されてるのかがポイントってことか」

「うむ。それだけではなく、自社の強みや今後のマーケティング構想、企業方針などについて記載するのも重要じゃ。
ただし、金額面の提示と違って、市場や経営方針に関わる部分は説得が難しい。そのため、誰にでもわかるような明確な根拠を持って記載する必要があるな」

「専門的なサービスの重要性を説明しても、金融業界の人にはわからないものね。私だって、いくら自社製品の話でも専門的なことはさっぱりだし」

「そうなると、各部署が協力して経営計画書を作る必要があるのかもなぁ」

「その通りじゃよ。経営計画書については、この記事でも詳しく解説しておるから読んでみると良いぞ」

※関連記事: 経理担当者必読!武蔵野小山社長に学ぶ資金調達の鉄則3か条

「ちなみに、資金調達には金融機関の融資だけじゃなくてオンラインファクタリングって手もあるわよね」

「おぉ、そういえば理子はオンラインファクタリングについても勉強しておったな」

「吉田さんの取引先の企業は、まだどのポイントが原因で融資を断られたのかわからないけれど、オンラインファクタリングでもう一度トライしてみるっていうのもありかもね」

「えっ、なにそれ?」

「今度教えてあげます!」

「随分と頼もしくなったものじゃなぁ。
企業の成長は一丸となって達成するものじゃからの。協力し合っていくとよいぞ」

「はーい」

**********

中小企業において、融資を受けられるかどうかは重要な問題です。事業を開始する際などに資金調達が必要な場合は、いち早く融資を受けたいところでしょう。しかし、達成するためにはそれなりの説得材料が必要なのです。今回紹介したポイントを押さえ、現在の経営状況の改善や経営計画書の作りこみをしていきましょう。

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